全国組織・全管協を仕切る高橋誠一名誉会長とは(3)石破前首相との近さが示す影響力
自民党と業界団体の関係は切っても切れない関係にあるが、なかでも建設・運輸・不動産といった国土交通省関係は、古賀誠元自民党幹事長や二階俊博元幹事長など、旧宏池会や旧平成研究会出身者が掌握してきた。
公明が長く国交大臣を務めた背景
このことについて元朝日新聞政治部デスクで政治ジャーナリストの鮫島浩氏は、「長い間、自民党の主流派は旧宏池会(岸田派)や平成研(茂木派)で、安倍さんの清和会は非主流派だった」と述べたうえで、「小泉純一郎氏が首相になり、傍流だった清和会が主流派として公共事業の利権を握ろうとしたが、その動きに対して、古賀氏や二階氏らが公明党を国土交通大臣のポストに据えることで、清和会つまり安倍晋三氏らではなく、引き続き古賀・二階ラインが握ってきた。現在の国交大臣も宏池会出身である」と語った。
古賀氏や二階氏は現職時代、公明党と近かったことで知られる。公明が連立離脱後は、熊本選出の金子恭之氏が大臣を務めているが、金子氏は岸田派のなかでも古賀氏が推す林芳正総務大臣に近かった。2020年10月の熊本県を中心に甚大な被害を出した豪雨災害で古賀氏と地元代議士である金子氏が災害現場を視察している。
全国道路利用者会議名誉会長の古賀氏は、佐賀・福岡・熊本を結ぶ有明海沿岸道路の整備を始めとして、その影響力は九州のみならず全国におよぶ。このあたりの事情は当社の記事でもたびたび言及してきたので、ここでは割愛する。
道路や河川、橋梁など土木分野だけでなく、建築・住宅分野はどうだろうか。鳩のマークで知られる(公社)全国宅地建物取引業協会連合会や、(公財)日本賃貸住宅管理協会(日管協)などは、それぞれ政治連盟を有する。全管協も全国賃貸住宅経営者政治連盟(ちんたい政連)という政治団体をもつ。
解散前日に高橋氏と面談
全管協(全国賃貸管理ビジネス協会)名誉会長・高橋誠一氏は、現在もちんたい政連会長や、自民党ちんたい支部連合会会長を務めており、家賃の消費税非課税化や定期借家権制度の導入は、高橋氏ら「ちんたい政連」の働きかけによって実現したことは前回紹介した。
当然、カウンターパートである自民党側の議員連盟も存在している。「自民党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)」である。そして歴代総裁のなかでも高橋氏と懇意の関係にあるのは、議連会長を務める石破茂前首相である。
関係の深さがうかがわれたのは、石破政権発足から1週間後の10月8日に石破首相と高橋氏が面会を行っていることだ。この日は衆議院解散を宣言する前日であった。
新聞各紙に掲載された当日の首相動静を確認すると「11時53分から午後0時9分まで、高橋誠一全国賃貸住宅経営者政治連盟会長」とある。高橋氏以外の面会者は、林芳正官房長官や森山裕自民党幹事長、小泉進次郎同党選挙対策委員長(いずれも当時)などのほか、秋葉剛男国家安全保障局長、原和也内閣情報官(同)など政府や自民党幹部、各省庁の幹部といった面々ばかりである。
9日の解散総選挙を控えた前日に多忙な首相に面会できる民間人が高橋氏であった。破格の厚遇といえよう。
地方創生担当大臣や自民党幹事長を務め、地方振興に誰よりも心を砕いた石破氏だが、自民党内では長らく一匹狼的存在であった。
もともと、石破氏は父・二朗氏(元鳥取県知事)の友人であった田中角栄元首相の薫陶を受け、旧田中派の事務局に勤務したこともある。地方重視の考え方は父・二朗氏や田中元首相の影響が大きい。
4回の総裁選挑戦を経て、24年9月の自民党総裁選の決選投票で高市早苗氏(現・首相、総裁)を破った。
石破氏には高橋氏に足を向けて眠れない理由がある。というのも、総裁選で多くの業界団体が別の候補者を推す中で、約4万人の党員を有するちんたい政連が石破氏の支援にまわったことが、石破総裁実現に大きな役割を果たしたとされるからだ。
全管協に加盟する複数の関係者は当社の取材に対し「それ以前の総裁選でも行われてきた」とも語り、「本部からメールで『現時点までに確保いただいています新規党員数のおよそ10倍の新規党員確保が全体として必要』などと記載された内容が送られてきて、強いプレッシャーを感じた」と語った。
当社に党員獲得の「目標が高すぎること」や「目標達成会議」など、高橋氏が主導する全管協本部の圧力によって、全管協の会員企業や会員企業の代表者が、従業員や退職者など他人の党費を支払っているといった実態が次々と寄せられた。なかには自分が党員であることも知らなかったケースもあるという。
取材過程で党員獲得のスキームを示す資料も入手したので紹介する。
「自民党ちんたい支部連合会」は約4万人の自民党員数を有している。自民党員獲得がノルマとして全管協加盟の地方組織や会員企業に課され、年々強まる会員増強の圧力に疲弊しており、退職者を含む「幽霊党員」までいるとすれば、由々しきことである。
前回紹介した「自民党ちんたい支部連合会」のホームページを見ると、安倍晋三元首相や菅義偉・岸田文雄両元首相との懇談の写真やこれまでの実績のほかに、組織拡大の歩みとして、2014年に自民党ちんたい支部連合会が設立され約1万2,000人を超える党員名簿を石破幹事長(当時)に手渡している写真があった。
自民党幹事長の権限は絶大である。総裁に次ぐ党のナンバー2であり、人事・金・公認権のすべてを握る権力者である。党の資金(政党交付金)配分や国政選挙の公認、党の人事全般を仕切る。石破氏は安倍晋三総裁(首相)の下での幹事長であり、石破氏を警戒した安倍氏は封じ込めを図っていた。高橋氏と石破氏の接点はこの時期に強まったようである。
(つづく)
【近藤将勝】









