佐賀は全線フル規格の夢を見るか?~九州新幹線長崎ルート6者合意を読む(1)
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つなぎの「リレー方式」
九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)の開業時期をめぐり、与党検討員会や長崎、佐賀両県、JR九州、鉄道・運輸機構、国土交通省の6者は3月29日、2022年度に「リレー方式」で開業することで合意した。長崎県の希望通り当初予定の22年度開業が死守された形だが、リレー方式の時短効果はわずか22分。費用対効果を疑問視する声は長崎県民の中にも根強い。フリーゲージトレイン(FGT)を諦めて、長崎県は妥協に走ったのか。合意内容をみると、国が大幅に譲歩したものとなっている。
国交省は昨年12月、長崎ルートに導入を予定していたFGTの量産化が22年度までに間に合わないと明らかにした。これは長崎ルートの開業が遅れるということを意味しており、今年2月に入って遅れの見込みが3年と発表されている。25年までにFGTの量産化を成功させ、開業すると話は変わった。そこでJR九州が提案したのが「リレー方式」。鹿児島ルートにも一時導入されたこの方式は在来線特急と新幹線を乗り継ぐというもので、武雄温泉―長崎間のフル規格路線が完成すればそのまま開業できる。しかしFGTの試験走行は1年以上にわたって止まったまま。その故障原因もシステムの根幹に関わる部分だけに解消は困難を極めている。25年までに量産化が成功する保証はまったくない。
4分の節約に7億円
リレー方式を採用すれば、武雄温泉と大村車両基地に施設を追加する必要が生じ、このための費用は約70億円となっている。ただし、これは武雄温泉駅で新幹線と特急がホームを挟んで向かい合って停車し、乗客が乗り換える対面乗換方式の場合だ。国交省の資料によると、対面乗換方式にかかる時間は約3分。これに対し、いったん改札を通るコンコース乗換は約7分としている。しかしコンコース乗換方式は新幹線ホームを拡張せずに済むため、武雄温泉駅の改修費を約7億円抑えることができる。逆に言えば、4分を節約するのに7億円をかけるということだ。
6者合意では、対面乗換方式に必要な施設は整備新幹線スキームで整備するとなっている。つまり長崎、佐賀両県も費用を負担しなければならない。当初、佐賀県はこの追加負担に難色を示していた。あくまでもFGTにこだわり、リレー方式が採用された場合も追加費用の負担を拒んだのである。
それが一転して佐賀県が追加負担を受け入れた理由は合意文書のこの下りだ。「長崎本線肥前山口~諫早間の上下分離時点において、三者基本合意(平成19年12月)も定められた譲渡価格にかかわらず、JR九州は、佐賀県および長崎県に鉄道施設を無償で譲渡する」。これにより追加負担分は実質的に相殺された。JR九州が佐賀県に大きく譲歩した形だが、この裏には国の働きかけがあったとみるべきだろう。
(つづく)
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