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秋の風物詩となったノーベル賞受賞レースの掉尾を飾るのが、ノーベル文学賞の発表。日本国内では村上春樹氏の受賞を待ち望むハルキストたちの姿も恒例だが、今年の受賞者はアメリカのミュージシャン、ボブ・ディラン(75)となった。ポピュラーソングの歌詞を「詩」として評価し、文学賞の対象にしたノーベル委員会の卓見には敬意を表したい。
その一方で、「なぜ今ボブ・ディランなのか」という声は各所から上がっている。確かに1960年代には既存の体制へのカウンター的存在としてプロテスト・ソングを歌い、フォークシンガーとして時代の寵児となったのは事実。ボブ・ディランに対する評価はここに集中しているといっていい。しかしその後ボブ・ディランの音楽スタイルは、アコースティックを捨て電子楽器を導入したり、マリファナの影響を受けたり、クリスチャンとして洗礼を受けたことでゴスペルに傾倒したり、さまざまな変化を遂げている。現役のアーティストとしては当然のことだが、ボブ・ディランは今でも進化を続けているのだ。
ノーベル委員会が、ボブ・ディランの業績をどこまで評価して今回の受賞に至ったのかは明らかではない。すでにボブ・ディランはその音楽活動に対してグラミー賞、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、ピュリッツアー賞、アメリカ大統領自由勲章、レジオン・ドヌール勲章などありとあらゆる賞を授与されている。この上ボブ・ディランにノーベル賞の栄誉を与えることにどんな意義があるのか、一抹の違和感を覚えるところである。
【深水 央】
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