福岡県議会・自民党県議団の巻き返しにより蔵内議長の辞職勧告決議案は採決中止

 高額な海外視察や正副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑で揺れる福岡県議会。17日に臨時議会を開き、前任の副議長の議員辞職に伴う後任の副議長選挙のほか、吉松源昭県議が提出した蔵内勇夫議長に対する議長職の辞職勧告決議案を採決することが予定されていたが、予定の午前11時に開会されず、主要会派による代表者会議や数回の議会運営委員会が行われるなど、開会前から波乱含みの展開であった。

決議案への賛成派もいた自民党県議団

 この間、自民党県議団は会派会合を行い、一時は自主投票の可能性もあるとの観測も出た。吉松氏に近い井上正文県議(宗像市)が、決議案に賛成討論を申し出るまで進んでいたが、中堅・ベテランからは会派の分裂を避けたいことや第三者委員会の調査を待つべきとの声もあった。決議案への対応をめぐり、自民党県議団内が揺れたのは、都市部の1期生から2期生の県議を中心に、地元で有権者や支持者から批判を浴びてきたことがある。一方で、3期生以上は蔵内氏に近い県議も多い。議会改革には賛成だが、ドラスティックな転換には慎重な声も根強くあった。

新聞報道に激高した民主会派会長

 一方、第2会派の民主県政県議団は自主投票となっていたが、このことに関して会派代表の冷静さを欠いた言動の一幕もあった。

 午後2時20分ごろ、会派室前に当社を含むメディアが待ち構えていたが、決議案への対応を問われた原中誠志会長は「今朝の朝日新聞の記事はおかしい」と感情をあらわにして、ドアを開けて会派室に戻った。

 原中氏の態度に、各社の記者が「原中さん、今のはおかしいですよ」と取材に応じるよう促し、再び出てきた原中氏は「賛成討論・反対討論聞いたうえで各人が判断することになる」などと語ったが、メディアの報道が気に入らない内容であったとしても、会派の代表としてしっかり答えるのが責務であるはずだ。

記者団の取材に答える原中誠志民主県政県議団会長
記者団の取材に答える原中誠志民主県政県議団会長

 県議側の都合はあるにせよ、メディアはもちろん朝から傍聴にきていた多くの県民が待ちぼうけを食らう羽目になった。県外からきたメディアもあり、疲れて会派室や委員会室前の廊下に座り込む記者やカメラマンの姿もあった。

蔵内派県議による動議

 午後3時50分過ぎ、臨時会が始まり、副議長選で、自民党県議団の板橋聡県議が副議長に選出された。蔵内議長が退席後、吉松県議が決議案の提案理由を述べ、採決直前に自民党県議団の林泰輔県議(朝倉市・朝倉郡)から採決中止を求める動議が出され、賛成多数で可決した。動議に賛成した県議は自民党だけでなく民主会派にもおり、対応が分かれた。なお、林氏は蔵内氏の元秘書。若手議員のなかで蔵内氏に近い立場で、議会後、林氏は蔵内氏に対する報道やSNSの反応について「これほどまで犯罪者のように扱われるのは忸怩(じくじ)たる思い」と心情を語った。

 決議案を提出した吉松県議は、動議で提案を潰され憤懣(ふんまん)やるかたない様子で議場を出た。ロビーで記者団の取材に応じ、「県民目線の『開かれた議会』というのであれば、5時間以上、傍聴に来られた方を待たせることをやめるべきで、平気でお待たせすること自体が開かれた議会ではない」と指摘したうえで「待たせたうえに採決も行わないのは県民を向いていない」と語った。また「自民党の議員が決議案に賛成討論を予定していたが、圧力がかかって取り下げられた。一人ひとりの議員がそれぞれの有権者に向き合って、そして責任をもって自分の答えを出す。これが開かれた議会ではないか」と自民党県議団の対応を批判した。

決議案に対する自民の対応を批判する吉松源昭県議
決議案に対する自民の対応を批判する吉松源昭県議

 自民党県議団の渡辺勝将会長は、動議に賛成するよう党議拘束をかけていたことを明らかにしたが、前出の井上県議を含め各議員も会派の方針に従う道を選んだようだ。

党議拘束について語る渡辺勝将自民党県議団会長
党議拘束について語る渡辺勝将自民党県議団会長

 蔵内氏は、16日に自身に対する議長辞職勧告決議案について「もうこれは政局だ」との発言をしていたが、一連の問題で福岡県内外から多くの批判を浴びるなか、「政局」ととらえる発言が出たのは、「このままでは終わらないぞ」という意思の表れだったのだろう。

 蔵内氏の辞職勧告決議案をめぐる展開について、かつて民主党に所属した元国会議員は「政治は風頼みではだめで、法律や仕組みをよく知っているほうが強い」と指摘し、「根本を変えるには選挙で勝つしかない」と語った。はたして福岡県民が来年の県議選でどのような判断を下すのか注目される。

【近藤将勝】

関連記事