2016年は電力新時代の幕開け(5)
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万が一は、起こらないと同じこと――。原発事故に対するかつてのイメージはそのようなものだっただろう。ところが、万が一は起こり得るということが東日本大震災ではっきり分かった。チェルノブイリのようなケースは他国の未成熟な技術のせいだ、日本では事故は起こらない、という神話は完全に崩れた。2015年はエネルギーの将来を決める分水嶺のような年だったように思われるのだ。1つは本シリーズで述べてきた休止されていた原発の再稼働と今も続く議論。もうひとつは電力の完全自由化と発送電分離の方針の確定である。
15年6月、改正電気事業法が参院本会議で成立した。これにより20年、発送電分離が実現され、以降、小売り料金規制が撤廃されることが決まったのである。これまで、地域で独占的に電力を供給してきた電力会社が全面的に競争にさらされることになるのだ。その前段階として、16年4月から電力の小売り完全自由化がなされる。
16年は、これまで徐々に自由化されてきた特別高圧(20,000V以上)や高圧(6,000V)に続き、最後に残った低圧(100V、200V)の領域まで自由に電気事業者を選ぶことができるようになる。これに向けて、電力各社や新電力各社は、さまざまな策を考えている。来たる4月、どのような電力メニューが提示され、それがどのように市場に受け入れられるのか、注目していきたいところだ。
20年には発送電の分離、つまり発電部門と送電部門が分離されることになる。そうなると、九電をはじめとする電力会社は発電部門において完全に競争にさらされることとなる。これが電力価格を下げるか上げるかは今のところ不明だが、新たなサービスが提供されることは間違いないだろう。九電はすでに北海道での地熱発電の可能性を模索し始めている。電力会社も攻めの姿勢で他地域へ乗り出す戦略を練っているのである。
15年は電力の新制度がつくられた年。16年は新制度の第一段ロケットが火を噴く年。電力市場は今、大きな変革期にある。
(了)
【柳 茂嘉】※本連載執筆にあたっては、電気事業講座編集委員会編纂「電気事業講座9 原子力発電」「電気事業講座11 原子燃料サイクル」、各電力会社ウェブページ、原子力規制委員会ウェブページ、経済産業省各種統計を参照させていただきました。
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