データ・マックスが文化芸術活動の一環として取り組む、劇団わらび座の福岡公演『真昼の星めぐり』the Musicalが6月30日、アクロス福岡シンフォニーホールで開催された。7回目を迎える今回は、宮沢賢治の童話世界を基調に、自分らしさや他者とともに生きることの意味を問いかける意欲作。会場には約800人が来場し、舞台を通じて多様性や共生について考える時間となった。
開場30分前、アクロス福岡シンフォニーホール入口付近には長い列ができていた。先頭に並んでいた女性は、数カ月前に同劇団の公演を初めて観劇し、その魅力に惹かれ、今回は知人を誘って来場したという。そのほか、会場には子ども連れや制服姿の中高生、仕事帰りの会社員らも多く見られ、わらび座の舞台が幅広い世代に受け入れられている様子がうかがえた。
「ありのままの自分」を探す旅
『真昼の星めぐり』は、「違いを認め合う社会」「個性が輝く未来」をテーマにしたミュージカルである。物語は、同じ高校に通う主人公二人が、不思議なワンダーランド「イーハトーブ」へ導かれ、「失くしてしまった大切なもの」を探す旅に出るところから始まる。
宮沢賢治が理想郷として思い描いたとされる「イーハトーブ」だが、本作品ではその世界観を「福祉×アートで世界を変える」を掲げる(株)ヘラルボニーのアートが表現する。舞台上に広がる色彩や造形は単なる装飾にとどまらず、作品が伝える多様性のメッセージを視覚的に印象づけた。
客席に置かれた光る風船や、役者が客席近くまで降りる演出によって舞台と客席の境界線が曖昧になり、観客はイーハトーブの旅に参加するような感覚を味わった。音楽に合わせて子どもたちから自然に手拍子が生まれる場面もあり、会場全体が温かな一体感に包まれた。
終演後も続いた交流
終演後、主演の2人はロビーに駆けつけ、観客との写真撮影や談笑に応じた。
公演を終えた佐々木亜美氏は、「福岡が大好きなので、この場所でまた公演できたことが本当にうれしい。お客様の拍手が本当に温かく、感謝の気持ちでいっぱいになった」と話した。冨樫美羽氏は、「北海道から九州まで全国を回っているが、土地によってお客様の空気感はまったく違う。福岡は『熱い』感じがする。最後の拍手にも非常に熱量があり、心に感じた分だけ叩いてくださっていると実感した。終演後の見送りで直接お会いできたことも、本当にうれしい体験だった」と語った。
観客と直接言葉を交わす主演二人の姿は、舞台が一方的に鑑賞されるものではなく観客との交流のなかで作品を完成させるという、わらび座の姿勢を体現しているかのようだった。
【松下森音】








