文化と歴史の香る町・太宰府市の都市としての成長を目指す議会を

太宰府市議会 議長 門田直樹 氏

 太宰府天満宮や多くの特別史跡・史跡があり、毎年1,000万人余りもの観光客が訪れる観光都市である福岡県太宰府市。多くの大学・高校などが立地する学園都市としても知られ、西部・南部地域は福岡都市圏のベッドタウンとして住宅開発が進んでいるが、一方でインフラ整備や人口減など全国共通の課題もある。12月に市長選・市議選を控え、太宰府市議会議長・門田直樹氏に話をうかがった。

期待が高まる福岡県初の音楽大学誘致

太宰府市議会 議長 門田直樹 氏
太宰府市議会
議長 門田直樹 氏

    ──太宰府市は12月に市長選・市議選があります。まず、市長選の状況はいかがですか。

 門田直樹氏(以下、門田) ご承知のように楠田大蔵市長が6月に次期市長選に出馬しないと表明されました。後継指名はありませんでしたが、市の総務部長などを務めた高原清氏が無所属で立候補します。もう1人、現職の市議のかたが立候補するのではといわれています。

 もともと本市を含めて筑紫地域は、保守・革新の対立が激しいところでした。9月の大野城市長選で、立憲民主党出身の堤かなめ氏が自民・公明推薦候補を破って市長に当選しました。

 とくに太宰府市はインテリの方も多く、教職員で日教組の活動をしていた方もおり市民団体の活動が盛んです。県議会議員の定数は2議席で、自民党県議団の宮原伸一氏と、民主県政県議団で社民党の渡辺美穂氏が現職で、保守・革新で議席を分け合っています。宮原・渡辺両氏も元市議で、党派の垣根を越えて一緒に取り組んできました。

 先日、高原氏の後援会事務所開きがあり、両県議が出席されましたが、国政の状況もあり、支援者の一部には「自民党と野党とでは一緒にやれない」との声もあるようです。

 しかし、地方自治体、地方議会は国政政党の対立で動くものではありません。市民生活にとって何が重要なのかの視点で太宰府市民は市長を選ぶと思います。

 ──太宰府市は26年4月に、福岡県初となる音楽大学の開校が予定されています。

 門田 (学)高木学園(高邦会グループ)の運営で、太宰府市五条にある福岡女子短期大学(25年度で募集停止)のキャンパスに「福岡国際音楽大学」(仮称)として開学します。音大は短大音楽科のピアノや防音レッスン室などの施設を活用するとのことで、学園都市である本市としても大変期待しているところです。

 ──太宰府市は九州有数の観光都市でもありますが、その点で課題はありますか。

 門田 おかげさまで日本全国、海外からも多くの方にお越しいただいています。一方で、本市においても、オーバーツーリズムが深刻です。昨年、市、太宰府天満宮、地元住民によるオーバーツーリズム対策会議を設置し、予算をつけて取り組みを進めています。たとえば、仮設トイレの増設や運動場を開放するなどして駐車場の確保などやれることは手を尽くして取り組んでいます。

 オーバーツーリズムの影響が大きいのは、小学生の子どもたちの通学に関することです。太宰府小学校の下校時に通学に利用されているコミュニティバスに指定されたバス停から乗れないことが議会でも取り上げられました。「子ども議会」でもオーバーツーリズムに関する発表があり、子どもたちなりに考えていることを感じました。議会としても行政や教育委員会とも連携して子どもたちの不安に寄り添って改善を進めてまいる所存です。

文化遺産の保護とインフラ整備の両立

 ──全国的な課題ですが、インフラ整備・維持管理も問題となっています。

 門田 本市においても公共施設等は、教育や福祉、地域活動の場として、また都市基盤として市民生活に大きな役割をはたしている欠かすことのできない「財産」であり、これらを適切に維持管理していくことは、必要な市民サービスを提供し続けるうえにおいて重要なことです。本市には、82の公共施設(延床面積約14.5万m2)、道路(約313km、道路部面積約175万m2)、橋梁(161橋梁、橋梁面積約1万3,679m2)、上水道施設(管延長約336km)、下水道施設(管延長約295km)があります。

 公共施設も1960年代から80年代に建てられたものが約8割を超えており、今後、公共施設等の更新時期を迎え、多額の改修・更新費用が必要になると見込まれています。道路にしても通学時の安全確保も含めて適切な整備が必要です。渋滞の緩和を考えてもインフラ整備の重要性を感じています。しかし、事業を行うには多額の予算を要します。施設の集約化や長寿命化を進めて、費用の圧縮を行い、財政負担の軽減を行うことが求められています。

 また、太宰府市は歴史的な史跡も多い地域です。文化財保護法では、国民共有の財産である埋蔵文化財を保護するため、埋蔵文化財がある土地で土木工事や建築工事などの開発を行う場合の手続きを定めており、近隣と比較して開発が進まなかった面もあります。企業誘致に関しても広大なスペースを要しないデータセンターの誘致など企業の財政的優遇も含めて、次期市長と我々議会とが協力して進めていきたいと思います。

 ──日本全体として人口減少が進んでいます。

 門田 最近までは本市の人口は福岡市のベッドタウンということもあり微増でしたが、今後は減少に転じることが予測されています。高齢化も進んでおり、自治体と自治会の協働で進めていくことについて議会でも議論しています。消防や広域医療など単独ではできない事業もあり、近隣自治体との合併も含めて方向性を考える時期にきているかもしれません。

 市議選も新人も多く立候補予定で今回激戦になると予想されます。議長公務の傍らで、選挙準備もあり、慌ただしい日々ですが、6期務めてきたなかで、太宰府市の将来を見据えて市民の皆さんの安心安全のまちづくりに取り組みたいと思います。

【近藤将勝】


<プロフィール>
門田直樹
(かどた・なおき)
1956年10月生まれ、福岡県立福岡中央高校卒業、福岡大学法学部中退。IT関連企業などに勤務後、2003年4月の太宰府市議選で初当選、以降6期。21年より太宰府市議会議長。保護司も務める。福岡都市圏南部環境事業組合議会議長、太宰府市議会総務文教常任委員会委員長などを歴任。

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