白紙に戻る?~ふくおかFGと十八銀行の経営統合
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日銀は安倍総理が掲げる三本の矢、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」を支援するため、2016年1月29日、地銀の収益に大きな影響を与える「マイナス金利政策」の導入を決定。
それから約1カ月後の2月26日、ふくおかFGと十八銀行は、経営統合することで基本合意書を締結したと発表。経営統合のスケジュールは以下のようになっていた。
(1)2016年2月26日 基本合意書締結
(2)2016年8月 両社取締役会で決議し、最終契約を締結
(3)2016年12月 臨時株主総会
(4)2017年4月1日 株式交換効力発生日(経営統合日)
(5)2018年4月 十八銀行と親和銀行の合併この経営統合の発表は九州地銀のみならず全国の地銀に大きな衝撃を与えることになった。人口の減少に伴う地域経済の縮小が地方銀行に与える影響は大きい。金融庁がこの経営統合をモデルケースに、全国の地銀に経営統合を促していると見られたからだ。
しかしこのふくおかFGと十八銀行の経営統合に暗雲が漂うことになった。2016年7月8日、公正取引委員会が独禁法上の問題を提起したからだ。
(株)ふくおかフィナンシャルグループと(株)十八銀行の経営統合に関する報告等の要請(第2次審査の開始)及び第三者からの意見聴取
公正取引委員会は、(株)ふくおかフィナンシャルグループと(株)十八銀行の経営統合について、(株)ふくおかフィナンシャルグループから独占禁止法の規定に基づく計画届出書の提出を受け、本件経営統合が競争に与える影響について審査を行ってきたが、より詳細な審査が必要であると認められたので、(株)ふくおかフィナンシャルグループに対し、報告等を求めた。また、本件経営統合が競争に与える影響について、第三者からの意見書を受け付けることとした。これによりふくおかFGと十八銀行は今年1月20日、公取委の審査長期化に伴い統合時期を10月1日まで半年延期すると発表した。
公取委の審査が長期化しているのは、十八銀行と親和銀行の合併によって長崎県内の貸出金シェアが約7割にのぼる「市場の寡占化」。離島などではシェア100%となり、地域地元経済界には「市場が寡占化して貸出金利が上がるのではないか」といった不安があるためだ。
一方金融庁監督局の西田直樹審議官は3月8日、ふくおかFGと十八銀行の経営統合に対して、地元企業の理解を引き出そうと異例の地元説明会を長崎市で開催。「経営統合を推進しているわけではない」と前置きしつつ、「統合でつくり出される経営資源の余力を、地域経済活性化に資する分野に振り分け、顧客本位のサービスを提供することが重要だ」と、地銀再編の意義や目的などを説明して、経営統合に対する地元の不安解消に努めたという。
これを受けて菅義偉内閣官房長官は同日の記者会見で、ふくおかFGと十八銀行が目指している経営統合について、「現在、公正取引委員会で審査が行われている途中であり、コメントは控えたい」とした上で、「地域の金融機能がさらに円滑に発揮され、地域の活性化につながることを期待したい」と述べたという。
今やふくおかFGと十八銀行の経営統合は公正取引委員会と金融庁が対決する政治問題となっており、政府も手が出せないというのが現状ではないだろうか。
官対官が綱引きすることになったふくおかFGと十八銀行の経営統合。これが認められるには、十八銀行の店舗及び行員を西日本シティ銀行傘下の長崎銀行に譲渡する必要がある。どこまで譲渡するかはわからないが、その規模次第でこの経営統合は白紙に戻ることになりそうだ。
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】
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