「地域生活圏における社会的インパクトの
可視化に関する検討会」
地域経営に、民間が参画・連携することで、日常の暮らしに必要なサービスが持続的に提供される「地域生活圏」。この形成に取り組む民間事業者などへ資金や人材を呼び込むために、国土交通省は「社会的なインパクト」を可視化する手法の検討を開始した。同省国土政策局は7月21日に、有識者による第1回「地域生活圏における社会的インパクトの可視化に関する検討会」を開催。検討会では、年内にかけて行う実証事業の結果を踏まえて、2027年2月頃をメドに可視化のガイダンスを作成する方針だ。
関係者へ説明しやすく
検討会では、地域経営主体の取り組みが持つ社会的インパクトを可視化するための具体的な手法や考え方を整理して、ガイダンスとしてまとめる。ガイダンスには、社会的インパクト創出に貢献する地域経営主体の役割・取り組みの整理、可視化手法の実践に向けた要件整理、社会的インパクト可視化を通じた課題解決・資源呼び込み実現のポイント整理や実証事例の紹介を盛り込む。
可視化することにより、地域経営主体の取り組み意義や目指す状態を、関係者に説明しやすくなると指摘した。取り組みの意義が説明できることにより、関係者の協力や賛同を引き出しやすくなると期待。資金や人材の呼び込みや新たな関係者との連携によって取り組み範囲を拡大し、より地域の課題解決が進むとしている。
初回検討会の冒頭にあいさつした天野正治・前国土政策局審議官は、「持続可能性をどう高めていくのかが大きな課題。地域経営主体の仕事は、民間が大きな利益を上げづらい。生活課題を解決することの価値をどう評価して、そこに不足するリソースとして人や情報、お金が集まりやすい方策を議論してもらえれば」と述べた。
第1回目の検討会では、地域経営主体が生み出すインパクトとは何か、社会的インパクト可視化を通じて達成すべき状態は何か、インパクトをどのような方針で整理・可視化すべきかについて議論。可視化インパクトに関して、委員からのプレゼンテーションがあった。行政や生活者、企業などすべてのステークホルダー(利害関係者)の視点の必要性や、「誰に何が生じ、その情報が誰の判断をどう変えたか」といったインパクトの開示・発信とそれに基づく必要な意思決定を行っていくことなどが提案された。
地域の日常維持に危機感
2025年の国土審議会において、地域生活圏の形成を促進するための施策の在り方に関する報告書をまとめた。このなかで、社会性と経済性の両立を図る民間事業者などに対して、資金や人材を呼び込むための環境整備として、事業によって生まれる「社会的インパクト」を可視化する手法などを検討する必要性が示されたことから、今回の検討会が設置された。
検討会には、オブザーバーとして金融庁、中小企業庁、農林水産省が参加している。23年に閣議決定した第3次国土形成計画では、地域生活圏の考え方として、これまでのように行政主導のみでは限界があり、可能な限り地域づくりに貢献する民間主体にさまざまな活動・サービスを委ねていく、民主導の官民連携による地域経営の発想への転換が必要と提言。地域経済循環を構築することにより持続可能なサービスを提供する先進的な取り組みを参考に、「民間の地域経営主体」の創出につなげることが必要と指摘した。
この背景には、「官民・事業・地域が“バラバラ”状態では、人口減少の荒波に地域が適応できず、住民の日常の暮らしが維持できない」という問題意識がある。
企業や金融の目線も
地域経営に民間が参画することで、人材や情報、ノウハウなどの資源を導入し、事業者間連携でシナジー効果を創出。民間を軸にして自治体間の連携を行うことで、地域の協力・相互補完を構築することを期待している。検討会では、こうした「民間の地域経営主体」を支援することで、地域生活圏の形成を促す狙いがある。
具体的には、民間の地域経営主体が交通や買い物、医療、農業などの分野で、複数の自治体にわたってサービスを提供する。たとえば、自治体での公共ライドシェアの導入支援、集落への移動販売やドローンによる食品宅配、医療機器・オンライン診療機能を搭載した専門車両による訪問診療、ICT活用による二地域居住者の農業作業員としての受け入れなどを想定している。
一方、民間の地域経営主体が置かれた現状として、「取り組み内容がわかりづらい」「複雑な地域課題を解決し、地域の変化が実感されるまでに時間が必要」「収益性の確保が難しい領域のため取り組みを維持・拡大しづらい」といった課題が指摘されていた。
今後は、実証事業での事例内容の整理や大企業、金融機関からの目線でガイダンスに盛り込む内容を検討。この結果を踏まえて、今後も継続して検討する事項を盛り込み、可視化ガイダンスを作成する。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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