【BIS論壇】衰退する日本の輸出

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は9月8日の記事を紹介する。

貿易 イメージ    1980年代末に首位をうかがっていた日本の輸出が2026年1~6月期にお隣りの韓国・台湾にも初めて抜かれて6位に落ち込み、日本経済の衰退はとどまることをしらない状態だ。新聞では「貿易立国再興に影」だと報じている。

 韓国や台湾はAI、半導体の輸出が急伸し、26年上半期の集積回路の輸出額は韓国1,490億ドル、台湾1,332億ドル。輸出全体に占める比率は韓国、台湾とも3割。これにくらべ、日本は212億ドルで日本の総輸出に占める比率はわずかに5%だ。

 日本のお家芸の半導体製造装置輸出は150億ドルで韓国52億ドル、台湾の35億ドルを上回っている。だが付加価値の高い最終製品に注力している韓国、台湾の後塵を拝している現状だ。AI向け半導体の爆発的拡大に先端半導体輸出で呼応している韓国、台湾に太刀打ちできていない日本は今後、戦略的な対応が不可欠だ。

 JETROによると日本の25年の輸出額は世界6位に後退。筆者がブラジル、ニューヨークに総合商社駐在員として勤務していた時代の1970~90年代は輸出は米国、ドイツに次いで3位だった。それが2000年代になるとWTOに加盟した中国が台頭し4位に後退。さらにオランダ、香港にも抜かれ、6位に後退。かつてメイド・イン・ジャパンが世界を風靡した日本は政治、経済、貿易における衰退振りを象徴している情けない現状だ。

 これにくらべ、先端AI開発競争の時流をつかんだ韓国、台湾の国家戦略は大きな果実を手にした。今後日本もデジタル、AI時代に合った成長モデルを描けなければ、物づくりでもサービスでも日本の再興はおぼつかないと8月8日付の日経は報じている。

 一方、国家競争力の基盤となる企業・大学の研究開発費に目を転ずれば、2024年にAI、ロボットなどの科学技術分野で躍進する中国が米国を抜き世界首位となり、世界の注目を浴びている。24年の中国の研究開発費は米国を抜き97.1兆円。2位の米国95.3兆円。日本は3位で22.1兆円。4位ドイツ18.3兆円。5位韓国15.3兆円とドイツ、韓国が肉薄している。

 財務省が9月1日に発表した25年度法人企業統計によると全産業(金融・保険業を除く)の内部留保は過去最大の約654兆8,000億円に達したが、賃上げの伸びは鈍い。企業利益を従業員の賃上げに回し、内需の増加に寄与すべきだ。さもなければ、躍進を続ける中国、インド(4~6月期、7.8%の高度成長を達成)にも後れを取り、日本の衰退はとどまるところを知らないだろう。


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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