2024年11月26日( 火 )

中国経済新聞に学ぶ~謎の「権威筋」人民日報に再登場

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中国経済の現状と李克強の国務院政策に不満を暴露

 5月8日、中国共産党機関紙の「人民日報」は一面で文章を掲載し、署名しない「権威筋」として、中国経済と今後政策に意見を述べて、中国市場の騒ぎを誘発した。
 この「権威筋」が最初に人民日報に登場したのは、2015年5月。2回目は2016年1月。今回は3回目。

 この文章は強烈な個人色彩があって、明らかに官僚文と別物である。文章は中国経済の現状と李克強の国務院政策に不満を暴露し、自分の経済政策を発表した。中国社会はこの「権威筋」の身元と官階を推測している。「習近平国家主席の首席経済知恵袋の劉鶴ではないか」とうわさが広がっている。劉鶴は中国共産党中央委員会財政経済領導小組弁公室主任で、国家発展改革委員会副主任でもある。

 この「権威筋」は、中国経済に対して次の8つの判断を示した。

一、 経済の全体的な動向は事前予想と合致したもので、いくつかの注目点では予想を上回る好調な動きを示している。

 だが経済の流れにおける固有の問題点は依然として緩和できておらず、予想を超えた新たな問題も出現している。「滑り出しからの大成功」や「小春日和」などとして現在の状況を単純に描くことはできない。
 中国経済は全体として次のような特徴を示している。

(1) GDP成長率は6.7%に達し、雇用情勢は全体として安定し、住民の収入は穏やかな成長を保っている。
(2) 経済金融リスクは全体として制御可能な状況にあり、社会は全体として安定している。
(3) 一部の工業品価格はいくらか再上昇し、工業企業の効率も低下から上昇に転じている。
(4) 固定資産投資が加速し、プロジェクトの機工が大幅に増加している。
(5) 不動産市場は供給・販売ともに旺盛で、在庫整理が明らかに加速している。
注目すべき点としては▽サービス業の比重が引き続き高まっている▽新たなモデルや新たな状態が次々と生まれている▽付加価値が高く技術のウェイトが高い一部の製品が急速に成長している▽住民消費のアップグレードが進んでいる、▽メーデー(5月1日)の小型連休で国内旅行が大人気となった、▽「新常態」(ニューノーマル)に積極的に適応し、需要分析を重視し、革新・品質・効果を追求した長江デルタや珠江デルタなどの地域では、経済成長の安定性が強まっている、▽各地域・各当局は、供給側構造改革を展開し、大きな成果を上げている、などが挙げられる。
 だが、経済の流れにおける固有の問題点はまだ解決されていない。

(1) 一部の地域では財政の収支均衡の圧力が高い。
(2) 民間企業の投資が大幅に低下している。
(3) 不動産バブルや過剰生産能力、不良債権、地方債務、株式市場、為替市場、債券市場、違法資金調達などリスクを抱えた分野が増えている。
(4) 市場化の程度が低く、産業がローテクで、構造の単一的な一部の地域では、経済の下方圧力が増大し、雇用問題が際立ち、社会問題が激化している。

二、 総合的に判断して、中国経済は今後、「U時型」ではなく、まして「V字型」でもなく、「L字型」の発展をたどると見られる。この「L字型」は1つの段階をなすもので1年や2年で終わるものではない。

 今後数年、総需要の低迷と生産能力の過剰との併存という局面を根本的に転換するのは難しい。一度回復すれば上昇傾向が続き、何年にもわたる高成長を実現したようなこれまでのような経済成長を期待することはできない。

三、 「一歩の退却」は「二歩の前進」のためである。中国経済は潜在能力が十分で、柔軟性も高く、融通の余地も大きい。刺激をしなくても、速度がそこまで落ちることはない。

四、 経済指標の一部が再上昇しても手放しで喜ぶことはできない。経済指標の一部が低下しても慌てふためくことはない。

五、 供給側の構造改革の推進は、現在と今後しばらくの中国の経済政策の主軸である。長期的に見れば、我々が「中所得国の罠」を乗り越えるための「生命線」であり、負けることの許されない戦争でもある。

 (3) 以上の新理念や総基調、大構想を実現するため、マクロ政策には次の3つが要求される。第一に、総需要を適度に拡大し、積極的な財政政策と穏健な通貨政策の実施を堅持し、その重点とリズム、力の入れ具合を適切に制御する。第二に、供給側構造改革の推進を主軸として堅持し、需給構造のズレと生産要素配置のねじれの矯正に配慮し、「生産能力過剰解消、在庫整理、リバレッジ解消、コスト削減、弱点補強」の5大重点任務を全面的に実施する。第三に、良好な発展の予期の誘導を重視し、経済発展に対する各方面の自信を高める。
(2)取り組みにおいては「二つの確保」を実現する。
第一に、中央の規定の政策が元の内容や形式を変えないことを確保する。
第二に、中央の政策が現実にしっかりと根を張ることを確保する。

六、 短期的には、経済成長の安定と構造の調整の間には矛盾が存在することとなる。「安定」と「調整」との関係を処理するカギは、「度合い」をはかることにある。正確な方法論を把握し、改革深化を主な手がかりとする。
 
 生産能力過剰の解消は、一部地方のGDPや財政収入に影響し得る。リバレッジの解消は、一部のリスクを顕性化させ得る。だがこの解消を行わなければ、長期的な安定が望めないだけでなく、短期的な効果もますます悪化し、「ゾンビ企業」がますます増え、債務がますます積み重なり、財政・金融リスクを激化することになる。

七、 過剰生産能力に支えられた短期的な経済成長は持続不可能なだけでなく、耐えなければならない痛みは、過剰生産能力を解消した場合よりも大きく、痛みの続く時間も長くなる。

 生産能力の過剰な一部の分野の企業は、損失が拡大し、賃金の未払いも増加している。銀行も痛みに耐え、従業員も痛みに耐え、しかもその痛みはますます深刻化している。これにいかに対処するか。長い痛みよりも短い痛みのほうがまだ良い。これらの企業の資産を整理すれば、土地や融資などの希少な資源を解き放つことになるだけでなく、これらの企業の従業員を社会保障の対象とし、訓練を受けさせ、新たな職に就かせ、再び希望を見せることもできる。

八、 世間ではインフレだという人が増えているが、デフレだという人も少なくなく、それぞれの理由があり、慌てて結論を出すことは出来ない。

 一方では、生産能力の過剰は依然として深刻で、工業品価格の全体的な下落という傾向はすぐには根本的に転換できず、物価全般の大幅な上昇が起こるという主張は実体的根拠を欠いている。もう一方では、市場の流動性が十分で、住民の消費能力も高い中、深刻なデフレが起こる可能性も低い。

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