意外に早かった、長崎の教会群再推薦決定
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意外に早かった――。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界文化遺産に再推薦されることが決まったことを、そう感じた人も多かったのではないか。今年2月に政府推薦が取り下げられて半年足らず。確かに短期間だったが、教会群が国の世界文化遺産推薦リスト入りしたのは2007年。長崎県が10年近い時間を掛けて準備を進めてきた積み重ねがあったからこそ、即座の対応が可能だったのだろう。そうでなければ、3月までに新たな推薦書案を作り直すことはできなかったはずだ。
教会群の価値は明確だ。禁教と弾圧、そこからの復活。象徴的ともいえるのが構成資産の一つ、大浦天主堂である。日本で最初に殉教した26聖人に捧げられるために作られた教会であり、1865年の信徒発見は世界の宗教史上でも特筆すべき事実とされている。長崎県は当初、県内だけの構成資産で世界文化遺産登録を目指す考えだったが、文化庁からの指導により熊本県天草にある集落も組み入れた。カトリック長崎大司教区も支援し、盤石の態勢を築いたはずだったが、国際記念物遺跡会議(イコモス)から「価値の説明が不十分」と指摘されて躓いた。今年7月に世界文化遺産登録が決まった国立西洋美術館もかつてイコモスから教会群と同じ理由で登録延期を勧告されたことがあり、教会群の関係者は複雑な思いを抱いただろう。
教会群が世界文化遺産に登録された場合の経済効果を年間200億円以上と見込む専門家もいる。観光立県を掲げる長崎県にとっては、国内外の観光客だけでなく、キリスト教信者の巡礼も期待できる魅力的なコンテンツだ。一方、見学者のマナー違反という深刻な問題も抱えている。構成資産の教会はほとんどが現在も信者の祈りの場であり、彼らによって維持されている。世界遺産推薦リスト入りした頃から教会を見学者が訪れるようになり、煙草のポイ捨てや信者の私物を勝手に触るなどのマナー違反がたびたび起こるようになった。現在、長崎県は教会群の公式HPで見学の事前予約を義務付けている。単なるマナー啓発では違反を止めさせることができないと判断したのだろう。信者の怒りを買って見学を拒否されれば、観光そのものが成り立たない。県民のなかにも「祈りの場をそっとしてほしい」と世界遺産登録に反対する声もある。地元の理解を得る努力は今後も必要だ。
教会群は再びイコモスの審査を受け、2018年7月の登録を目指すことになる。1年以上の準備期間があるとはいえ、国の文化審議会でも新しい推薦書案は改善が必要と指摘されており、解決すべき課題が山積みとなっている。再推薦が決まったことは喜ばしいが、イコモスからまた登録延期勧告を受けないようにしっかりとした準備を進めてもらいたい
【平古場 豪】
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