JR長崎本線で線路がなくなった!!~目に見え始めた高架化事業
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線路がない――。お盆期間中に長崎市のJR浦上駅を訪れると、上り線として使われていた線路がまるごとなくなっていた。何事かと調べたところ、長崎県によるJR長崎本線の連続立体交差事業の一環。浦上駅は国道206号線の方に動かすかたちで仮駅舎を置き、ホームとの間に生まれたスペースに下り線の仮線路と跨線橋が作られている。また、ホームはやや削られ、旧下り線だった線路を上り線として駅舎側にやや移動。旧上り線の線路、ホーム、跨線橋は今年7月末までにすべて撤去されたという。
長崎本線の歴史は古く、開業は1891年にさかのぼる。最初に長崎駅の名前が付いた駅は現在の浦上駅だった。1945年8月9日に原爆が投下された際は、その日のうちに長崎本線を救援列車が走り、負傷した人たちの収容にあたっている。長崎市中心部を南北に走る長崎本線は市民にとってなじみ深く、実は悩みのタネでもあった。いたるところの踏切で渋滞が発生してしまうからだ。とくに有名なのが茂里町踏切。幹線道路の国道206号線からすぐ近くにあるうえ、長崎本線は在来線だけではなく特急も走るために踏切が頻繁に閉まってしまう。朝夕のラッシュ時には踏切の前で車がずらりと並び、その余波で国道206号線の渋滞まで引き起こす。
長らく市民を悩ませてきた踏切による交通渋滞を解消することを目的に始まったのが、長崎本線の連続立体交差事業。松山町、正確には長崎西洋館の裏手辺りから高架を作り、長崎駅までの2.8キロをつなぐ。竹岩橋、茂里町などの踏切はすべてなくなり、車は高架の下を走ることになる。同時に現在、下り線の仮線路が敷かれている部分は新たに長崎市の市道として整備。完成は2020年度の予定だ。
長崎県内では九州新幹線長崎ルートの開業に向けた工事も進んでおり、連続立体交差事業と合わせて長崎駅とその周辺が再整備される。長崎駅の駅舎と在来線ホームは浦上川の方にずらし、新幹線ホームはアミュプラザ長崎の立体駐車場の裏手に新設。新幹線の線路も高架で国道206号線をまたぐ形で作られるため、数年後の長崎駅周辺は高架だらけの光景になってしまう。
かつて、田上富久長崎市長は「JR長崎本線で街が東西に分断され、住民同士の交流が少ないと感じる」と話していた。まったくその通りで、とくに長崎本線の西側は開発から取り残されてさびれた町も少なくない。交通渋滞が解消され、長崎市全体の開発が進むこと自体は大歓迎だ。長崎県の担当者は「浦上駅の線路撤去は、立体交差事業が目に見えるような形になった始まりです」と語る。ただ個人的には、子どものころから見慣れてきた浦上駅の姿が変わってしまったことに一抹の寂しさも感じている。
【平古場 豪】
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