【熊本地震最前線レポート】(53)行政の機能不全~取材記者討論(後)
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A 私は熊本市内の実家にいて、16日の本震に見舞われた。揺れと音がものすごく、天井が落ちてきそうな感じがして、死ぬのではないかという恐怖を覚えた。しかし前震を経験した人はもっと怖い思いをしていた。家を飛び出し、近所の人たちと駐車スペースに集まって無事を確かめ合ったが、近くに古い電柱があり、倒れて漏電し火事になったらどうしようかと不安になった。
C 地震では火が最も怖い。ガスが漏れてそこに電気で着火すると一気に燃え広がってしまう。地震用ブレーカーというものもあるが、あまり普及していないようだ。
A 地震発生から1週間が過ぎ、物資が届き始めたという話が聞かれるようになってきた。熊本市は水道さえ復旧すれば何とかやっていけると思う。
C 避難所は何日間か宿泊できる場所で、避難場所は一時的に避難する場所で宿泊はできない。福岡市は避難所や避難場所をすべて把握している。防災計画も作られており、災害発生に備えた準備はなされているといえるだろう。もちろん熊本市にも防災計画はある。だが益城町は熊本県の防災計画に入っており、計画の実施は県が代行しなければならない。避難所となっていた益城町の公民館で2階の天井が落ちていたということもあるので、公民館にはまだ問題が残されているようだ。
C そもそも多くの人が九州で大きな地震は起こらないと思っていた。
A 熊本市には一級河川の白川があり、過去にもたびたび氾濫したことから水害に対する意識は強かった。地震はあまり考えられていなかったと思う。
D 福岡県内にも避難所や避難場所になっている公民館のなかにも危険なものがあるのだろうか。
B 福岡県に問い合わせてみたが、まったく把握していないという回答だった。
A 福岡市の中心部にはビルが多いので、今後大きな地震で倒壊したらと思うと恐ろしい。
C 南阿蘇村で東海大学の学生が住んでいたアパートを取材したが、最初てっきり平屋だと思っていた建物の1階部分が潰れて2階部分が落ちてきていた。こういう壊れ方をパンケーキクラッシュと呼ぶのだが、1階部分が2階部分に突き抜けており、実際に見ると非常に怖い。熊本市内にも1階部分が潰れたマンションなどがあり、少なくとも1階部分は耐震化すべきだ。
A 熊本地震では通信網が生きていたことが不幸中の幸いだったと思う。固定電話では混乱があったものの、携帯電話はつながった。通信インフラが強化されていると感じた。それなのに何故、行政が機能しなかったのかさっぱり分からない。「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」をしなかったのではないか。たとえば17日に翌18日から水道が回復するという情報が伝わってきたが、すぐに撤回された。市の組織間で連絡ができていれば、このような混乱は起こさずに済んだはず。市長がテレビの前で泣いていたが、これでは職員の士気が下がってコントロールできなくなる。行政トップとして恥ずかしい姿だった。
B 今後の報道はどうすべきか。
C 1カ月くらいにもう一度現地の様子を見に行かなければならないのではないか。長期的に取材を続けることが必要だと思う。
A 地震が予測できないのであれば、素直に「わからない」というべき。一連の地震は国(文部科学省)が発生確率0%と言っていた場所でも起きている。その予測に対する信頼は熊本地震の発表ですっかり失われてしまった。地震の活動域は広がっているというのに、川内原発の稼働を続けているのは問題だ。世界から見れば、日本はどんな国なのかと思われても仕方がない。日本全国で危機感を持たなければならない事態だと考える。
B まずは地元がどうなっているのか。自分の足元を見直すことが大切だ。行政に頼るばかりではなく、われわれ市民1人ひとりが防災意識を高めることが重要だろう。
D 自分がいる北九州市が地震の被害に遭ったらどうなるだろうかと不安に思う。北九州市には高速道路の立体交差が多い。阪神・淡路大震災でも高速道路が倒れた事例があり、北九州市でもそうなったらと恐ろしい。もし、北九州市が被害に遭えば本州との陸路(関門橋)を失うことになるので、九州全体にとっても大きなダメージになるのではないだろうか。
C 現地で情報を収集する上で最も役に立ったのは、実はラジオだった。スマートフォンでニュースサイトやSNSを見ていたらバッテリーを消費してしまい、肝心の通話機能を果たせなくなってしまう。ラジオは災害時の情報ツールとして非常に重要であるとあらためて認識した。
A たしかな情報を得る手段としてニュースサイトの重要性がますます大きくなっていることは間違いない。わが社は福岡市に本社を置く会社だが、今後は各地域に最低でも一つずつローカルのニュースサイトが必要になってくるのではないだろうか。
(了)
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