ハローワーク非正規5割、これは改革のチャンスだ!
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九州のハローワーク(公共職業安定所)の職員の5割余が1年契約の非正規労働者だという記事が西日本新聞の4月6日付朝刊1面トップに掲載された。ハローワークといえば、求職者が訪れる窓口で、対応する側の職員が「明日は我が身」とばかりに不安定雇用というのはブラックユーモアだ。
だが、これは、ここ数年の話ではない。厚生労働省は、国の省庁の中で最も非正規職員の多い省庁だった(法務省の保護司を除く)。それが、リーマン・ショックの雇用対策で、職業紹介などを担当する相談員を数千人規模で増やして、全国で2万人以上の非正規職員を抱え込むようになった。失業対策のために、ハローワークが自ら雇用して責任を果たしたという、なんとも麗しい美談である。本来、雇用情勢が回復すれば減らしてしまえばいい話だが、そうともいかず、焼け太ったまま抱え込んでいると言ってもいい。
大ニュースになったのだから、これを機会に、公務員改革を断行すべきだ。そもそも、正規(正社員)か非正規かという雇用形態の違いが、格差、低賃金、不安定という問題に直結するのがおかしいではないか。安倍首相も掲げるようになった「同一労働同一賃金」にして、「多様な働き方」にルートを切り開くチャンスである。
公務員にも、年功序列型の人事制度は時代に合わなくなっている。新卒一括採用、終身雇用だからこそできたし、高度経済成長時代はそれで良かった。
年功序列型の賃金は、若い時は実際に働いた労働に見合わない安い賃金で働き、30代~40代でちょうど労働に見合う賃金をもらい、それ以降は、働いた分より多くもらい、若い時の元を取り返し、高額退職金を手にするまで「可も不可もなく」平穏無事に勤めあげる。だから、今の中高年は働きに比べて分不相応な高給をもらい過ぎているのである。そういう連中が、日本の人口構成の一番分厚い層をなしている。退職金も中小企業に比べればガッポリもらって、崩壊寸前の年金制度という「ドロ舟」が沈む前にいち早く年金生活に入る。
高度成長前は、公務員は民間企業に比べて薄給だったが、今は、中小企業で公務員と肩を並べられる企業は数少ない。日本は、国の官僚組織も地方の行政組織も企業も中央集権型、年功序列、上からの指示重視、「成果よりも和」を重んじる組織文化だ。中央集権型では、意思決定が遅く、経済でも政治でも動きの速い世界情勢に対応できなくなっている。民間では、分散型意思決定に変化している企業や組織も生まれている。
行政である以上は、統一的ルール、統一的な判断が必要だが、本来、それは法的根拠に基づくべきだ。通達行政、「Q&A行政」が横行しているうえ、ひどいのは官僚が「おれが決める」とまで言う傲岸不遜。生活保護では窓口で申請書を渡さない(なんの法的根拠なし)、限定列挙と例示の違いも分からない担当者が「該当しません」と断言する(何を根拠にしたのか意味不明)、ある政令市の課長に至っては、行政のつくった委員会が審査して結論を出すはずなのに「決めるのは私です」と言う(第三者委員会の形骸化、単なるお飾り)。
公務員には、市民が行政サービスを受けられるように必要な手続きを教示する義務があるが、サービス業だという認識も、職務上の注意義務あるとの認識もない。「俺様」行政の肥大化が、公務員人件費の膨張剤になっている。
非正規の増大をマイナスととらえず、これをきっかけに、「多様な働き方」を導入して、効率的な行政、リーダーシップ型の組織に転換したらどうか。少なくとも企業が導入している2本立ての人事賃金コースが必要だ。管理職に昇進していくコースと、マネージメントには関わらずスペシャリストとしてスキルを極めて現場で能力を発揮し続けるコースの2本立てである。公務員といえども、アップ&アップの賃金体系からアップ&ダウンに転換し、人事評価によっては、評価が高ければ賃金アップ、評価が悪い職員には賃金ダウンもあるべきだ。年功序列でもらい過ぎている中高年の賃金は、働きに見合った金額に落とせば、国家財政の節約にもなる。
国も、短時間正社員、勤務地限定正社員を推奨しているのだから、ハローワークの非正規5割の職員を、そちらに転換してみたらどうか。
ハローワークの相談窓口というのは、職業紹介、求人開拓、キャリア形成支援など、専門性の求められる仕事である。人を見抜く目も必要だし、その人のキャリアアップに何が求められているか的確に把握し、その人に相応しいアドバイスをする専門家だ。まさに2本立て人事制度にうってつけである。今でも、ハローワークや年金事務所の窓口などは、社会保険労務士が数年ごとに担当しているケースもあると聞く。厚生労働大臣所轄の国家資格なのだから、もっと活用を増やせばいい。人に関するスペシャリストが、その経験とスキルを活かしてキャリアを積んでハローワークで働き続けるもよし、転職して活躍するもよし。非正規や、短時間正社員、勤務地限定という働き方は、ワークライフバランスや、家庭や地域を重視するライフスタイルにもマッチする。問題は、働き方ではなく、賃金格差にある。
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