裁判事件で明らかとなった不可解な不動産売買~同日に3度の所有権移転
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昨年末に和解に至った1件の裁判事件を追いかける中で、興味深い不動産売買が浮き上がって来た。
その裁判事件は原告不動産業A社、被告も同じく不動産業であるB社。被告が春吉2丁目の建物と土地を、2014年10月に訴外会社に2億5,000万円で売却。その際仲介したA社がB社に対し、物件引渡し後に支払う予定だった仲介手数料の半金を支払うように訴えたもの。15年3月末に、物件を引き渡したが、その後残金約400万円が支払われていなかった。裁判が始まって間もなく、被告B社が和解案を提示し、速やかに終結に至った。
その事件を調査する中で、違和感を覚えた。というのも、2014年10月31日に所有権の移転が確認できたが、B社と訴外会社間だけではなかった。なんと同日に、個人の売主から所有権は3度移っていたのだ。
このような場合、通常なら、中間省略して、間の2社は名前を出さずに、例えば紹介料として利益を取るだけでいいはずである。ただ謄本に出れば取得税がかかるうえに、登記料、仲介料もその度に発生するはずなので、取引スキームとしては現実的ではないのだ。
同日に、2億円もの大金を複数の銀行間で、複数回移すのは難しい。それを考えると、3社が特定の銀行に集まり、売買を行ったと考えるのが自然である。前の2社は、売買時に資金調達することなしに、中間利益を得られる。さらに登記の受付番号は連番であることから、まとめて法務局へ提出されたといって間違いない。売主個人の知らぬところで行われた見事な連携プレーである。
それに加えて、この取引で裁判事件へ発展している。売主個人の知らないところで、話が組み立てられていたのだろうか。しかも、足跡を残す形で、それぞれ登記されており、複雑な仕組みでのビジネス展開されていたのか。真意はこの3社しかわからない。
知人の不動産業者に聞いてみた。「この取引スキームを元の所有者である個人様が知らなくても法的に問題ないですが、倫理的にどうなんでしょうね。ウチなら絶対言いますね」と話す。最初の売主がいくらで売却したかはわからない。しかし2社が利益を取っていると仮定すれば、売主はもっと多くの売却金を手にできていた可能性もある。さらに別の不動産業者は「この3回の売買で最も得をするのは仲介業者ですね。3回とも仲介料を取っていれば、売却金を考えても相当な額となります。売買業者よりも儲かっているんじゃないですか。こんな商売やってみたいですね」と羨ましげに語っていた。
【東城 洋平】
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