全体としてやや停滞気味──小倉エリア再開発(後)

県小倉総合庁舎のPPP 応募なしで暗礁に

 本誌vol.61(23年6月末発刊)で取り上げた小倉北区城内の「福岡県小倉総合庁舎」の敷地における再開発は、どうやら暗礁に乗り上げた模様だ。

 これは福岡県が23年5月、小倉総合庁舎等の敷地においてPPP(公民連携)の一手法である「定期借地方式による土地貸付」による有効活用を図るとして、公募型プロポーザル方式による民間事業者の公募を開始していたもの。対象となる福岡県小倉総合庁舎の敷地は、市街化区域に位置する面積6,159.27m2の土地で、用途地域は商業地域、指定建ぺい率は80%、指定容積率は400%となっている。現在は既存建物として、福岡県小倉総合庁舎(1978年9月竣工、RC造・地上4階・地下1階建)とその別棟(平屋建)のほか、城内待機宿舎(71年3月竣工、RC造・地上4階建)が建っている。

 公募の概要は、県は小倉総合庁舎等の敷地を一般定期借地権設定契約により事業者に長期賃貸する一方で、事業者は借地上に新施設を建設のうえ、管理運営を行うというもの。また、新施設の建設中、県は近隣の北九州所有土地を賃借して仮庁舎(北九州東県税事務所、県警車両基地)および平置駐車場を整備したうえで、北九州東県税事務所および県警車両基地などを約3年間仮移転。そして新施設の竣工後に、北九州東県税事務所・北九州県民情報コーナー(県)および県警事務所・車両基地(県警)を、新施設の一部(駐車場含む)を賃借して入居するものとしていた。借地料は年間3,588万3,000円以上、借地期間は50~70年の範囲内でいずれも応募者が提案。また、本店が県内に所在する企業が参加する場合は審査において評価されるほか、県産資材の使用や環境性能への配慮など福岡県のPRや県政策への協力についての提案を求めるとしていた。

 だが、23年10月13日から20日までの期間で提案書類の受付を行っていたが、提案書類の提出はゼロ。今後の再公募の予定についても未定となっており、同地における再開発は事実上ストップとなっている。

(左)福岡県小倉総合庁舎 (右)旧小倉合同庁舎等跡地
(左)福岡県小倉総合庁舎 / (右)旧小倉合同庁舎等跡地

 なお、仮庁舎が建てられる予定だった市所有地は、北九州市が22年10月に取得した旧小倉合同庁舎等跡地で、旧小倉合同庁舎の建物はすでに解体済み。敷地面積9,635.07m2のうち、その約半分にあたる北側約4,600m2を県へ貸付するほか、残る南側約5,000m2をイベント広場および憩いと交流のスペースとして整備する方針で、さらに県への貸付が終了する29年度以降には、「大規模イベント広場」「市民が憩い・交流するスペース」および「観光バス等駐車場」として再度整備を行う、2段階整備の方針となっていた。だが、県小倉総合庁舎の再開発がストップしている現在、旧小倉合同庁舎等跡地についても、当初の予定通りに整備を進めるわけにはいかなそうだ。

都心部・小倉で進む分譲&賃貸マンション開発

 北九州市の中心市街地である小倉駅周辺エリアは、商業施設やオフィスが充実し、都心の利便性を享受できることから、市内でも屈指の居住人気を誇り、分譲マンションの開発が旺盛なエリアでもある。近年も23年8月に大英産業(株)による「サンレリウス小倉駅南」(鍛冶町2丁目、68戸)が竣工したほか、24年8月には第一交通産業(株)による「グランドパレス小倉砂津」(砂津1丁目、73戸)が竣工。そのほか現在も、新たな分譲マンションの開発が進んでいる。

グランドパレス小倉砂津、THE HOUSE 小倉駅

 小倉駅から徒歩4分の距離にある京町3丁目の高架そばでは、東宝住宅(株)による「THE HOUSE 小倉駅」の開発が進んでいる。RC造・地上19階建で、総戸数は67戸。設計・監理を山下雄弘建築設計事務所が、施工を福屋建設(株)がそれぞれ担当し、27年9月初旬の竣工を予定している。

 小倉駅から徒歩4分の距離にある浅野2丁目の新幹線高架すぐ横の場所では、大英産業とJR西日本不動産開発(株)による「ザ・サンパーク小倉駅タワーレジデンス」の開発が進んでいる。RC造・地上19階建で、総戸数は150戸。設計・監理を(株)ATOM建築設計室が、施工を福屋建設(株)がそれぞれ担当し、25年9月中旬の竣工を予定している。

 小倉駅から徒歩7分の距離にある浅野2丁目の臨海部では、(株)九州三共による「リヴィエールベイステーション小倉タワーレジデンス」の開発が進んでいる。RC造・地上19階建で、総戸数は49戸。設計・監理は(株)彩創建築設計が、施工は福屋建設がそれぞれ担当し、26年8月下旬の竣工を予定している。

 萩崎町の国道3号沿い・ハローワーク小倉の隣接地では、大英産業による「サンレリウス三萩野」の開発が進んでいる。RC造・地上15階建で、総戸数は56戸。設計・監理をATOM建築設計室が、施工を福屋建設がそれぞれ担当し、26年1月の竣工を予定している。

 こうした分譲マンションが各地で開発されていく一方で、(有)トータル・プランニング・ヨダによる「(仮称)有限会社トータル・プランニング・ヨダ様マンション新築工事」(中津口1丁目、40戸)や、(株)アンサー倶楽部による「アクシオ北九州Ⅲ 新築工事」(浅野2丁目、44戸+テナント1戸)など、賃貸マンションの開発も相応に進んでいる。

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 旦過市場再開発以外にも、さまざまな再開発や整備が進んでいる小倉エリアだが、いまいち盛り上がらないコクラ・クロサキ リビテーションや、頓挫した県小倉総合庁舎PPPなど、やや芳しくない動きも散見される。同エリアが今後、生まれ変わる旦過市場を契機として、どのようなかたちで変貌を遂げながら、中心市街地として市全体の勢いを牽引していくのか、引き続き動向が注目される。

(了)

【坂田憲治】

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