見坂参院議員「建設業を夢ある産業へ」 下関北九州道路実現への想い語る

参議院議員(自民党全国比例区) 
見坂茂範 氏

参議院議員(自民党全国比例区) 見坂茂範 氏

 住宅・建設業界からの応援を受けて、自民党から立候補していた元国土交通省職員・見坂茂範氏が、7月20日投開票の参議院議員選挙で初当選した。選挙戦では、建設産業職域代表として建設業の仕事量確保と待遇改善を訴えていた。地方整備局や福岡県庁での経験を生かし、現場の声を国政に反映していきたいという。見坂参議院議員に話を聞いた。

国土強靱化へ予算必要

 ──初当選されましたが、議員として力を入れていきたい政策についてお聞かせください。

 見坂 建設産業界の団体や住宅産業などからの推薦を受けて、今回初当選させていただきました。この日本の経済を一番下支えしているのが、建設業ではないかと思っています。やはり建設業が元気にならないと、日本の経済は元気にならないと思っております。今、建設業が抱えている課題としては、やはり人手不足だといえます。福岡では天神ビッグバンや博多コネクティッドをはじめ民間の仕事がありますが、全国的に見れば、公共事業予算の減少とともに仕事は減っています。

 こういったなかで、私がやるべきことは建設業界で働く皆さんの処遇改善、待遇改善です。具体的には、賃金アップを図っていきたいと考えています。これからの建設業の担い手である若い人たちに業界に入ってきてもらうためには、処遇改善、待遇改善は欠かせません。そのためにも、公共、民間を問わず仕事の量をしっかり確保し、1つひとつの会社の受注額を大きくしていかなければなりません。仕事量を確保し、そのうえで建設会社が利益を確保できなければ、働く皆さん方の給与アップにはつながらないからです。

 私がこの1年間訴えてきたのは、仕事の量の確保と働く皆さんの賃金アップ、給与アップです。これが私の使命であり、やるべきことだと思っています。今回、当選させていただいたので、これから国の政策のなかでしっかりとやっていきたいと思っています。

規模に合わせた建設DX

 ──政策的に仕事量をどう確保していくのか、また国土交通省がまとめた建設DXについてのご所見は?

 見坂 仕事量の確保についてですが、まずは公共事業予算をしっかり確保しないといけないなと思います。というのも、公共事業が多いところは、それに誘発されて民間の仕事も増えてきますし、不動産関係の仕事も増えていきます。まずは民間の仕事を誘発する公共事業とその予算を、しっかりと確保しないといけないと思っています。

 最近の状況がどうなのかといえば、公共事業予算はほとんど増えていません。社会保障費、医療関係、教育関係、農業予算は増えていますが、なかなか公共事業予算が増えていません。しかし、公共事業、いわゆるインフラ整備は教育のベースにもなりますし、医療のベースにもなります。医療のベースを具体的にいいますと、道路の舗装がガタガタであれば救急車もスピードを落として走らなければならず、急患を運ぶのに時間がかかっているという地方の声を聞きました。教育という点では、子どもが安全に通れる通学路もそうですし、農産物を運ぶにも道路が必要ですし、インフラ整備が必要になります。公共事業予算だけが伸びないというのはおかしいと思いますので、しっかり確保していくことが必要だと思います。

 防災・減災、国土強靱化という観点では、今年8月に熊本や鹿児島、福岡で発生したような線状降水帯は、全国どこで発生するかわかりません。気候変動の影響で、雨の降り方も変わってきています。そういった意味でも国土強靭化予算を確保して、川底を掘る浚渫(しゅんせつ)を行い治水安全度を高めるようなことも、これから必要になっていきます。そういった意味では、ますます公共事業予算が必要ですし、事業の担い手である建設業の皆さん方の重要性も、これから増してくると私は考えております。

 人手不足への対応としては、デジタル化への対応も必要だと考えています。具体的な例の1つが、工事書類の簡素化です。国交省時代に取り組んだのですが、工事を発注する側に提出する書類、役所に出す書類などが非常に多いという声があります。そういった書類を紙で発行するのではなくて、デジタル技術を使うことで省力化できます。デジタルで1回つくった書類を、いろいろな場面で使い回せるようにすることもできます。ハード面では、たとえば建設機械のDXでは、デジタル技術を使った建設機械の自動運転なども、技術開発が結構進んできております。建設DX全体として、事務処理の簡素化と、建設機械の自動化などを含めて、建設業界でも進めていく必要があると思います。

 これから少子化は、ますます進行していきます。同じ仕事をするにしても、より少ない人員でできるようにしていく取り組みが重要だと私は思っております。

 ──中小規模の会社では、DXをどう進めれば良いとお考えですか。

 見坂 建設DXはひとくくりに考えることはできません。大手ゼネコンができるDXと、地域の中小企業が行うDXは違うと思います。大型機械によるダムのコンクリート打ちなどの自動化は大手ではできますが、中小でそこまでのことはできません。中小については、事務処理の簡素化や一部の建設機械の自動運転のようなDXであり、それぞれの会社に応じたデジタル化や省力化を進めていってもらえばいいのではないでしょうか。全国一律で同じように進めていくのは、無理な話です。各社の実情に応じた建設DXに取り組んでもらえれば、いいのではないかと思っています。

働きやすい職場へ

 ──住宅・建設産業での女性活躍については、どうお考えでしょうか。

 見坂 建設関係というと、力仕事のイメージが以前はあったと思います。しかし、実際は建設現場に行くと機械が多くの仕事をしていますので、機械を操作できる能力があれば、男性であろうが女性であろうが現場仕事はできます。必ずしも重たいものを運んだり、力仕事が必要というわけではありませんので、そういった意味で、女性の方も今では徐々に増えてきております。これから女性も建設分野、あるいは不動産の仕事にも入ってきてもらって、女性の活躍する場もつくっていくべきだと思っています。

 昨年から働き方改革が始まっていますが、女性が働きやすい職場は男性にとっても働きやすい職場だといつも言っております。女性の意見も聞きながら、より働きやすい職場をつくっていき、残業時間も減らしていく、休暇も取得しやすくしていくといった取り組みは、これからも必要だと思います。建設業がより魅力ある職場になり、男性も建設業に入ってみよう、建設会社に入ってみようと思ってもらえる土壌をつくっていければいいのではないかと思います。

事務系と比較して少ないが、技術者や技能者の女性割合も増えつつある(出所=国土交通省「令和6年度 建設産業における女性定着促進に関する実態等調査」)
事務系と比較して少ないが、技術者や技能者の女性割合も増えつつある
(出所=国土交通省「令和6年度 建設産業における女性定着促進に関する実態等調査」)

 ──外国人の活用を比較的早い段階から進めてきましたが、課題や対応策についてのご所見は?

 見坂 外国人活用を、建設分野もやっていくべきだとは思っております。現在も建築工事の現場では、かなりの人数の外国人が働いています。少子化で子どもの数が減っていきますが、その対応として機械化、DX化と並んで、外国人の方にも活躍してもらうのが、これから必要じゃないかなと思っております。また、作業員としてだけなく、高い技能がある外国人には、たとえば一級建築士や土木施工管理技士といった資格を取ってもらうようにしなければいけないのかなと思っております。土木・建築関係の資格試験についても、英語表記もするなどして、外国人でも資格が取れる環境をつくっていく必要があると思っております。国土交通省にも、資格試験を担当する部署に外国人対応として試験問題を英語表記にするなどを考えてほしいと、お願いはしております。人事管理はより重要となっていくでしょう。そのために、何らかの法律や制度をつくらないといけないのであれば、率先してつくっていきたいと思います。

夢あるプロジェクト必要

 ──地方整備局や福岡県庁での経験を、国政にどう生かしていきたいですか?

 見坂 福岡県庁では約3年間勤務させていただきました。国土交通省でも地方整備局で企画部長や現場の事務所長、局長をやらせていただいて、現場目線での仕事に取り組んできたつもりです。やはり、現場感覚を国政にも生かしていきたい。現場感覚といっても、国がやっている地方整備局での現場と、県の現場はまったく違うと思います。県の現場では、より身近な地域の実情をいろいろと学ばせていただき、県民、市民の皆さん方に近いかたちで仕事をさせていだきました。市民目線、県民目線をこれからの国政の場で生かしていきたいなと思っております。現場の感覚がわからない人が法律をつくっても、現場の感覚と合わないものになります。私は国土交通省および県庁時代に、現場感覚に合った仕事をしてきたという自負がありますので、これから国政の場で、その現場の感覚に合った、現場の人たちが望んでいるような、それぞれの地域の方々が望んでおられる市民目線での仕事をしていきたいなと思っております。

参議院議員(自民党全国比例区)  見坂茂範 氏    県庁時代にかなり想いをもって取り組んだのが、下関北九州道路です。関門橋は開通から50年以上が経過しております。大規模な補修工事で通行できないと、陸上輸送が滞ります。そのためにも、関門橋を補完する橋がもう1本必要だろうという観点から、下関北九州道路の計画推進に取り組みました。今年度末には環境アセスメントと都市計画決定の手続きも終わり、事業化するタイミングに入ってくるのではないかと思っています。

 こういった大きなプロジェクトが、福岡、山口では進んでいます。若い人たちが「夢のあるプロジェクトに自分も携わりたいな」と思って建設業界に入ってきてくれれば、一層嬉しいなと思っております。実は私も学生時代に、建設途中の明石海峡大橋を見学に行ったんですよ。あれを見て、「日本の建設技術ってなんてすごいのだろう」と思って、当時の建設省に就職しました。これからも国政の場で、このプロジェクトを強力に推進していきたいと思っております。

<プロフィール>
見坂茂範
(けんざか・しげのり)
1991年京都大学工学部卒、建設省(現・国土交通省)入省。2016年道路局企画課評価室長、18年福岡県県土整備部長、22年大臣官房技術調査課長、23年近畿地方整備局長、24年国土交通省退職、25年第27回参議院議員選挙にて比例代表で当選。兵庫県出身。57歳

桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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