「エネルギー4.0」の道を阻む、日本が乗り越えるべき障壁とは(1)
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NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長 飯田 哲也 氏
日本の再生可能エネルギーは太陽光発電、それも「メガソーラー」一色という感があるが、世界では太陽光発電以外の再生可能エネルギーもバランス良く普及させている。その先端を行くデンマークとコラボして、地域で電力会社を持つ「分散型エネルギー」が進め、エネルギーの「地産地所有」を日本で実現させようとしている。その中心人物であるISEPの飯田哲也氏に、日本のエネルギーの現状と課題について話を聞いた。
地域熱供給はすでに第4世代に
――ISEPでは現在、デンマークとコラボレーションし、同国のバイオマスや地域熱供給の技術を日本に導入に向けて動いていると聞きました。海外には再エネ先進国は他にもありますが、なぜデンマークを選んだのでしょうか。
飯田 まず地域熱供給について世界的に見ると、現在は第4世代にきています。第1世代は高温の蒸気を利用し、第2世代は100度以上の高温水、第3世代は80~90度の熱供給、第4世代は60~70度の低温水を利用するというのが大きな流れです。
アメリカはまだ第1世代がメイン、日本は第1世代と第2世代が混じり、両国とも地域熱供給ではまだまだ遅れています。ドイツなど地域熱供給に関して新しい国々が第3世代にあたります。
ところがデンマークは、地域熱供給では世界最古の110年という歴史があります。電力と熱を組み合わせたスマートシステムができており、現在は第4世代の地域熱供給が形になりつつあります。その点がコラボしたいと考えた一番の理由です。
デンマークでは、風力発電の変動に合わせて、バイオマスのコ・ジェネレーションがバックアップ的な役割を果たします。それで生じる熱の過不足を温水タンクでカバーしています。
これなら、蓄電池に比べてはるかに安く済みます。温水タンクを介して電気と熱の変動を吸収し、再生可能エネルギーのベース電源化することにおいては、デンマークが世界で最も進んでいるのです。――日本の技術力なら、すぐに第4世代の地域熱供給をできそうですが、なぜそうならないのでしょうか。
飯田 第4世代の技術は、温水を暖房と給湯に使うという極めてシンプルなものです。それがゆえに、難しさもたくさんあります。日本で導入しようとしても、ノウハウがなく失敗続きなのです。
日本では、これまでのような地域独占の電力会社ではなく、地域のエネルギーを市民自らの手で再生可能エネルギーによって生み出そうという「ご当地電力」が各地で生まれています。そこではFITが大きな役割を果たしていますが、FIT以外でも熱と省エネによる地域エネルギーの自立化を促すことも大事だと考えています。
それをエネルギー世界史的に見ると、第4世代は「エネルギー4.0」に重なっていきます。ここでいう4.0とは「分散型エネルギー」です。たとえば、アメリカの電気自動車メーカーのテスラが先日発表した格安蓄電池と、太陽光発電を組み合わせれば、コミュニティ化を飛び越えてパーソナル化して「我が家電力」のレベルも視野に入ってきつつありす。
1.0は「独占型・国家主義的」です。1980年代までは、ほとんどの国がこの状態でした。2.0は、90年代にヨーロッパで始まりアメリカに飛び火した、いわゆる「電力の市場自由化」と、同じく1990年頃から本格化する地球温暖化対応。そして3.0は、2000年頃から今なお続く再エネ導入の飛躍的な進展です。FITが大活躍したおかげですが、2.0(自由化と温暖化)の成果も活かされています。この1.0から3.0が、レイヤーとして積み重なった先に4.0があるのです。
「変動するベース電源」の再エネに対して、さまざまな手段で電力系統の柔軟性を確保する事が重要ですが、今の日本は「エネルギー1.5」くらいの状態で、完全に取り残されています。「ベースロード電源」という古い考え方を捨て、再エネを軸に「柔軟性」に転換する事こそ、日本が「エネルギー4.0」に向かうために必要です。(つづく)
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