2024年12月23日( 月 )

ロッテ捜索の真相(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 それでは、なぜロッテだけでなく韓国企業では、兄弟同士の経営権争い、それから裏金などの問題が頻繁に発生するのだろうか。韓国経済が短期間に急速的に成長したことによって、成長にばかりに目が行って、後継者をどうするかなどをあまり考えて来なかったことへの対価であろう。サムスングループも2代目に事業継承するときに、似たような経験をしているし、現代グループも同じような経験をすでにしている。

 重光武雄氏は高齢で、現在では健康がかなり悪化して、認知能力もかなり落ちているように見受けられる。この前認知能力の検査を受けるために病院に入院したが、4日目に無断退院している。このような事態になる前に、兄弟の間で明確に分けていたら、このような兄弟同士で争うような醜い事態は避けられたのに、残念である。それから、韓国財閥企業の弊害として指摘されている問題に循環出資という制度がある。韓国政府もその弊害を認識して、最近は持ち株会社の設立を薦めるか、循環出資の抑制を誘導している。

kabuka 循環出資というのは、どのようなことかというと、A社はB社に出資し、B社はまたC社に出資をし、C社はまたA社に出資をするようなことを循環出資という。A社がB社、C社にそれぞれ出資しようとすると、もっと多くの資金が必要になるが、1社だけに出資しただけで、全体を支配できる仕組みを作れるのが循環出資である。ロッテグループは韓国の財閥の中でも、循環出資が一番多い。韓国の循環出資の71.3%をロッテグループが占めているという。この循環出資制度で、創業家一族は、ロッテグループのわずかな持ち株を持っているだけなのに、グループを支配している。循環出資のような複雑極まりない仕組みだけでなく、非上場ももう一つ企業の透明性を妨げる要因である。

 ロッテグループは90社の内、9社しか上場していなく、残りは非上場会社であるため、経営への監視機能も旨く作動していない。それは内部での裏金の問題をはじめ、いろいろな問題を引き起こす要因になる。韓国の新聞報道によると、辛元総括会長と辛東彬会長は系列会社から配当金として300億ウォンを受け取ったことが報じられている。さらに、世界的にパナマ文書の漏洩で明らかになったように、ロッテグループもケイマン諸島などのタックスヘイブンにペーパカンパニーを設立して、オフショアを活用した税金逃れをした疑いも持たれている。ロッテは李明博(イ・ミョンバク)前大統領時代には、大統領と同じ大学を卒業した友人を持ち株会社であるロッテホテルの社長に据えて、政権からいろいろな特典を与えられたと言われている。

 金泳三(キン・ヨンサン)大統領時代から推進されてきたロッテワールドタワーの認可は、その間ずっと認可を得ることが出来なかったが、なぜ前の政権で認可しなかった案件が李明博前大統領時代になって、ようやく許可になったことについて、何か特恵があるのではないかと呟かれている。ロッテグループのイメージがお家騒動で悪くなっている中で、韓国で稼いだお金がもしかしたら日本に流れていないかという疑念、韓国の財閥に対する反感、それから、前政権の中枢の人と何か癒着がなかったかなど、ロッテに対する国民の目はますます厳しくなっている。その結果として今回の捜索は実施されただろう。今回のメスは辛東彬会長に狙いに定めていることは間違いないが、場合によっては、波紋は政治家まで広がる可能性があることも噂されている。財閥に対する風当たりが強くなっているので、辛会長は今回逮捕になる可能性も十分ある。ロッテの業績は韓国経済にも影響を及ぼすような存在になっているので、捜索も慎重を要するが、これをきっかけに韓国経済も一段レベルアップすることを期待してやまない。

(了)

 
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