【特別インタビュー】建設DXの次はAIへ「ANDPAD Stellarc」が変える現場管理|アンドパッド

(株)アンドパッド

ANDPAD Stellarc

 建設DXサービスを提供する(株)アンドパッドは、建設業に特化したAI活用を進める新サービス「ANDPAD Stellarc」を展開している。従来のANDPADは、紙、電話、FAX、口頭確認などで行われてきた建設現場の情報をデジタル化し、共有・管理しやすくすることを目指し、現在26万社以上が利用している。ANDPAD Stellarcは、同社がこれまで培ってきたノウハウを基盤に、工程表の作成、工事遅延の検知、日報作成、写真整理、原価管理、技術継承などをAIで支援するものだ。人手不足や原材料高騰が建設業者の経営を圧迫するなか、AIは現場と経営をどう変えるのか。アンドパッドのAI担当責任者である町田浩三氏に聞いた。

蓄積した現場データをAIで業務支援へ

 ──アンドパッドはこれまで、建設業向けのDXサービスを展開してきました。従来の建設DXと、今回のAI活用は何が違うのでしょうか。

 町田浩三氏(以下、町田) ANDPADは、もともと施工管理機能からスタートしたサービスです。その後、受発注、請求、施主とのやり取り、施設管理、建物完成後の維持管理など、幅広い機能を提供してきました。

 従来のANDPADが目指してきたのは、紙、電話、FAX、口頭確認などで行われてきた建設現場の業務をデジタル化し、現場に関わる情報を共有・管理しやすくすることです。工事写真、図面、工程、チャット、報告、受発注、請求などの情報をANDPAD上に集約することで、建設現場のアナログ業務を効率化してきました。

 ただ、今後さらに人手不足が深刻になるなかでは、情報をデジタル上で管理するだけでは不十分になる場面も出てきます。人が減るなかでも現場を回し、利益率を維持・向上させるには、業務そのものをさらに効率化する必要があります。

 そこで重要になるのがAIです。AIは、単に紙の情報をデジタルに置き換えるものではありません。ANDPADを日常的に使うなかで蓄積されてきた現場データを活用し、工程表の作成、工事の遅れの検知、挽回策の提案、KY報告や作業日報の作成など、これまで人が判断し、調整し、記録してきた業務の一部を支援できると考えています。

 しかし、AIがどれだけ高機能でも、現場の負担になってしまっては意味がありません。建設現場で使われるAIは、現場の人が使いやすいものでなければなりません。そこで当社では、AIを単独の特別なツールとして提供するのではなく、現場で使い慣れたANDPADの業務アプリの延長線上で提供することを重視しています。

 現在、汎用的な生成AIを業務に使えるのではないかと考える企業は増えています。ただ、実際に使いこなせるのは、ITに感度の高い経営者や、大手企業のDX部門、IT部門などに限られます。建設現場の実務と、これらの生成AIの親和性は決して高いとはいえません。

 当社が目指しているのは、現場で普段から使う業務アプリのなかにAIが自然に組み込まれる世界です。報告アプリのなかでAIが日報をつくる。工程管理アプリのなかでAIが遅れを見つける。AIが考えた結果は、普段使っているANDPADの画面上に表示される。そうしたかたちであれば、現場の人もAIを意識しすぎずに使うことができます。

 この考え方から生まれたのが、ANDPAD Stellarcです。

Stellarcとは何か

 ──ANDPAD Stellarcとは、どのようなサービスなのでしょうか。

 町田 Stellarcは、星を意味する「Stellar」と、建築を意味する「Arc」や「Architecture」を組み合わせた造語です。

 建設業の仕事は、1つの工程や1人の担当者だけで完結するものではありません。現場監督、職人、協力会社、資材会社、設計者、施主など、多くの関係者が複雑に関わりながら進んでいきます。そのなかで、写真整理、工程管理、日報作成、原価管理、品質確認など、目的ごとに異なる業務があります。

 ANDPAD Stellarcは、こうした建設業務のなかにAIを組み込み、現場と経営を支援するための仕組みです。1つの万能AIがすべてを処理するというよりも、工程、品質、安全、報告、原価といった目的ごとのAIが、ANDPAD上に蓄積された現場データを活用しながら業務を支援していくイメージです。

 大切なのは、StellarcがAIだけで独立して存在するものではないということです。従来のANDPADが現場情報をデジタル化し、共有し、管理する基盤だったとすれば、Stellarcは、その基盤に蓄積された情報をAIが活用し、業務そのものを支援する段階に進めるものです。

Stellarcが支える3つの課題

建設×AIで解決すべき課題

 ──Stellarcは、建設業者のどのような課題解決に役立つのでしょうか。

 町田 当社では、「建設×AI」で解決すべき課題を大きく3つに整理しています。Stellarcも、この3つの課題に向き合うものです。

 1つ目は、財務予見です。とくに中小の工務店では、原材料価格や人件費の高騰、工事計画の変更が利益を圧迫する要因になっています。受注時には利益が見込めていた工事でも、工程の遅れや追加作業、資材費・人件費の増加によって、最終的な利益は大きく変わります。

 工事の進捗が遅れれば、入金の遅れや追加工事の発生、協力会社との調整負担にもつながります。経営者にとっては、現場ごとの進捗や利益の変化を早く把握できることが重要です。現場の遅れや費用増加の兆候を早くつかめれば、利益を守るための対応も早くなります。

 2つ目は、段取りの超効率化です。建設業では、現場ごとに多くの関係者が動きます。人、資材、工程、協力会社との調整が少しずれるだけで、現場全体に影響が出ます。今後さらに人が減っていくなかで、SaaSアプリだけでは解決しきれない業務も出てきます。

 人が足りないから受注を増やせない。現場監督の負担が重すぎて管理の質が落ちる。日報や写真整理に時間を取られて、本来の判断業務に集中できない。こうした課題に対して、Stellarcが人の作業の一部を支援することで、現場担当者の負担を減らし、段取りの精度を高めていくことを目指しています。

 3つ目は、技術継承です。建設業界では経験者が退職し、30代後半から40代の中間層が少ないという構造的な課題があります。経験豊富なベテランは、背中を見て覚える世界で仕事をしてきた人も多く、ノウハウを言葉にして若手に伝えることが必ずしも得意ではありません。一方、若手にとっても、年齢差のあるベテランに気軽に質問しにくい空気があります。

 そこで、ベテランが持つ知見や経験をデータとして蓄積し、若手が必要なときに参照でき、育成にもつなげられる仕組みが重要になります。たとえば、若手の現場監督が新しい現場に配属されたとき、これまでの工事でどのようなやり取りが行われ、どのような判断がされたのかをStellarcが示す。初めて基礎工事を担当する場合に、その会社ではどのような段取りで進めてきたのかを確認する。こうした使い方が考えられます。

 財務予見、段取りの効率化、技術継承に共通しているのは、現場で起きている変化を早くつかみ、次の判断につなげる必要があるということです。計画を立て、実行し、変動を検知し、状況を可視化し、調整し、計画を更新する。Stellarcは、このループをAIで支える仕組みです。

工程、写真、日報を支え
現場監督を本来業務へ

 ──現場では、具体的にどのような業務でStellarcの効果が出やすいのでしょうか。

 町田 効果が出やすい業務は、利用する人の立場によって変わります。現場監督にとっては、工程管理や写真管理の効果が大きいと考えています。

 工程管理は、現場でほぼ毎日行う業務です。物件情報、着工日、引き渡し日、建築面積、建物仕様、工事仕様などを基に、AIが工程表のひな形をつくることができます。たとえば、「既存建物が残っているため解体工事を2週間入れてほしい」といった条件を指示すれば、その前提に基づいて工程表を作成します。施主との立ち会い検査日が決まった場合には、その日に合わせて前後の工程を調整することも考えられます。

 工事が進むなかでは、現場写真、チャットでの協力会社とのやり取り、工程管理上の情報などから、遅れの兆候を検知します。さらに、遅れを知らせるだけでなく、挽回策を複数案で提案することも想定しています。

 写真管理も負担の大きい業務です。現場によっては毎日多くの写真を撮影し、それを仕分ける作業が発生します。写真の検索、仕分け、台帳作成をAIが支援できれば、日々の作業時間を削減できます。

 日報作成でも効果は大きいです。工務店では、1人の現場監督が複数の物件を並行して担当するケースがあります。物件ごとに日報をつくるのは大きな負担です。現場写真、チャットでのやり取り、工程表の更新履歴などの活動ログを基に、AIが日報のひな形を作成します。担当者は内容を確認し、必要に応じてAIが出した結果を修正するだけで業務が完了します。

 現場監督は、本来であれば、工程の判断、協力会社との調整、品質や安全の確認に時間を使うべき立場です。しかし実際には、写真整理、日報作成、工程表の修正、各種報告などに多くの時間を取られています。Stellarcによってこうした作業の負担を軽くできれば、現場監督はより重要な判断業務に集中できます。

建設業特化型AIプロジェクト「ANDPAD Stellarc」を始動

経営者が見たい現場の利益を可視化

 ──現場担当者だけでなく、経営者や所長にとっては、どのような効果が期待できますか。

 町田 経営者や所長クラスであれば、関心が高いのは金銭面です。現場がきちんと利益を出しているのか、実行予算に対して計画通りに原価が消化されているか、工事の遅れによって追加費用が発生しないか。こうしたコスト管理は、経営者にとって効果が出やすい領域になります。

 現状では、表計算ソフトを使って計算している企業も多くあります。そこをAIが支援できれば、現場単位だけでなく、事業部単位、会社全体での分析にもつながります。

 ANDPADでは現場ごとにデータが蓄積されますが、契約企業全体としては、すべての現場データを基に分析できる構造となります。そのため、1つひとつの物件だけでなく、建築部、土木部、リフォーム部といった事業部単位、支店などのエリア単位、会社全体での分析にもつなげることができます。

 建設会社の経営では、受注時点の見込み利益だけでなく、工事が進むなかで実際に利益がどう変化しているかを把握することが重要です。Stellarcが工程、原価、日々のやり取りなどのデータを活用できれば、経営者は現場の変化を早くつかみ、必要な判断をしやすくなります。これは、単なる事務作業の削減ではなく、経営管理そのものの高度化につながると考えています。

汎用AIではなく自社の現場に合うAIへ

 ──汎用的な生成AIと、Stellarcのような建設業に特化したAIの違いはどこにありますか。

 町田 汎用的な生成AIに質問すれば、一般論は返ってきます。たとえば「工程管理とは何か」と聞けば、一般的な回答は得られます。しかし、現場の人が本当に知りたいのは、自社ではどう進めるのか、この現場では何が起きているのか、過去に似た案件ではどう対応したのかということです。

 つまり、必要なのは、その会社の慣習、過去の実績、仕事のやり方を踏まえた回答です。建設業に特化したデータ、その会社に特化したデータ、現場ごとの履歴や判断を踏まえたAIが必要になります。

 ANDPADを日常的に使っていれば、写真、工程、図面、コミュニケーションなどのデータが業務のなかで自然に蓄積されます。ファイルサーバーや個人のパソコン内を探し回ってデータを集める必要がありません。普段の業務のなかで、AI活用の前提となるデータがたまっていくことが大きな特徴です。

 過去のデータがきれいに整理されていれば取り込みやすいですが、現実には、図面、写真、手書き資料など、解析しづらいデータも多くあります。当社では、そうしたデータを整理し、AI活用につなげる支援も行っています。

 AIをうまく使うには、AIを使える状態にすることが必要です。ANDPADは、建設業のプラットフォームとして使われてきました。日々のコミュニケーションや業務データが蓄積されているからこそ、自社ならではの工程感、工数、やり方に基づくAI活用が可能になります。

協力会社も含め現場全体で使う

 ──元請だけでなく、下請、資材会社、一人親方のような職人にも関係するサービスなのでしょうか。

 町田 基本的には、協力会社も招待して使っていただく考え方です。ANDPADは、元請だけが使うものではなく、下請、一人親方、運送会社、建材メーカーなど、案件に携わる多くのステークホルダーの情報とコミュニケーションをつなぐプラットフォームになります。

 Stellarcは、元請だけの業務効率化を目的とするものではありません。現場に関わる関係者すべての業務に対して、AIを活用した効率的な情報のやり取りと管理を可能にすることで、従来そこに割いていた多くの労力を省き、迅速な判断を支援します。

 アンドパッドは、建設現場のDXに特化して蓄積してきた知見をいかして、建設現場に無理なく導入できる、AIを活用した情報基盤としてのプラットフォームを提供し、日本の建設現場を支援していきます。

【寺村朋輝】


<PROFILE>
町田浩三
(まちだ・こうぞう)
(株)アンドパッド 町田浩三 氏(株)アンドパッド 社長室 AIソリューショングループ・AIプロダクト開発グループ・BPO事業グループ マネージャー
日系ITシステム会社で、ITエンジニアとしてソフトウェア開発と開発PMに14年従事した後、経営企画としてビッグデータやセキュリティ、IoTなどの新規事業の立ち上げを経験。その後、建設系スタートアップでビジネスサイド全般の立ち上げを牽引。2023年アンドパッドに入社し、BPOやAIなどの新規事業開発に従事。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:稲田武夫
所在地:東京都港区三田3-5-19 住友不動産東京三田ガーデンタワー37F
設 立:2012年9月
資本金:56億9,1320万円
URL:https://andpad.co.jp

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