サムスン電子の未来戦略(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
サムスン電子は時代の急激な変化に対応しておらず、このままでは危機に陥るという警告がいたるところで発せられた。サムスン電子は、これまではファーストフォローアであったが、最近その機能も衰えてきているし、市場開拓者としての役割も自覚できていないという批判を受けていた。それでは、サムスン電子を取り巻く環境に、どのような変化が起きているだろうか。
サムスンは生産工程を改良したり、生産技術を改善することによって成長してきたハードウェア中心の企業である。しかし、商品のコモディティ化、中国などの台頭で競争の激化、電子機器に対する需要の減少など、生産力改善だけで世界をリードするには限界に達しつつあった。スマホ、半導体、ディスプレイなどの分野でサムスン電子は中国企業の追い上げに見舞われている反面、フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルなどの勢いは凄まじいものになっている。躍進を続けている上記の企業の共通点は、フラットフォーム事業者であることだ。
製品で競争すると、浮き沈みが激しく、価格競争に陥りやすいが、フラットフォームの構築に成功すると、勝組みになれるということだ。サムスン電子はこのような時代の変化に対応するため、モノのインターネット(Iot)分野でフラットフォームを構築しようとしている。このような目的で、サムスン電子は2014年8月に2億ドルを投資してスマートシングス社を買収した。スマートシングスは12年に設立された会社で、通常の家電製品をインターネットに接続し、アンドロイド端末やアイフォンから操作できるようにするキットを開発している。サムスン電子はモノのインターネット分野でフラットフォームを構築するため、多大な努力をしている。15年にはこの分野の開発者の支援に1億ドルを使った。また、モノのインターネットで主導権を握るため、OICという団体を組織するなど、その普及に向けてもサムスン電子は精力的に動いている。
サムスン電子は、TV分野で10年間世界トップの座にいた自社の強みを活かし、スマートテレビを家電製品のハブにしようとしている。17年には、まずテレビを、それから20年までに、すべての家電製品をインターネットにつなぐという計画を持っている。サムスン電子はこのフラットフォームを駆動するOSとして、タイゼン(Tizen)を念頭に入れ、モノのインターネットで次世代の主導権を握るための布石を打っている。サムスン電子の未来戦略の中核に、モノのインターネットがあって、これが成功するかどうかは、サムスン電子の命運を左右するほど重要である。スマホにアプリをインストールすれば、スマホとテレビがつながり、居ながらにして何でもできるというコンセプトである。
(つづく)
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