大手小売業(日本型GMS)に何が起きているのか(2)
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小売業は比較される業態である
小売業に限ったことではないが、購入頻度と支出構成が高い小売業は消費者からあらゆる部分を比較される。その最大の項目は「価格」である。国内外変わらず、消費者の65%前後は価格最優先で商品購入を検討する。特に食品においてはその傾向が強い。
もともとチェーンストア理論は、より優位な販売価格を追及するためのものである。店頭販売価格をより安くするために、製造、輸送、販売にかかるコストをいかに引き下げるかというのが理論の基本戦略である。それはより強い販売力を付けるための構造構築ということになる。しかしながら、この理論がうまくいくためにはある条件がいる。それは売り場面積に応じた売り上げである。いくら流通コストを引き下げてももともとの売り上げが確保できなければその効果を発揮できないということである。
この二つのグラフと表はチェーンストア加盟企業の時系列数値だが、売り場面積の増加に売り上げが追い付けない状況を示している。1坪あたりの売り上げが非食品で200万円、食品で300万円を割ると、商品売買による利益確保は厳しくなる。特に日本型GMSは色々な事情で販売管理費が他の業態より高くなってしまっているので坪あたり売り上げの低迷はそのまま大きな赤字に直結する。
日本型GMSの数値は厳しい
イトーヨーカ堂や岡田屋、長崎屋といった、その後総合小売業に成長する大手企業は、当初食品売り場を持っていなかった。その後、同質化による厳しい競争にさらされると食品という頻度と消費が高い分野に手を伸ばした。しかし、前述したようにその分野での利益体質の確保には四苦八苦したというのが実態である。日本型GMSが食品分野で成功を手にできなかったのは食品を安く売って集客し、そのお客に衣料品を買ってもらって利益を確保しようと考えたからである。つまり、彼らにとって長い間、食品は集客の道具に過ぎなかった。そこに食品でしか生きる道がないSM企業の売り場、商品づくりと日本型GMSの決定的な力の差が生まれる。
さらに悪いことに業績が厳しくなるに従って商品回転の悪い分野を次々に縮小したのである。確かに、経営理論上は不採算部門の切り捨ては正しい。しかし、それはお客への利便性の提供という小売業にとって重要な項目を切り捨てることにもなる。実際、GMSが切り捨てたり、その改善を怠った日用雑貨やホームファニッシング、文具、家電、DIYなどは顧客の支持のほとんどを新興業態に持っていかれることになる。
このような理由で日本型GMSは消費者にとってはなはだ使い勝手の悪い店舗になってしまっているのである。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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