元「鉄人」衣笠氏が斬る!~初めての経験(前)
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連日の梅雨空を連想させる空模様が、「梅雨が近づいてきましたよ」と教えてくれる気がするが、昔と違い最近は気象庁から「梅雨に入りました」という声が大きく聞こえてこなくなった。6月に入ると沖縄が梅雨に入り、本州も梅雨に入る時期を迎えて、紫陽花の花が美しさを増してくる。厚い雲が空一面に広がり、「梅雨だな~」と思う日が、もう少しで関東地方にも訪れるのだろう。
最近は、どうも若手が台頭してきていることが気になり、楽しみなのと同時に、「このまま順調に成長してくれよ!」という心配がどうも強くなり、気になるところだ。
今年のプロ野球の大きな特徴になると思うが、「若返り」ということについて考えてみた。セ・リーグの若手選手たちは、パ・リーグの野球にどう対処するか。また、パ・リーグの若手選手たちは、セ・リーグの野球にどう向き合うか。そして若い選手たちがどんな反応を見せるのか――。セ・パの若い選手たちに注目したいものである。
今年はいつもの年に比べて、阪神を筆頭に多くの球団で若い選手が頑張る姿が目立っているように思う。そんな選手たちが、これからのシーズンで遭遇する「梅雨対策」「夏対策」というものをどのようにクリアしていくか、見ものだろう。
私自身、1968年に初めてフルシーズンを経験させてもらったときには、そんなことを考える暇もなく過ぎていったように思うが、次の年あたりには5月が終わり6月に入ってから、急に体が重くなったように感じたり、食欲が今までと違う反応をしたりした。何より「寝る」ということにそんなに苦労したことのない人間が、「寝苦しい」と感じることが増え、睡眠不足でイライラすることが多くなるなど、今までにない経験をしたことを思い出す。今の時代はドーム球場が増えて、セ・リーグには東京ドーム、ナゴヤドーム、と2つのドーム球場があり、パ・リーグには札幌ドーム、西武ドーム(ここは温度調整がない)、京セラドーム、さらに福岡にもドームがあり、4つのドーム球場がある。ドームの室内では温度調整ができ、身体には楽なようになったと思うが、その分、雨による中止がなくなった。
一昔前は、当然ながらドーム球場はなく、雨が降ると中止になり、この中止のときの時間の使い方を、よく先輩が「大切に使え」と教えてくれたものだった。今は、中止になることも少なく、なったとしてもそれぞれの球団には立派な室内練習場があり、練習に支障をきたすようなことはなくなってきた。だが、昔はそんなものもなく、球場の屋内練習場を使うか、対戦相手の合宿場の練習場に行くか、そんなことしかできない時期だった。そうしたときに、夏場に対する対策としていかに走り込むか――。「キャンプでつくった身体は5月までで終わるのだから、この時期を利用して夏場対策に走り込め」と、よく言われたのを思い出す。
そう言えば、巨人戦が中止になったときに、グランドのなかをスーパースターの王選手が黙々と走っている姿を見たことを思い出す。調子が整わないときには、もう1人のスーパースターの長嶋選手も、よくグランドを走っていた。長嶋選手は練習をしている姿を人に見せるのがあまり好きでなく、人が見ていないところで黙々とやるという感じだったことを思い出すのが、この時期だ。
バッターはいかに夏場に力を発揮するか。ここに打者としての値打ちがあるのだと、長嶋さんがよく言っておられたことを思い出す。今のように6カ所ものドームがある時代ならば、どんな言葉を発言されるのか、聞いてみたい気がする。なぜならドームのなかは、日中28度から30度くらいで調整してあり、夏の照りつけるような日差しを浴びて練習することがない、そのまま毎日同じ温度のなかで試合ができる。
そして最近の投手は、開幕から多くの投手が1週間に1度の登板が多く、登板数に無理がないから、疲れることが少ない。とすれば、当然、梅雨から夏場にかけて疲れが出ることも少ないということが考えられるから、打者は昔のように「投手が疲れる夏場が勝負」というわけにいかなくなってきた。(つづく)
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