2024年12月19日( 木 )

豊洲新市場構造についての素朴な疑義(前)

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協同組合建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
(構造設計一級建築士)

 東京の豊洲新市場の地下空間問題について、構造技術者として感じた疑義を述べます。

 まず、豊洲新市場の地下空間を、構築後に何らかの用途に使う計画があったのかどうか。地下空間の底は、砂利敷きの部分もかなりの範囲で存在しているので、設備配管用のピットとしての用途以外には考えられません。設備配管ピットスペースが必要であるなら、そのように説明すればいいはずですが、あの地下空間の説明の付かない高さは、異様としか言いようがありません。
 地下の最深部に底盤(逆蓋のようなコンクリートのスラブ)がないので、下から地下水がにじみ出てくることは当然の結果です。たとえるなら、底が抜けたボートのようなものであり、地下水が下から次々ににじみ出してくることは当然のことです。このことから、地下空間を設備関係以外の用途に転用することを、当初からまったく考えていなかったと思われます。

toyosu 盛土方式の方が、建築コストが高いという説明がありましたが、絶対にあり得ないことです。建築構造的には、盛土方式を採用するより鉄筋コンクリートで地下空間を構築する方が、建築コストが断然上がることは、火を見るより明らかなことです。さらに、地下部分の重い構造物の重量が加わるので、杭への影響だけを考えても、杭本数を相当増やす必要があります。当然のことながら、地下分の重量増加を考慮した構造設計が行われているものと思われますが、地下部分の重量増加を考慮した場合、相当なコストアップという副作用をともなっており、無駄な税金がつぎ込まれているのです。
 東京都は、多額の税金をつぎ込んでいる以上、都民に対して、工学的な理由も含めて、説明責任を果たすべきです。

 地下を構築するにしても、なぜ、構造的に不利な竹馬のようなかたちで、4.5mもかさ上げしなければならないのか――。
 理由は1つです。全体の建築施工費をつり上げるためだけの選択をした結果です。最初の計画段階における予算などに関係なく、工事費が増えれば、ゼネコンの売上が増えるので、ゼネコンにとっても歓迎すべきことなのです。東京五輪関係施設の建設費が、当初の見込みの何倍にもなっていることと同じ図式です。

 豊洲新市場の場合、土壌汚染という問題が大きく取り上げられて、工事に関する行政とゼネコンとの関係が注目されていませんが、全国の公共工事において、大なり小なり、同じような図式は見られます。

 盛土方式と地下空間構築、どちらの工事費用が高いのか――。この問題を正式に論じるならば、2通りの方式の設計に基づいた積算作業をしなければ比較できません。都が「盛土方式の方が費用が高い」と主張している背景には、盛土方式での詳細設計に基づく積算資料が存在するはずなので、現在の地下空間構築方式に決定した理由を突き止めるには、2つの方式の設計図、積算資料を検証すれば、容易に判明することです。この検証を行えば、「盛土方式の方が費用が高い」という都の主張の根拠が、完全に崩れると思います。口頭ではなく、すべて書類等の根拠を提出させて、検証を実施すべきです。

(つづく)

 
(後)

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