樋口明県議は『被害者』ではない~福岡県議会で証言が相次ぐ金銭授受疑惑の深層

蔵内勇夫前福岡県議会議長
蔵内勇夫前福岡県議会議長

    蔵内勇夫・前福岡県議会議長の辞職にともなう筑後市選挙区の県議補選(定数1)は4日投開票され、無所属新人で自動車学校取締役・牛島慶二郎氏(県農政連・公明県本部推薦)が、共産新人で党筑後地区常任委員・河野一弘氏と、無所属新人で元会社員・坂野忠幸氏を破って初当選をはたした。

 全国の注目を集めた補選だったが、当日有権者数は3万9,739人に対し、投票率は30.00%と低迷した。前回選より15ポイントも低い過去最低の投票率であった。言い換えれば7割も棄権したことになる。

 既報の通り、今回、自民筑後支部は「静観」するなか、地元代議士・藤丸敏氏の八女事務所の秘書が牛島氏の事務所に入り、農政連や公明党県本部が推薦した。牛島氏が強調した「しがらみのない選挙」とは裏腹に組織団体主導の選挙であったことになる。

 地元・筑後市の市議や市民に話を聞くと「関心がなかった」との声が少なからず聞こえてきた。自分たちの地元代表を選ぶ選挙であるにもかかわらず、関心がないというのは、蔵内氏を応援してきた人々が今回の補選にまったく関与していないこともあるが、突然の選挙で判断材料が少なかったこともあるのではないか。

 SNSでは、牛島氏も「いずれ自民党入りする」との見方をする声がある。市民にとって一連の問題で筑後市のイメージが損なわれたことのほうが深刻で、熱量をもって関与したい選挙とはならなかったのだろう。

金銭提供は「出世の手段」であった

 補選の前々日、2日午前、福岡県議会の正副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑について自民党県議団の樋口明議員が福岡県庁で記者会見を開いた。会見では2017年5月の議長就任前、当時の自民県議団幹部から要求され、ゴルフ代や飲食代など600万円超を支払ったと明らかにした。幹部の名前は明かしていない。実名での証言は吉松源昭・江藤秀之両氏に続き3人目となる。

議長就任祝賀会であいさつを述べる樋口明県議
議長就任祝賀会であいさつを述べる樋口明県議

 樋口氏は、吉松源昭県議も証言していた自民県議団幹部のゴルフ会「蔵内会」あるいは、他会派も参加する「マスターズの会」に参加して約150万円を負担したほか、自民党県議団幹部らとの食事会とお車代、そのほかにも、不参加だった「マスターズの会」の旅費、ゴルフ代300万円を支払ったという。17年1月の県議団幹部との新年会がフランス料理店で行われた際の食事代など、数々の金銭提供を証言した。

 会見で樋口氏は「県議団の役職や委員会の委員長を務めたとき、議員との会食で2次会の代金を払うことがあった」とも語っており、「全部で約1,000万円になる」とも述べている。吉松氏との金額などの微妙な違いはあるものの、主流派に属した樋口氏の証言が出たことで、正副議長ポストなどで金銭が動いていることは間違いないだろう。

 だが、重要な点を指摘しておきたい。樋口氏は9月下旬まで自民県連幹事長を務めていたが、「議長就任のために現金を渡したり、受け取ったことは一切ない」としながら「議長就任や県連幹事長など幹部就任が危ぶまれた」とも語っており、金銭提供が「出世の手段である」ことを理解したうえで渡したことは疑いようがない。したがって「被害者」ではなく、むしろ福岡県議会の利権構造を手助けした一員とみるべきだ。

自民・民主「オール与党」体制でのタカリの構造

 一方、樋口氏のもとで副議長を務めた国民民主党の守谷正人県議は「マスターズの会には参加したが会費は支払った」「金銭授受は行っていない」と否定した。県連の調査でも金銭授受について否定している。

 守谷氏のほか、立憲民主党に所属する5人の副議長経験者のいずれも否定しているが、旧民主会派の県議の間でも「本当に真実を述べているのか」と疑惑は晴れていない。

 当社では、2日に吉松氏に来社してもらい、改めて一連の問題について話を聞いたが、吉松氏は、旧民主系の副議長の集金係は「蔵内氏の盟友・旧民主重鎮の吉村敏男氏」と明言した。

 こうした自民だけでなく、旧民主系まで抱き込んでのタカリの構造を取り仕切ったのは、蔵内氏や議員辞職した中尾正幸前副議長、現職では、松尾統章前県議団会長や、松本国寛前県連会長、原口剣生元県連会長の「5人組」であるといわれているが、いずれも金銭授受について否定している。

 金銭授受だけではない。蔵内氏の議長職辞職勧告決議案の採決を中止させる動議を提案した林泰輔県議も、X(旧・Twitter)の裏アカウント「みみず屋さん」で、吉松県議や批判的な人々を攻撃、中傷行為を繰り返した。林氏に対しては問責決議案が可決し、自民党県議団を退会し1人会派となったが、依然として自民党籍をもっている。

 ある会派の県議は「林氏のSNSの投稿について自民の県議にやめさせるよう指摘したが、言ってもきかないと消極的だった」と語ったが、林氏が蔵内氏の元秘書であることから、自民会派内で「蔵内氏の側近だから特別扱いになっていた」との声もある。

 取材を進めるなかで、県行政および県議会には「蔵内案件」なる用語があり、蔵内氏の意向を受けた事業などは優先的に予算がつくなどしていたことがわかった。

 県民の目が届かないことをいいことに、県議会では長年にわたってやりたい放題行われてきたが、もはやそのようなことは許されない。次の選挙で、自民を中心に県民不在の利権あさりを行った県議を落とすべきである。

【近藤将勝】

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