博多駅前陥没事故の周辺建物、福岡市の「安全」に疑問
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(協組)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
8日、博多駅前で、大規模な道路陥没が発生しました。思わず目を疑ってしまう「大穴」が全国に報道されましたが、これほどの事故でありながら、人的被害がなかったことは、工事関係者、警察、消防をはじめとした行政機関の迅速な対応の賜物であると敬意を表します。その一方で、陥没箇所に面したビルの基礎部分がむき出しになった映像が、何度も報じられています。映像を見た方は、「杭まで剥き出しになって、このビルは倒れないのだろうか?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
目視調査で「安全」
建築構造設計に長年携わってきた私も同じことを感じました。福岡市は、事故が発生した8日夕方、「現場沿いのビルなど42棟を調査した結果、倒壊の恐れがある建物はないと判断した」と発表しました。福岡市による調査は、市職員8名が1時間半程度で、建物の傾斜などを目視調査したものです。この程度の市職員の調査で、「倒壊の恐れはない」と断言できるのでしょうか?
また、福岡市は、「現場の高層ビルは基礎部分が固い岩盤まで届いており強度は保たれている。それ以外の小規模な建物については何とも言えないが、目視では倒壊の恐れはないと判断した」とコメントしています。1時間半程度の調査と「何とも言えない」というコメント。これで、ビルのオーナーや市民が安心できるのでしょうか?
建築の基礎部分の杭は、杭の周囲の土に締め付けられている状態を前提にしています。杭先端部分が支持層に到達している支持力と、杭周面の摩擦力により、建物を支えているのです。杭周面の摩擦力を見込んでいない場合であっても、杭が周辺の土で締めつけられていなければ、地震の揺れを受けて、杭が破損することも考えられます。
建物の資産価値において、基礎部分も含めた構造耐力は最も重要な要素です。杭周囲の土がなく剥き出しとなった杭は、設計通りの杭耐力を大きく毀損しています。すなわち、建物の資産価値を著しく毀損しているのです。
資産価値への影響
現在、陥没した穴を埋め戻す作業が急ピッチで進められていますが、建物の奥の杭の周囲まで完全に土で埋め戻され、杭が締め付けられているのでしょうか? 福岡市は、杭周囲の土の締め付け状況を確認しているのでしょうか? 建物のオーナーにとっては、元通りの安全性を確認できなければ、資産価値がなくなり、建物の売買にも影響をおよぼします。テナントも退去せざるを得ないでしょう。
建物の資産価値を大きく毀損し、今後の賃料収入にまで影響を及ぼしかねない点について、福岡市は、建物オーナーに、どのような説明をしているのでしょうか? 常時、地震時を問わず、万が一、ビルが倒壊するようなことがあれば、周囲の建物や通行人に甚大な被害をおよぼします。市民の安全のためにも、福岡市は、陥没現場周辺の建物の基礎を含めた安全性に関する福岡市の見解を述べ、陥没現場周辺のビル所有者および市民に対する説明責任を果たすべきです。私は、市民目線の構造専門家として、福岡市が、陥没現場周辺の建物の基礎部分を含めた安全性に関する説明責任を果たされることを願うものです。
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