仮想通貨は通貨革命を引き起こすか?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
では、なぜビットコインは生まれるようになったのか――。
それは、2008年の世界金融危機の発生が1つの要因であると言われている。大きな金融機関の破綻を経験したことによって、一部の人々は金融機関に対して懐疑的になったわけだ。
今の通貨には発行機関があって、いろいろと制限を受けているが、インターネットが発達することによって、発行機関に縛られず、国という領土にも縛られることなく、「国を超えて自由に取引できる通貨があったらいいな」という願望から生まれたのが、ビットコインである。
既存の通貨は、国際送金する際に、両国の金融機関を経由するため、どうしても手数料などが高くなる。しかし、ビットコインで送金をすると、そのような金融機関を経由せず、取引当事者同士の取引なので、コストが安く、瞬時に、それから簡便に送金ができる。
たとえば1万円を海外送金しようとする場合、現在は2,500円くらいの手数料がかかるが、ビットコインで送ると6円くらいで済むので、これを利用する人が着実に増えている。しかし、これは裏返せば、金融機関のビジネスモデルの崩壊を意味する。そのため最近では、既存の金融機関も、その対応に腐心している。ゴールドマン・サックス、JPモルガンなどの大手金融機関も、仮想通貨の研究に懸命である。
ビットコインの革命的な点は、脱中央化と分散化である。今までの銀行システムは、集中化で成り立っていた。大きなデータベースが中央にあって、そのデータを元に取引していた。ところが、データが1カ所にあるということは、そこがハッキングされると大変なことになるため、それを守るために莫大な予算を使ってきた。しかし、ビットコインは発行主体のない通貨であるため、誰の規制も受けない。すなわち、自由度の高い通貨である。
もう1つ、既存のシステムと違い、「ブロックチェーン」と言って、取引内容がそれぞれのコンピュータに暗号で送られて記録され、データの整合性によって取引を成立させている。データ管理が分散化されることによって、セキュリティーは堅牢になり、コストも安くなる。
既存の金融機関は、ビットコインの脱中央化は容認できなくても、ビットコインが採用しているブロックチェーンは取り入れ、システムの分散化は図ろうとしている。だが一方でビットコインは、このような利便性がある反面、匿名性により、麻薬の不法取引の決済手段になったり、マネーロンダリングに悪用されるなどの問題も抱えている。
このようにビットコインは今のところ、可能性と課題を同時に抱えている。今は一部の限定した用途だけで使われているし、投機が先行しているような感は否めないが、韓国でもいくつかの取引所が開設されているし、取引量も大幅に増加している。
仮想通貨が今後、本格的に普及するかどうかは、もう少し見守る必要がある。(了)
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