寡占化を推進するヤマダデンキグループ(8)住建セグメントは成長したが…
次々に住宅系企業を傘下に
(株)ヤマダホールディングスは2000年代後半、地上デジタル放送への移行や薄型テレビへの買い替え、エコポイント制度、省エネ家電需要などの追い風を受けて急成長。2011年3月期には、連結売上高2兆1,532億円となり、1つのピークを迎えた。ただ、その一方で、家電量販業界では需要の反動減が発生。家電販売だけに依存した成長には限界が見え始めていた。そこで、ヤマダグループが10年代に本格化させたのが、後に「くらしまるごと戦略」へと発展する住生活関連事業への多角化である。
同戦略は家電だけを売るだけではなく、生活やそれに関連する商品・サービスを提供できるようにすることで、顧客層の拡大や顧客との関係を家電購入時だけで終わらせず長期化させ、いわば「ヤマダ経済圏」とも呼べる顧客接点の形成を目指すものである。同戦略のもと、異業種企業をグループに取り込み、現在では大きく「デンキ」「住建」「環境」「金融」などのセグメントで事業を推進している。このうち、住建セグメントを構成する主な企業は以下の通りだ。
(株)ヤマダホームズ
11年に老舗ハウスメーカーであるエス・バイ・エル(株)と資本提携。18年に完全子会社となった。21年に(株)ヤマダレオハウス(旧・(株)レオハウス)などを吸収合併
(株)ハウステック
12年に(株)ハウステックホールディングスを完全子会社化。13年に同社を(株)ハウステックへ統合した。日立グループ時代から続く住宅設備機器メーカーで、ユニットバス、システムキッチンなどを製造・販売する。
(株)ヒノキヤグループ
20年にグループ入りした。高性能全館空調システム「Z空調」を搭載した快適な住宅供給に定評がある
(株)ヤマダ住建ホールディングス
21年にヤマダホールディングスの住建セグメントを統括する中間持株会社として設立された
現在につながるデンキ、住建を中心としたセグメント区分での開示が始まったのは21年3月期から。同期の状況を売上高ベースで見ると、全体売上高1兆7,525億600万円のうち、デンキが1兆5,335億9,100万円(売上構成比<セグメント売上高を単純に連結売上高で割ったもの>87.5%)、住建が1,905億9,400万円(同10.8%)、その他(当時は環境と金融はこのなかに含まれていた)が895億8,100万円(同5.1%)となっていた。
約1,400億円を上積み
一方、直近の26年3月期では、全体売上高1兆6,918億800万円。各セグメントの売上高はデンキが1兆3,537億4,200万円(同80.0%)。住建は3,338億6,600万円(同19.7%)、環境は428億3,500万円(同2.5%)、金融は47億1,000万円(同0.2%)などとなっている。住建がこの5期で約1,400億円上積みし、売上構成の約20%を占めるようになっており、このことは「くらしまるごと戦略」に一定の成果が現れ始めていると見て取れる。
住建セグメントを詳しくみると、26年3月期のヤマダホームズは売上高938億8,200万円(前期比2.4%増)、ヒノキヤグループは売上高1,772億8,600万円(同22.4%増)。26年期、とくにヤマダホームズにおいては、分譲住宅事業の強化に加え、ヤマダデンキ店舗への「住まいの相談カウンター・ヤマダ不動産」の展開、広告投資の推進などにより、注文住宅が好調に推移した。
21年期から26年期の5年間は、コロナ禍による「巣ごもり需要」、それに対応するための土地取得の強化、資材価格上昇にともなう価格転嫁が奏功したことなどが、住建の売上規模拡大の主な要因だ。また、ヤマダホームズについては、レオハウスや長野県のホクシンハウス(株)、富山県のセキホーム(株)といった、ハウスメーカー、地域ハウスビルダーを傘下に置いたことも業績拡大の要因となった。
このほか、ヒノキヤグループについても、同社の代名詞ともいえる「Z空調」のフランチャイズ展開、同社の子会社である(株)日本アクアを通じた断熱材事業(ウレタンフォーム)の販売などにより業績を伸ばしている。なお、住建のセグメント利益は21年期49億5,700万円、22年期73億6,200万円、23年期85億7,600万円、24年期56億3,000万円、25年期93億7,200万円、26年期102億5,400万円と、増減を伴いながらも100億円まで拡大させた。
勝ち組になれるか
このように、近年、業績を拡大している住建セグメントであるが、26年3月期の売上高3,338億円は住宅業界においては、決して大きくない規模だ。たとえば、戸建分譲最大手の飯田グループホールディングス(株)は、同期に1兆5,000億円強の売上高となっている。大和ハウス工業(株)はもはやハウスメーカーとはいえないほど多角化しているが、同期に5兆5,000億円を超える規模にまで拡大している。
住宅市場全体の先行きも決して明るくはない。新設住宅着工戸数はコロナ禍による巣ごもり需要により21年、22年と85万戸台となったものの、24年に79万戸、25年には74万戸台に減少。資材価格や土地価格はもちろん、住宅ローン金利の上昇などで26年も住宅取得環境は厳しさが増すとみられる。少子化の進行により住宅取得者の減少も見込まれるため、将来的にはさらに減少するものとみられる。これまで順調に拡大してきたヤマダグループの住建セグメントだが、こうした背景を考慮すると、必ずしも持続可能性が高いとは言いがたく、住宅業界の勝ち組になれるのか注目されるところである。
そして、何より気になるのが、シナジー効果が本当に創出できているのかどうか。住建の売上規模を拡大する一方、全体の業績は21年期1兆7,525億600万円、営業利益920億7,800万円から26年期には売上高1兆6,918億800万円、営業利益 161億6,600万円まで縮小している。なかでも22年期から24年期にかけて3期連続の減収減益となった。
営業利益は5期の間に約759億円、約82%減少。デンキセグメントの体質が弱まっていることが明らかであり、このことを背景に、ヤマダホールディングスは家電量販業界の再編をさらに進める方向にあり、27年10月に予定される(株)エディオンとの経営統合にも注目が集まっている。
(つづく)
【田中直輝】









