2024年12月23日( 月 )

豊洲市場、東京都が黙殺した「仲盛説」で耐震問題が再燃(1)

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 「安全性よりも行政(小池百合子都知事)の都合が優先されているのではないか」。10月の開場が近づくなか、いまだ移転への疑問の声が絶えない豊洲市場。NetIBでは、(協)建築構造調査機構(福岡県)が指摘する構造設計の問題を報じてきたが、その内容が再び市場関係者の注目を集めている。

 建築構造調査機構は、欠陥マンション問題に関する技術アドバイザーや公共施設の耐震問題を摘発する活動を行う民間団体。その代表理事を務める仲盛昭二氏は、豊洲市場の水産仲卸売場棟における構造計算の法令違反などについて昨年11月21日、東京都に対して、豊洲市場の構造体の補強など是正措置を求める訴訟に踏み切った(同日、東京地裁は訴状を受理)。

 市場移転に疑問をもつ市場関係者は、『小池百合子研究』と題したレポートを作成・配布している。そのなかで、NetIBに掲載した仲盛氏のインタビュー記事が引用された。内容は、仲盛氏が提訴に踏み切るまでの経緯を尋ねたものだ。

【山下 康太】


記事「豊洲市場の法令違反設計に関して東京都を提訴」(17年11月22日)

 (協)建築構造調査機構(仲盛昭二理事長)は、かねてより、豊洲市場水産仲卸売場棟の構造計算(設計は日建設計)において建築基準法施行令などの法令違反となっていることを、東京都や日建設計、構造設計者の団体である日本建築構造技術者協会の森高英夫会長(市場問題プロジェクトチームの委員でもある)らに対して、指摘および質問をしていたが、当事者らが何ら対応をしようとしないため、東京都に対して、構造体の補強などの是正措置を求める訴訟に踏み切り、2017 年11 月21 日、東京地裁に訴状を提出し受理された。(以下は、仲盛昭二理事長への電話インタビュー)

 ――今回の訴訟に至るまでの経緯を教えてください。

 仲盛 豊洲市場の設計を行った日建設計は国内で最大手の設計事務所です。しかしながら、豊洲市場水産仲卸売場棟の構造計算書において、いくつかの法令違反が判明しました。それは、建築基準法施行令第82 条の2(層間変形角)、建築基準法施行令第82 条の3(保有水平耐力計算)、建設省告示(1980 年)第1792 号に違反しているということです。これらの法令違反のため、建物の安全を確認できない状態となっているので、安全を確保するための対策を講じるべきであると、東京都や日建設計などに対して、何度も指摘や質問を続けてきましたが、回答はありませんでした。

 ――東京都や日建設計は、仲盛さんの指摘や質問に対して回答はなかったということですね。NetIB-NEWS 編集部からも質問状を送付しましたが、日建設計から、「市場問題プロジェクトチームの議事録をネットで見てください」という不誠実な回答が返ってきただけでした。法令違反の設計は、具体的には、どのようなことでしょうか。

 仲盛 層間変形角という地震の揺れにより建物が傾く角度は、法令により「1/200」と定められていますが、この建物の構造計算書では「1/117」と、法令の定めよりも大きく傾く設計となっており、法令違反なのです。
 また、地震の際の建物の壊れ方を検証する保有水平耐力計算における重要な係数を不正に低減した設計が行われていました。正規の係数で計算をした場合、東京都が定めた耐震強度のラインを下回ってしまいます。
 水産仲卸売場棟の構造である鉄骨鉄筋コンクリート造においては、1F 柱脚(柱の根元)が非埋め込みかたちの場合に必要とされる鉄量(アンカーボルトと鉄筋の断面積)が定められていますが、この建物では、規定量の56%の鉄量しか存在していない(44%不足)ことも明らかになっています。この鉄量についても、東京都や日建設計に質問をしましたが、回答は返ってきませんでした。

 ――水産仲卸売場棟は、現実に危険な状態であるということでしょうか。

 仲盛 私が指摘した、豊洲市場の設計における法令違反が、直ちに、建物の倒壊につながると断言できるものではありませんが、その可能性は高いといえます。東京都の多額の税金を投入し、老朽化した築地市場に変わる都民の台所として誕生した豊洲市場は、今後、何十年も都民の暮らしを支えていかなければなりません。その施設が法令違反の設計が行われており、大地震が発生した場合に真っ先に被害が生じるようであれば、市場としての機能をまったくはたすことができません。

 ――水産仲卸売場棟は建替えなどの措置が必要ということでしょうか。

 仲盛 建物を建て替える目安となる耐震強度は「50%未満」とされています。この建物は法令違反の設計が行われていても、耐震強度は50%以上ありますので、補強により安全を確保することが現実的であると思います。東京都民の皆さまも、法令に違反した状態を解消すべきと考えられるのではないでしょうか。
 東京都が行政としての責任を放棄しているので、司法の判断を仰ぐべきだと考え、私どもは、今回の提訴に踏み切りました。裁判を通じて、違法な設計の実態と、東京都や日建設計がこれを隠ぺいしようとした事実を明らかにしていきたいと思います。裁判の進行については、ネット上での公開を考えています。

(つづく)
【近藤 鉄三郎】

 
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