「爆買い」の裏で、いまだ残る「中国人お断り」
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昨年、九州の温泉地にある、とあるホテルが破綻した。債務者の財産整理を担当する破産管財人は、地元の不動産業者に温泉付きホテルの売却を依頼。不動産業者はあらゆる人脈をフル活用して、数週間後、ついに買い手を探し出した。
買い手として名乗りを上げたのは、中国人投資家。九州の温泉街に、中国人観光客が急増していることは言うまでもない。そのインバウンド需要を取り込もうと考えた中国人投資家は、ホテルを買い取り、高級志向に改装、中国人専用ホテルとして、中国本土からの富裕層を取り込もうという算段であった。不動産業者によると、ホテル買収に手を挙げたものは他にもいるというが、中国人投資家の提示した買収価格が最高値であったこともあり、話はスムーズに進むかに思われた。
しかし、不動産業者から買い手候補が中国人であると知らされた破産管財人は、何を思ってか、当地の温泉旅館組合に相談。組合は文化の違いや中国人のマナーの悪さ、将来的に起こり得るトラブルを理由に、事実上の「中国人お断り」を不動産業者に突きつけたのだ。日本人旅行客しか訪れない秘境の温泉地ならまだしも、当地の観光客の多くはすでに中国人を中心とした外国人であるにもかかわらずだ。
さらに腑に落ちない点がいくつか残る。
まず破産管財人の任務とは何であるか、である。破産管財人は債務者の財産を円滑に処分し、債権者に少しでも多くの配当を行うのが仕事である。今回の場合、破産管財人の役目に照らし合わせれば、最高値を示した中国人投資家に売却するのが筋である。
さらに、同管財人は「中国人お断り」の理由に温泉旅館組合の反対を挙げた。しかし、この事態は独占禁止法に抵触する可能性を大いに含んでいると思われる。独占禁止法の第8条では、事業者団体の禁止行為を述べている。その3項で、「一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること」を禁じている。温泉旅館組合を事業者団体として考えると、今回のケースでは、中国人投資家がホテルを買収し、開業することを認めないのは、事業者の数を制限することにあたるのではないだろうか。顧客としての外国人は認めても、同業者やパートナーとしての外国人は認めないのだ。中国人の「爆買い」により、小売業を中心に日本経済は大きな恩恵を受けている。一方で、一部では異文化を受け入れない思考は根強い。
【東城 洋平】
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