2024年12月23日( 月 )

杭打業者税金ピンハネの実態~福岡市発注工事(2)大手差し置きすべて一次下請けに

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 福岡市発注の公共工事において、納税者をあざ笑うような杭工事業者の受注実態が発覚した。問題の工事業者は福岡市西区に本社を置く末広産業(株)(佐藤九一郎代表)。従業員わずか5~6名、工事用の機械も持たない同社が一次下請に入り、工事代金の一部を事実上ピンハネしている状況だ。データ・マックスは、同社が施工に関与した公共工事の関連文書を福岡市に情報公開請求。入手した資料から、過去3年間の市発注工事において、同社が施工に関わった26件すべてが一次下請であったことが判明した。施工体系図や下見積書からそのありえない実態を報告する。

人もいない、重機も持たない

末広産業(株)<

末広産業(株)

 売上高19億2,000万円、経常利益7,400万円、最終利益4,700万円。これが末広産業の2015年3月期の業績である。しかし、これだけの業績を誇る会社の社員がわずか5~6名。杭打ち工事が専門の同社だが、本社およびその周辺には重機など工事に関わる機材は見当たらない。人もいない、重機も持たない同社が、どうやったらこれだけの売上高を積み上げることができるのか?

 同社の実態を知るべく、施工状況を調査した。過去3年間の工事経歴書には受注先として大手・地場ゼネコンやJV(建設共同体)、そして大手杭メーカーが並んでいる。施工場所は福岡県内が最も多いが、佐賀、長崎、大分、熊本でも実績がある。公共工事での実績も豊富だ。また、すべて下請工事となっているが、下請工事には二次、三次も含まれることから、さらに調査を進めた。

福岡市発注工事すべて一次下請

 まず同社が本拠を置く福岡市における公共工事について、同社の最近の施工履歴を確認した。2013年度から2015年度における福岡市発注の公共工事(契約金額1,000万円以上)で、同社が施工に関わった工事の施工体系図を情報公開請求で入手。判明した工事件数は、この3年間で合計26件だった。

 驚くべきは、そのすべてに大手杭打ち業者を差し置き、一次下請で入っていること。末広産業の下に杭打ち大手の「ジャパンパイル」「大洋基礎」「旭化成建材」といった企業が入っているのだ。通常、建設業の下請構造は逆ピラミッド。大手が上に立ち、二次、三次となるに従い、会社規模が小さくなる。しかし、人も重機も持たない同社が、一次下請に入り、大手杭メーカーが二次に入る異様な構図だ。

施工体系図より0715_sekouzu_s

市民の血税が無駄に

 公共工事の原資は税金だ。元請ゼネコンと末広産業との契約は「民―民」の関係であっても税金のピンハネは許されない。一次下請の同社を外しても、施工が十分に可能だとすれば、同社が得た工事費分は削減できるはずだ。わかっていて、不要な下請を容認することは、税金の無駄遣いを助長することに他ならない。

 ここで疑問なのが、そもそも同社が一次下請に入る必要性である。二次下請の企業を見てみると、杭打ち大手がずらりと並んでいる。これら大手が一次下請に入れば、施工に関して何の支障もあるまい。末広産業がそれほど特殊な工法、独自の工法を持っていれば、話は別だが、同社はそもそも重機も持たない。そんな同社を一次下請に入れる必要はない。

 福岡市発注工事で受注を繰り返す同社が選ばれる理由は何なのか。取材を進める過程で、福岡市と同社の癒着を疑わせる驚くべき証言が飛び出した。

(つづく)
【東城 洋平】

下見積書よりmitumori_s

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