【憲法記念日に問う】表現の自由が禁止されていいのか!
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憲法が施行されて69年を迎える今年の憲法記念日は、憲法改正の現実的な岐路に立っている。
安倍晋三首相は、憲法改正の決意を繰り返し表明し、夏の参院選挙で、与党以外の政党や個人(無所属議員)と協力して憲法改正の発議に必要な3分の2の議席をめざす考えだ。
憲法の何がもっとも危機にさらされているのか。自民党憲法改正草案には、緊急事態条項があり、その危険性をこれまでも警告してきた(9条よりも恐ろしい「緊急事態宣言」条項!)。緊急事態宣言を発することによって国民の自由と人権の制限が可能となるからだ。歴代政権は1960年代から国家緊急権について欧米諸国の研究を重ねており、緊急事態に対しては、すでに国民保護法が施行され、「武力攻撃事態等」に限定されている対象事態を、「○○事態」と置き換えるだけで基本的な仕組みはできている。今、憲法の危機でもっとも重大なのは、表現の自由である。
自民党の憲法改正草案(21条1項、2項)では、表現の自由は、次のようになる。
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。1項は変わらないが、2項で「公益及び公の秩序を害することを目的」とした活動や結社を「認められない」として禁止する。
憲法学者の石村善治・福岡大名誉教授は、「言論の自由を、民主主義を理由として制限することはあってはならない。民主主義は、国家の意思を形成するためのものであって、その前提となる個人の意見を保障するために、言論の自由がある。自民党改憲案は、公益および公の秩序というあいまいな規定で、言論の自由の制限に憲法上の歯止めがなくなる。戦前戦中の治安維持法と同じ効果を持っている」と指摘する。
石村氏は「朝鮮戦争の前後と、今の状況が似てきた」と語る。当時、研究の出発点として、ドイツ・ワイマール憲法と言論の自由を研究テーマに選んだ。「人権の中で、言論の自由が最大の問題だと考え、研究の中心になった」と振り返り、「もっとも民主的と言われたワイマール憲法のもと、言論の制限が繰り返され、ヒトラー政権で公共の秩序と安全の維持のために、緊急命令(大統領令)が出された時には国民の警戒心をなくす地ならしがされていた」と警告する。その後、ドイツ国民は、「我に4年の時間を与えよ」の演説に、「ならば与えよう」と乗り、ナチス・ヒトラーが政権を掌握したという。今の日本はどうか。高市早苗総務相が放送法を利用して放送局に電波停止を命じることもあると公言するなど、表現の自由に対する政治権力による介入が繰り返されている。国民の警戒心が薄れ、あるいはあきらめが蔓延したところに、憲法改正が待ち構えていると言っていい。
福岡市で憲法記念日の前後に公演を続けている「憲法劇団ひまわり一座」は、今年の憲法劇「時をつくる人々」で、表現の自由が禁止された近未来社会を描いた。ヒトラーの手口をまねた「アベシタ首相」のもとで憲法が改正され、緊急事態条項が創設され、戦争に反対する「ママの会」の集会が禁止されるシーンがあった。自衛隊員が海外の戦場で軍事行動を行い、日本各地が報復テロに見舞われているが、情報統制され、『民主主義ってなんだ』という本を読むだけで公安警察にマークされる。そのような近未来社会にしないために、主権者として選挙権を行使して、「時をつくろう」と呼びかけた。過去は変えられないが、未来は変えられる。
現実の日本は、安倍政権のもとでの、集団的自衛権行使を可能とする閣議決定と、安保関連法の成立に対し、多くの憲法学者や法律家、国民が近代的立憲主義の否定ととらえ、主権者として立憲主義の回復を求めて言動に立ちあがった。夏の参院選挙22選挙区で野党共闘が実現し、衆院北海道5区の補選では、民進、共産、生活の3党の幹部が国政選挙の街宣でそろい踏みした。安保法に反対した学生らでつくるSEALDsやママの会、学者の会などの行動抜きには考えられない現象だ。
今ほど、近代市民社会の担い手である市民の存在が試されている時代はない。
【山本 弘之】
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・表現の自由抹殺で、国民主権は停止する(前)関連記事
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