スポーツとコミュニケーションスキル
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先月、福島県で行われたLPGA主催全国小学生ゴルフトーナメントを取材してきました。今年で11回目を迎えるこの大会はもともと福島県で始まりましたが、2011年の震災以降は会場を千葉県に移して開催されていました。今年は6年ぶりに福島県に戻っての開催ということで、地元の関係者の皆さんからも大会への熱い気持ちが伝わってきました。会場は30年前から日米大学選手権が開催されている棚倉田舎倶楽部。フィル・ミケルソンや松山英樹といった有名プロも大学時代にプレーしていた、伝統のある名門コースです。
大会は男女とも1年生から3年生までの低学年の部と、4年生から6年生までの高学年の部に分かれて争われました。弱い雨の降る中、小学生ゴルファーたちがスタート。緊張感に包まれる中、選手たちは堂々と見事なティーショットを放っていきます。スタートする選手を紹介するアナウンスを務めるのも地元の小学生。どちらかというと選手よりアナウンスをする子の方が緊張していました。
小学生とはいっても高学年男子のドライバーの飛距離は250ヤード、女子でも220ヤードと大人顔負け。身体が柔らかすぎてスイング自体の完成度は高くないのですが、小さな身体を最大限に使ってボールを飛ばします。バックスイングでしっかり上半身を捻ったらフィニッシュまで一気にクルッと回るだけ。まるで太いゴムがギュッと捻られた後に元に戻るようです。腕はでんでん太鼓の紐のように身体について回るだけ。彼らには手打ちなどという概念は存在しません。
今回、一番感心したのは優勝した選手たちにインタビューした時のこと。みんな自分のその日のプレーに関して、何が良くて何が悪かったのかを客観的にしっかり説明することができていました。僕は毎回生徒にラウンド後の感想を聞きますが、小学生でしっかり説明できる子はほとんどいません。いろいろ工夫をこらしてそれらを引き出す質問を投げかけるのですが、それでも間違ったことを言うのが恥ずかしいのか口ごもる子がたくさんいます。その子が感じたことを答えさせる質問をするので答えに間違いも正解もないのですけどね。
レッスンというのは指導者のやり方や考えを押しつけるものではなく、生徒の内側にあるものを引き出す作業です。ですからその子が何に悩み、何に手ごたえを感じ、何を目指しているかを知ることはレッスンする際に大事な要素になります。また、小さいころは何も考えずただ無邪気にプレーするだけで好成績を残すこともできます。しかし成長するにしたがって、いろんな考えや情報が感性の邪魔する時期が訪れます。そこを乗り越えるには、自分の考えやプレーを客観的に把握することができること。そしてそれらをきちんと言葉で説明する能力が必要です。
これはゴルフや他のスポーツに限ったことではなく、社会に出て活躍するために求められるスキルです。スポーツを頑張る目的はその競技のパフォーマンスレベルを上げるだけではなく、社会で通用するコミュニケーション能力を身に着けることでもあるのです。
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信川 竜太 (のぶかわ りゅうた)
1971年3月27日生まれ。(株)スリーバーズ代表取締役。スポーツキャスター、DJ、MC、リポーターとしてスポーツを中心にテレビ、ラジオなどで活躍中。その一方で、ゴルフコーチとしても活動している。信川氏がゴルフの道を志したのは福大大濠高校1学年時。卒業後、フロリダ州ブロワードジュニアカレッジに入学(のち、フロリダ・リン ユニバーシティーに編入)。在学中、トーナメントでタイガー・ウッズの上位に入る結果を残した。2006年1月に(社)日本プロゴルフ協会 PGAゴルフティーチングプロの資格を取得。10年10月、福岡市東区多の津にスポーツ塾を開講した。関連キーワード
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