災害対応、行政サービスとは下から支えるもの
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は熊本県を中心に発生した大規模地震災害について、災害対応などの行政サービスは上から目線ではいけない、市民を支え、奉仕する立場にあるのが公務員だとした4月19日付の記事を紹介する。
熊本県を中心に発生した大規模な地震災害。被災された方は避難生活を余儀なく迫られている。多くの方が犠牲になり、また負傷されている。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方のご回復を心から祈念する。また、早急な復旧により、被災された方々が一刻も早く生活の安定を回復されることを願う。
そのために必要不可欠な要素が行政の活動である。その際に、十分に留意するべきことは、「市民のための行政」であって「行政のための市民」ではないことを明確に認識することだ。
日本は中央集権の国で、行政機構におけるタテの関係が強い。タテの関係とは、上下の関係である。この上下の関係のトップに中央がある。このトップの中央は霞が関であり、そのトップに内閣総理大臣が位置する。
この関係が災害対応、被災地復旧にそのまま適用されてしまう危険が大きい。しかし、本来のあり方は違う。国民主権というのは、主権者である国民を主役とする考え方である。公務員は君臨する存在ではなく、国民に対して奉仕する立場にある存在である。主権者である国民を下から支えるのが公務員である。
上に君臨して、上から国民を支配するのが公務員ではない。
日本国憲法第15条
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
○2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。憲法には国民と公務員の関係が明記されている。公務員は奉仕者であって支配者ではないのである。そして、内閣総理大臣も公務員なのである。この公務員を選定し、罷免する権利を主権者である国民が有している。
災害があり、被災地への行政からの支援があるときに、「上から目線でものを見る」ことを改めるべきである。天災が発生し、被災者を助けることは、行政の役割であり、その基本的な姿は、主権者である国民、住民、市民を、上から支配するのではなく、下から支えるべき存在なのである。
被災地で被災者に対して物資の配給を行うために、大行列ができている。被災された市民は、秩序正しく、冷静に、温厚に、行動されている。しかし、物資の輸送は滞り、必要十分な対応ができていない。
水道、ガス、電気のライフラインが復旧していないために、被災者は自宅に戻ることができず、極めて劣悪な居住環境に置かれている。被災者の置かれている環境は厳しく、高齢者や乳幼児、そして女性の困窮は強まるばかりである。
この状況下で、行政機構にある者は、霞が関、永田町を頂点とする、国民主権に逆行する「上からの支配」の発想を徹底して排除することが必要である。
民主主義、国民主権と、官僚支配、中央集権とは、根本的に相反する部分がある。民主主義の特性のひとつは「多様性」であり「地域主権」なのである。内閣総理大臣の言動を上からの指令であるかのように、祭り上げる報道の姿勢は、被災地支援、災害対策の基本を見誤らせるものである。
主権者は税金を納めて行政サービスを支えている。行政サービスは主権者の資金負担で支えられ、主権者に奉仕をすることが根本的な位置付けなのである。主権者、市民、住民が行政サービスを提供する公務員に横柄に、横暴に振る舞うべきではないが、主権者は行政サービスを適切に受ける権利を有していることを明確に認識し、公務員は市民への奉仕者であるという基本を明確に認識して対応することが求められる。
※続きは4月19日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1414号「安倍政権は早急に補正予算を編成するべきだ」で。
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