政治経済学者 植草一秀
日本の危機が加速している。主因は2月総選挙結果を悪用して、この機会に悪法の一斉成立を強行しているからだ。
2月選挙の最大の問題点は37%得票率の自民に68%議席を付与したこと。得票率37%に見合う議席数は171。これが自民の実力相応の議席数。過半数233にもまったく届かない。ところが、37%得票率の自民に68%=326議席を付与してしまった。「小選挙区マジック」によるもの。
選挙制度が適正でない。多党乱立状況下での小選挙区制度採用は弊害が大きすぎる。民意を国会議席配分に反映できない。多党乱立状況下では全議席を比例代表選挙で選出することが適正だ。死票を排除できる。民意を正確に反映する議席配分が実現する。比例代表選挙を軸にする選挙制度に移行するべきだ。
高市内閣は現下の特殊な状況下で問題のある法案を可決成立させることに総力を挙げている。この悪事に加担しているのが「ゆ党」。かつての衆院立憲民主は公明と合流して中道改革連合を創設したが、完全に公明色に染まった。この「中道」が与党に加担している。「中道」は綱領と基本政策において「公明案」を丸呑みした。選挙までの時間が短く、暫定的な措置であると見られたが、選挙後に見直しをしていない。完全に「隠れ与党」=「ゆ党」に転じた。
このことは法案に対する対応に鮮明に表れている。
国家情報会議設置法案 中道賛成
個人情報保護法改定案 中道賛成
皇室典範改定案 中道賛成
中道は完全な「ゆ党」。日本の主権者はこの事実を確認する必要がある。
参院の立憲民主は中道と一線を画している。三つの法案にすべて反対の姿勢を示している。「中道」と「立民」は完全に異なる政党になっている。
皇室典範改定は「愛子天皇阻止法案」と言い換えてもよい。「皇室乗っ取り法案」と表現してもよいだろう。日本国憲法で現在の天皇制は「国民の総意」の上にしか成り立ち得ない。その皇室のあり方を定める「皇室典範」において「国民の総意」に反する改定を行うなら、天皇制そのものが立脚基盤を失うことになる。「天皇制廃止論」が浮上することを止めるのは難しくなるだろう。
一部勢力が「天皇制」の私物化を狙っている。これは、明治の焼き直しでもある。明治維新は「天皇」を利用した権力の強奪だった。「天皇」そのものが差し替えられた可能性さえある。
この「明治」が「創作」したのが「万世一系の男系男子」というフィクション。継体天皇以前の天皇の系譜には歴史の裏付けがない。天皇家の系譜に「万世一系の男系男子」という「事実」が存在しない。皇室典範改定強行は世紀の大失策である。そのことによって高市内閣は早晩瓦解することになるだろう。
しかし、現状では悪政が続く。27年にかけての最大の懸念は憲法破壊である。壊憲危機事態が発生している。憲法審査会が国民投票法改定を強行する。21年国民投票法で積み残された課題がある。CM規制、ネット規制が定められていない。24年10月までに措置することとされたが措置されていない。
このなかで法改定が行われる。
当然のことながら、CM規制、ネット規制の細目を決定する必要があった。しかし、改定法は具体的取り決めをしていない。最大の課題に手をつけずに法改定を行う。このまま国民投票が行われれば、事実上、CM規制、ネット規制なしということになる。これは、資金力の大きい側の勝利をもたらす。ネット規制等の必要性は総選挙で明らかになっている。高市首相サイドの誹謗中傷動画問題はその一端である。
憲法改正の最重要手続きが国民投票法だが、国民投票におけるCM規制、ネット規制を定めぬ国民投票法改定は意味がない。それにもかかわらず、中道がこの動きを止めようとしない。特別国会会期末が迫り、憲法審査会が国民投票法改悪を強行しようとしている。これを中道が止めようとしない。
個人情報保護法改定の問題も深刻だ。統計特例はSNS事業者が多数の利用者の氏名や全投稿を捜査機関に提供することも可能にする。このことから、個人は将来の不利益を恐れ、政治的意見や社会批判などの発言を控えるなど、自己検閲や萎縮に陥る。また、この種の情報が国家権力に提供されれば、国家権力は「有害人物」の「監視」のために情報を活用することになる。完全に戦前の「特高警察体制」が構築されるのである。
皇室典範改定の狙いは「皇室乗っ取り」である。憲法を尊重し、平和主義を根幹に置く現在の天皇家の存在が、特定勢力にとって「邪魔な存在」になっていることが背景だ。「皇室」は政治利用する「手段」であって「敬う」対象ではないというのが明治以来の基本である。この基本から逸脱する憲法重視、平和主義の皇室は、特定勢力にとって「邪魔」な存在になりつつある。
現在の天皇家の系譜を断ち切ろうとするのが皇室典範改定の隠された目的であると考えられる。その発想は基本的に「反日」であることに十分な注視が必要だ。天皇家の系譜の破壊を追求してきているのが一体誰であるのか。この問題に目を配る必要がある。
高市内閣の下で、こうした悪事が一気に進行していることは偶然ではない。高市内閣の「本質」に重大な問題があると見るべきだ。この点で国会が置き去りにしているもう一つの問題に目を配る必要がある。それが高市首相と旧統一協会との関係である。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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