動く水墨画の豹、福岡アジア美術館で公開中
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街全体がキャンパスに、アートで福岡を活性化
芸術の新しい可能性を感じさせる作品が福岡アジア美術館で公開中。6月25日、全国の先鋭アーティストが出展する美術展「Heart Art in FUKUOKA2016~第2回福岡にアートが集う日~」(主催:(一社)Heart Art Communication)で、デジタルアート「旅に出るものたち―Leopard―」を出展する日本画家・絹谷香菜子氏と(株)Zero-Ten(本社:福岡市博多区)の榎本二郎代表によるトークセッションが行われた。
絹谷氏は1985年東京生まれ。多様な動物をモチーフにした花鳥画で注目を集め、関東を中心に展覧会を開催してきた。その絹谷氏の九州・福岡では初となる出展作品は、絹谷氏が描いた水墨画の豹がZero-Tenのデジタル映像技術によって歩き出すというもの。繊細に描かれた迫力ある豹が、四季のなかを歩む姿は、まるで生きているかのよう。絹谷氏のもう1つの出展作品である、二曲半双の本金屏風に水墨と顔料を用いて描いた力作「金色の月夜に舞う麒麟」とともに、幻想的な世界観で来観者に深い感銘を与えていた。
トークセッションでは、作品が完成するまでの過程が絹谷氏から語られた。「墨は一発勝負」という絹谷氏は、作品を描く前の練習を200回も重ねることがあるとのこと。その精魂が込められた作品に、デジタル映像技術が命を吹き込んだ。榎本氏は、「これまでのアートは室内でしたが、プロジェクションマッピングなら街全体をキャンパスにすることができます」と、技術の可能性について語る。
Zero-Tenは、Web・グラフィック制作、CM、プロジェクションマッピングから舞台演出、イベントプロデュースまでを手がけるクリエイティブ集団だ。昨年は、世界文化遺産の構成資産になった長崎市端島のデジタル資料館「軍艦島デジタルミュージアム」(長崎市)をプロデュース。すでに、DRUM TAOの2016年全国ツアー、今年8月の牧阿佐美バレヱ団60周年記念公演のステージ演出を担当するなど、多方面からのニーズは高まっている。
「作家一人が盛り上がるのではなく、街全体にアートが広がることでマーケットが活性化することで、新しい作家が生まれるという好循環を作りたい」と意欲を見せる榎本氏。一方、昨年、福岡に移住したという絹谷氏は、「(福岡市は)地球のエネルギーをすごく感じるところ。アーティストにも良い影響を与えていると思います」と語る。このコラボによるデジタルアート作品による地域経済の活性化に期待したい。
なお、「Heart Art in FUKUOKA2016」は6月28日まで開催している。観覧時間は午前10時から午後8時まで(最終日は午後5時まで)。入場は無料。
【山下 康太】
旅に出るものたち―Leopard―
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