縮小続く市場。印刷技術だけでは未来はない
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福岡印刷工業(協) 理事長 田平 保男
電子媒体の普及が逆風に
現状、印刷業界の市場は縮小傾向にあると言えます。紙の媒体自体が世の中からなくなることはあり得ないでしょうが、その使用範囲、用途は確実にほかの媒体に取って代わられてきているように思います。またインターネットの普及も間違いなく紙媒体を減らす原因になっているのに加え、さらに近年では、スマートフォンの普及がそれに拍車をかけました。今はまだ老舗の印刷業者もたくさんおりますが、今後、程度の強弱はあれ、再編は進んでいくと思います。
かつて印刷物は、専門的な技術と設備がないとつくれませんでした。ところが今では、家庭にパソコンが当たり前のようにあり、簡単な印刷物なら各自でつくることができます。また、他業種からの進出も要因の1つです。コンビニエンスストアなども印刷サービスを展開するようになりました。年賀状の印刷などは、かつては印刷業者にとっての年末のボーナスのような大きな収入源だったのですが、今ではほとんど期待できなくなりました。
ただ、パイは小さくなってきましたが、業者の数もどんどん減ってきています。もう少し時間が経てば、市場縮小も底を打つと思いますし、そのときまで残ることができた業者は、残存利益を受けることができるでしょう。
情報を扱う、ということ
印刷業が扱うのは、各企業の命とも言うべき情報です。その情報を慎重に扱ってくれる業者であることは、選ばれる必須条件になると思います。たとえばプライバシーマークの取得など、お客さまに安心して任せていただける状況を提示できるのは、今は当然のように求められています。情報の取り扱いについては非常にデリケートになりました。
印刷業といえば、かつては印刷機械があって職人が刷り上げるというイメージだったように思うのですが、それだけでは安心を得ることができなくなってきたのです。印刷は設備産業と認識されていますが、印刷の機械だけではなく、情報の流出を防ぐ設備まで投資を迫られているのが今の状況と言えます。
印刷のノウハウを応用せよ
現在、印刷だけの価値は相当程度、低くなってしまったように感じております。安ければいいという価格競争も一部始まっていますが、そのような波に乗ってしまえば、企業は疲弊するだけです。印刷業は印刷を職人的にこなす業者という位置づけから、コンテンツをプロデュースする企業へのパラダイムシフトが求められていると思います。
印刷業には、これまで情報をデザインしてかたちにしてきた経験があります。その経験を活かして、情報をどのように加工すればお客さまのニーズを満足させることができるか、どう発信すればどのようなレスポンスが得られるのかといったことを提案し、実現していかなくてはいけないと思います。それは紙の媒体のみならず、たとえばインターネットや電波媒体などとのコラボレーションなどで、お客さまの望む効果を発揮していくことが大切です。紙にインクを載せるだけの仕事ではなく、紙にインクを載せることで期待しているお客さまの望みを叶えることが求められているのです。その提案力と業界に偏らないシームレスな技術力が、生き残りのカギだと思います。(談)
<COMPANY INFORMATION>
福岡印刷工業 協同組合
理事長:田平 保男
所在地:福岡市博多区築港本町6-1
TEL:092-271-2700
URL:http://www.fukuinkyo.or.jp/<プロフィール>
田平 保男(たびら やすお)
1947年6月生まれ。八幡大学(現・九州国際大学)卒業後、(株)チューエツを経て78年にアド印刷(株)を設立。現在、福岡印刷工業(協)理事長。法人名
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