2024年11月22日( 金 )

末広産業に建設業法違反の疑い 配置技術者不在を確認

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杭打業者税金ピンハネの実態(6)

 福岡市発注の公共工事において、納税者をあざ笑うような杭工事業者の受注実態が発覚した。問題の工事業者は福岡市西区に本社を置く末広産業(株)(佐藤九一郎代表)。従業員わずか5~6名、工事用の機械も持たない同社が一次下請に入り、工事代金の一部を事実上ピンハネしている状況だ。データ・マックスは、同社が施工に関与した公共工事の関連文書を福岡市に情報公開請求。入手した資料から、過去3年間の市発注工事において、同社が施工に関わった26件すべてが一次下請であったことが判明した。施工体系図や下見積書からそのありえない実態を報告する。

 すべての現場に技術者を配置できるのか。――これまでの調査で判明した過去の97件(民間工事も含む)の施工履歴から、工期と配置技術者を抜き出した。配置技術者5名のうち、最多となるのがH氏の36件。このH氏の配置された場所、工期を表にまとめたのが以下である。

配置技術者H氏の担当場所、期間2_s※クリックで拡大

 見ての通り、複数個所での重複がみられる。施工場所が近ければ、兼任が認められる場合があるが、施工場所は熊本、佐賀、長崎、大分にも及んでおり、H氏が分身しない限りは同時期に、同一場所に存在することは不可能である。15年3月期の施工件数1,378件から同じように施工期間と配置技術者を抽出すれば、重複箇所が多数現れるはずであり、非現実的な件数、不適切な管理体制といって間違いない。

施工現場では混乱

 税金ピンハネに加え、上掲の表から同社には建設業法違反の疑いがある。現場に人を出さなければ、下請への「丸投げ」行為にあたる。ここで、建設工事における一括下請負(丸投げ)の禁止について国交省の通達を引用する。

sekougenba 『一括下請負は、発注者が建設工事の請負契約を締結するに際して建設業者に寄せた信頼を裏切ることとなることから、禁止されている。一括下請負を容認すると、中間搾取、工事の質の低下、労働条件の悪化、実際の工事施工の責任の不明確化等が発生するとともに、施工能力のない商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招くことにもなりかねないからだ。』

 あるゼネコンからは次のような証言を得た。
 「杭の種類、工法はジャパンパイル仕様だった。ジャパンパイルに見積もりを依頼すると、末広産業を通してくれとの指定があった。代理店商社の必要性がないことから、何度か突っぱねたが、相手は引こうとしない。工期も迫っていることから、やむなく末広産業に下請発注した。」ここまでは、他のゼネコンの意見と同様だ。しかし、同ゼネコンは周囲から末広産業の噂を聞きつけていた。「一次下請なのに、現場に人を出さない」ということを、だ。そこで同ゼネコンは「発注するが、人(配置技術者)は必ず出してくれ」と再三通知した。当然である。下請とはいえ、監理責任がある。建設業法上、下請業者も現場に技術者を常駐させなければならない。これを怠ると、その下請はもちろん、元請であるゼネコンにもペナルティが及ぶからだ。

 それでも末広産業が登録した配置技術者はまともに現場にでてこなかった。これに同ゼネコンは激怒。「これ以上やると、監督官庁に報告する」と通達したという話だ。しかし、ともすれば自社が元請の責任として、ペナルティを受ける可能性もある。これを逆手にとってか、末広産業は素知らぬ顔でその後も現場に人を出さない。これが常態化しているというのだ。

顔を出すのは最初だけ

 証言だけでは、確証に足りない。関係者から、末広産業が一次下請に入り、進行中の杭工事の情報を聞きつけ、施工中の現場に足を踏み入れた。場所は福岡市中央区。ある施設の増築工事だ。取材当日は基礎工事の最終日だった。重機を操る現場員は、三次下請業者。末広産業の配置技術者T氏について、尋ねた。回答はこうだ。「今日はいない。工期は12日間ほどだが、担当者が顔を出したのは初めだけ。」やはりまともに人を出してはいない。少なくとも、この杭工事最終日、末広産業の技術者の姿はなかった。施工上、また安全管理においても、重大な過失である。

 「問題はないのか。そしてこのことを把握しているのか」――元請ゼネコンに「配置技術者不在」を報告した。「現場所長が不在のため、後日折り返す」と言ったきり、連絡は返ってこなかった。自社の監理責任を認めたくないためだろうか。「どうせ元請は何も言えない」――これが末広産業の目論見であれば、非常に悪質だ。問題は想像以上に根深い。

(つづく)
【東城 洋平】

▼関連リンク
杭打ち業者税金ピンハネの実態~福岡市発注工事

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