佐賀は全線フル規格の夢を見るか?~九州新幹線長崎ルート6者合意を読む(2)
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三者合意の亡霊
三者基本合意とは何か。実はこれこそ、長崎ルートの整備を進めるための最大の突破口であった。2000年の政府と与党申し合わせにより、並行在来線の経営分離に沿線自治体の同意を取り付けることが整備新幹線建設の条件に加えられた。長崎ルートの並行在来線は肥前山口―諫早間だが、経営分離に反発した鹿島市など沿線自治体がJR長崎本線存続期成会を結成。佐賀県に対し、引き続きJRが並行在来線を経営するように要望を繰り返した。期成会側の姿勢は頑なで、佐賀県が県民の自主的な勉強会で並行在来線の経営分離について説明しただけで、確認書の違反だと猛抗議したほどである。
鹿島市などが危機感を抱いたのは、第三者に譲渡された並行在来線が経営危機に陥いる恐れがあったためだ。実際、同じ九州新幹線の鹿児島ルートでも八代―川内間が第三セクターの肥薩おれんじ鉄道に譲渡されたが、開業直後から経営難が続いている。肥前山口―諫早間には現在、特急「かもめ」が走っているが、JRから経営分離されれば当然その運行はなくなってしまう。要は特急を失いたくないというのが沿線自治体の本音だ。そこで長崎、佐賀両県とJR九州は2007年12月、三者基本合意を結び、上下分離方式によりJR九州が新幹線開業後の20年間は経営を続けると発表した。肥前山口―諫早間の鉄道施設は長崎、佐賀両県が買い取ることになり、その額は14億円。これと維持管理費用を合わせた負担割合は長崎と佐賀で2:1とされており、運行距離が長い佐賀県の側が一方的に有利な内容となっていた。
FGT量産化までの詫び
6者合意ではJRによる肥前山口―諫早間の経営は20年から23年に延長された。さらに新幹線開業から3年間は一定水準の列車運行サービスのレベルを維持するというおまけまでついている。つまりFGTが量産化される25年まで佐賀県を待たせる代わりのお詫びを差し出した格好だ。それは一定水準の内容を見ればだれの目にも明らか。特急列車は博多―肥前鹿島について、上下14本程度、普通列車が現行水準維持となっている。
リレー方式で特急が走るのは佐世保線。諫早駅にはフル規格の新幹線が停車するので、特急をつなぐ必要はない。だから長崎本線の特急運行区間は肥前鹿島までとなった。現在、特急「かもめ」の本数は上下51本。ただし、これは博多―長崎間の数字であり、6者合意も博多―肥前鹿島間は開業時の需要動向を踏まえるとしていることから、人口規模を考えれば妥当な数字とみることができるのだろう。維持管理費用の分担について触れられていないということは、おそらく両県の割合は佐賀1、長崎2のまま維持されている。やはり佐賀県の一人勝ちだ。
(つづく)
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