夏に咲く花 コバギボウシ

 今年8月6日(木)そろそろコバギボウシ(ユリ科)が咲いている頃と仲間を誘った。

 コバギボウシは脊振山系で比較的見られ、自衛隊基地横の脊振山の登山道を登ると石灯籠あたりにも咲いている。日陰を好む植物であるが日当たりの良い場所で見かけることもある蛤岳(862m)のコバギボウシは春にツクシショウジョウバカマを見にきたときに群生しているのを確認していた。

 蛤岳は脊振山(1,055m)から佐賀県の基山へ向かう縦走コースにある山だ。脊振山から縦走すると90分はかかる。五ケ山ダムの近くにある山といえば分かりやすい。福岡市早良区の脇山から板谷集落を通り五ケ山ダムへ通じる県道136沿いにある佐賀県神埼市脊振町の小川内(おがわうち)に立つ大杉の駐車場に筆者を含め男女4人の仲間が集合した。

 大杉は樹齢1000年幹回り12m 、樹高35m 、佐賀県指定天然記念物、「新日本名木100選」にも指定され、古くから地域の神木として大切に祀られてきたと説明板にある。五ケ山ダム工事時に水没する集落から移設されたもので周りを鉄骨で厚く保護されている。仰ぎ見るほど大きく途中から大きく3本に枝分かれしている。見学できるように広い駐車場もある。

 佐賀県の坂本峠を経て五ケ山ダム沿いの国道385号線から作業林道に入り、曲がりくねった登りの林道を車で進むこと15分で蛤岳の登山口へ届く。ここはマイナーな登山口である。ここから登山道を歩くと蛤水道の記念碑に届く。

 蛤水道は江戸時代初期に佐賀方面へ治水・利水としてつくられた人工水路です。この水道の取り入れ口は幅50cm、長さ100mほどで、狭いが水量の多い水道となっている。水道には記念碑がある。

 この場所から幅1.3mほどの水道になり(今はコンクリート製)、今も滔々と水が流れている。毎年、砂を取り除くなど整備されている。美しい水道は緩やかなカーブとなり素敵な自然観察路でもある。ここから蛤岳登山口まで歩いて30分ほど。以前はなかった東屋も途中にできている。この地は福岡藩と佐賀藩の水利権争いの場であった場所である。

 脊振山を源とする直線の蛤水道を道なりに5分歩いて踏み分け道の登山道へ入る。正面の直登ルートもあるが急登で体力を消耗するので、我々は裏手のマイナールートから登っている。春は樹木、スミレなどいろいろな花を見ながら歩ける踏み分け道だ。

 灌木帯の踏み分け道は整備されていないのでルートを間違えやすい。左右に目を配りルートを確認しながら30分ほど歩くと脊振山から続く縦走路へ出る。熟練者でないと単独では歩けないルートでもある。

 蛤岳山頂への登りの縦走路を10分も歩くと左右に50cmほど長い茎を伸ばした淡い紫色の花が咲いていた。コバギボウシである。筆者の予想通り開花していた。筆者は宝くじに当たったかのように舞い上がった。蛤岳に咲くコバギボウシを一度は見たかったからである。

コバギボウシの花 蕾に昆虫が止まっていいます
コバギボウシの花 蕾に昆虫が止まっていいます

 山の花の見頃は1週間である。予想が外れると花の見頃に出会えない。植物には多年草もあれば二年草もある。開花時期は多少ずれることはあっても季節を知る植物は花を咲かせる。筆者は植物に体内時計があるのではと思うこともある。

 ユリ状のコバギボウシの花は、そよ風に吹かれ揺れていた。花にレンズを向けると背景には太陽光線、風で揺れる花でカメラマン泣かせである。シャッターチャンスもさることながら太陽光線が周辺の植物の葉を反射させ、花と背景の露出が合わないのである(色飛びという)。花の撮影は陽があたらない早朝が最も適している。この地に届いたのは9時すぎ、すでに陽が差していた。

 ひとりで撮影にきたときは、太陽が雲に隠れるのを待ってシャッターを切る。
 1つの花が太陽に当たった場所と日陰の場所になり難しいのである。NDフィルターを用いて花を生かして撮影する方法もあるが、山歩きでは携帯していない。撮影に没頭していたときはカメラザックに撮影機材を入れ重い三脚を肩に担いで歩いていた。写真集を3冊出版し終えた今は、花をめぐる山歩きとなっている。

 コバギボウシの撮影に何度もシャッターを押した。山の雰囲気も取り入れ撮影した。撮影した写真をカメラの液晶モニターで確認する。まーまーか。花に会えたことに満足した。

 縦走路での撮影を終え、山頂の巨石から佐賀県方面を展望した。しかし気温が高くて空気は霞み視界は悪かった。視界が良ければ佐賀方面や有明海の展望が楽しめる。この大きな岩は、刀で切ったように中央から真っ二つに割れている。この2つに割れた岩が貝の蛤に似ているから蛤岳と名付けている。脊振山系では方々に巨石がある。

 場所を変え、我々の秘密の園で休憩した。湧水もあり山桜の大木が10本ほどある。筆者は毎年、仲間と花見におとずれている。休憩ポイントは小高く左右が小さな湿地になっている。右手の湿地にコバギボウシが10本近く点々と咲いていた。蕾もあれば見頃の花、咲き終えて萎んだ花など種々であった。

縦走路の左右に咲くコバギボウシ
縦走路の左右に咲くコバギボウシ

 仲間はスマホやカメラで、それぞれ撮影した。変な花があると仲間の声がする。筆者はカメラをもって駆けつけた。コバギボウシの花の上で孵化したばかりの蝉が透明の羽や体全体が白い菌に覆い尽くされていた。「冬虫夏草みたい」と仲間の女性。

 帰宅して知人である中学生の昆虫博士に知らせた。答えは、「その蝉はヒグラシでボーベリア菌に感染しています。白いのは、そのカビです」と知らせてきた。AIで調べると自然界では昆虫の種が増えすぎるのを抑制する菌であると。その菌は、人間には感染しないので安全性の高い農薬として製品化されているらしい。(写真の掲載は遠慮する)。

 場所を変え、違う沢の湿地に仲間を案内した。日当たりの良い場所のコバギボウシの花はすでに開花を終え、樹木の影のコバギボウシは蕾であった。10年前と周辺は様子が変わり狭い湿地は灌木で覆われていた。自然界も時を経て変化するようだ。

 筆者たちは花に会えて満足し、森の中の小さな沢を3回ほど渡り蛤水道へと下った。この森は、春にクロモジの黄色いトンガリ帽子の花が咲き静かで素敵な山道でもある。

 山を歩いたのが短時間だったので、下った後、蛤水道記念碑の前のベンチで20分ほど休憩した。山と別れるのが惜しかったのである。高齢の夫婦が、筆者たちが下ってきた道の方へ進んで行った。林道を車で下り大杉の前で仲間と別れた。
3時間ほどの山歩きだったが良い日であった。

コバギボウシ ユリ科

 葉は10~20cmほど。細長く縦筋となっています。花はロート状になりユリの花より小さく膨らみがあります。オオバギボシは名前の通り縦筋の葉は大きい。時々、農家の庭先に植えられているのを見かけます。名前の由来:擬宝珠とは橋の欄干の上に取り付けられたネギの花に似た球体状の装飾です。それに似ているからです。

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

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