中国経済新聞 2026年9月号掲載記事にデータ・マックスで編集を行ったものです。
8月19日、杭州の人型ロボットメーカー・ユニツリー(宇樹科技)が上海証券取引所で技術系ベンチャー銘柄として上場した。発行価格は1株180.8元で時価総額は約610億元であったが、最初の取引で株価は629%上昇の1,100元となり、時価総額は一気に4,449億元(約10兆3,363億円)まで膨らんだ。技術系銘柄の抽選倍率は約0.018%、1単元(500株)の含み益は最大約47万元と報じられた。「人型ロボット第一号」という言葉が、そのまま買い注文につながった。
それから約4週間が経過した9月中旬、ユニツリーの株価は約57%下落して470元前後となり、時価総額は2,500億元近くも下がって1,900億元(約4兆4,142億円)台となった。
株価急落の理由は、技術面で突如欠陥が出たからではない。そもそも当初の値が、現状の姿でなく2030年以降のあり方を織り込んでいたからだ。
ユニツリーの株の動きを見る。上場直後、自由な売買が可能だった株数は、発行済の7.44%程度の約3,009万株であった。しかし供給がごく少ないなかで978万の口座が買いに殺到する。技術系銘柄は最初の5営業日に値幅制限がなく、少量の資金で値段が飛び、初日の売買回転率は85%を超えた。抽選に当たった投資家が利益を確定し、乗れなかった人が高値で追う。典型的な品薄相場である。野村証券が初日に出した目標株価は370元、主幹事の中信証券が想定していた妥当時価総額も500億元台だった、と報じられている。市場はそれを無視し、4,449億元まで走った。しかしその分だけ、値戻りも急激であった。
値下がり分の2,000億元は、工場が炎上したわけでもなく、現金が社外に流出したわけでもない。期待と希少性が作った評価額が、取引可能な株数の範囲で巻き戻されただけだ。だから「会社が死んだ」と「株が死んだ」は別物、と考える必要がある。
ユニツリーの成長は本物だ。売上高は2023年が1.59億元、2024年が3.39億元、2025年が16.99億元(約398億円)で、人型ロボットは出荷台数が2025年に5,500台を超え、四足型を抜いて主力品種になった。2026年上半期は売上高が11.52億元(前年同期比+48.5%)で、2.74億元の純利益を計上した。しかし伸び率は鈍った。2025年は年間売上増加率が3倍超であったが、2026年1~3月は約68%、上半期は48%である。上半期の控除後利益は約19%減った。研究開発費と販売費が先行している。サクセスストーリーを買うなら許容できるが、「すでに革命を起こした会社」の値段ではない。
さらに翌日、創業者の王興興氏が世界ロボット大会で、「身体性知能の『ChatGPTの瞬間』」──未知の環境で音声指示だけで約8割の仕事ができる状態──になるまで、早くて2~3年、遅ければ5~10年。固定作業なら成功率は高い。物や部屋が少し変わると落ちる。汎用化が不十分。今、工場での大規模な導入ができないのも、人間に比べて効率が落ちるからだ」と述べた。
上場当日に「未来は訪れた」として株を買った投資家にとって、この言葉は裏切りに聞こえた。だが発言の中身は、目論見書や過去の講演と大きくは矛盾しない。矛盾しているのは市場の方だ。技術系ベンチャーの「国家戦略ハードテック」という看板、DeepSeekやテンセント(騰訊)関連の戦略投資、春節特別番組でのパフォーマンス。サクセスの材料は揃っていた。王氏が絵を描かなかったのではなく、買い手が「来年の工場での置き換え」まで先に値付けしたのだ。
取引先の中身がそれを裏づける。2025年1~9月の人型ロボットの売上収入内訳を見ると、大学・研究機関が7割超、商業用途が2割弱、産業用途は1割未満で、実際に現場で導入されたものはさらに少ない、との分析がある。展示・研究・観光用の「見せるロボット」と、Amortize(分割・償却できる)できる「働かせるロボット」は別物だ。後者について、「単価と維持費、故障対応、ソフトウェアの定期メンテナンス分を足すと、単純作業の工賃より高くつく」業界内ではこのような試算が繰り返されている。またその金額も、製品によって違う。民生向けのG1タイプは数千ドルであるが、産業向けは桁が違う。いずれにせよ、「人間の3分の1の時給で24時間動く」段階はまだ訪れていない。
四足ロボットから人型ロボットへ移行したユニツリーの強みは、アクチュエータの自社開発、量産化、価格面である。同時に、脚式ロボットの制御理論や一部設計思想は、長らく大学やオープンソースの「系図」上にある。参入者が増えると動きも似通るようになり、差がつくのは価格と納期とブランド性となる。導入初期に部品が揃って組立競争となった電気自動車によく似ている。出荷で先行しても利益率は「唯一無二」の値段を支えにくい。
ユニツリーの株価が下がった後、金沙江創投の朱嘯虎氏らが「経済性がない、というなら客がつかない」と公言してこの分野から距離を置いた話が再び持ち上げられた。デモの映像は資本を集め、減価償却表は資本を落ち着かせる。
ユニツリーのPER(TTM)は9月中旬の時点でも300倍台で、発行価格よりなお高い。流通が増え、ロックアップが解け、同業者が続けて上場すれば、需給の特権は薄れる。逆に、未知の環境での作業成功率が実際に跳ね上がり、自動車製造以外の反復作業で人間に代わることができれば、今の1,900億元は「サクセスの入口」に見える。
ユニツリーは技術会社として弱体化したわけではない。弱くなったのは期待値の管理だ。市場は革命の初日を求め、経営者は十年単位の底値を語った。2,000億元の減少は、谷底の深さではなく、初日に谷底を埋めたつもりの値段が取引開始と同時に「露出」したからだ。人型ロボットが人に代わるのは宴会ではなく、コスト、メンテナンス、汎用化の長期戦である。ブーム後退の後に残るのは、出し物ではなく、一台あたり何元で何時間動くか、という計算書のみである。
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