バングラデシュで40年支援活動「取り残された人々」を見つめて(後)
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NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会
経済成長の闇を抱える
人口は約1億6,000万人と日本よりも多いバングラデシュは、経済成長が軌道に乗り成長率は毎年約6%台で安定している。輸出用の縫製業の生産拠点が同国に移り、主に縫製業が経済成長をけん引してきた。30年ほど前は餓死する人もいたが、今では貧困で飢えるのは例外を除いてなくなってきたという。
とはいえ、年間の1人当たりGDPは約1,400ドル。経済成長が続く一方で貧富の格差が広がっているという現状がある。たとえば、2013年に起きた「ラナ・プラザ事件」はその典型的な事件だ。ダッカ近郊のサバールで、縫製工場などが入居する8階建てのビル「ラナ・プラザ」が一瞬のうちに倒壊し、死者1,127人、負傷者2,500人以上(主に女性労働者)の大惨事となった。バングラデシュ史上最悪の産業事故、労働災害となり、グローバル展開する欧米や日本の大手衣料品業者が、同国の劣悪な労働環境や安価な労働力に依存して利益を上げている状況が浮き彫りとなったのだ。
上層部に設置された4基の大型発電機の振動が数千台のミシンの振動と一緒になり、崩壊を誘発したのが原因という調査結果がある。またビルオーナーは建築基準を守らず、役人に金を払って見逃してもらっていたこともわかり、ビル内には亀裂が見つかって労働者は働くのを拒否したにも関わらず強制的に働かされていたという実態もあったようだ。
労働者たちの職場の安全と待遇改善を求める動きが暴動にまで発展し、以前から頻発していた政治的なストライキやデモと相まって、いよいよ混乱の度合いを深めた。
当時、この事件に対し同法人は「駐在経験を持つ者の多くが痛切に感じてきた『命の安さ』の上に立って進められてきた経済発展のあり方が、大きく問われる時期が来たように思われる。農村の困窮や都市の貧困もそれとのつながり抜きに考えるわけにはいかず、シャプラニールもますますそのスタンスが問われている」というコメントを出した。国の現状を伝える
2015年4月にはネパールで大地震が発生し、同法人はネパール緊急救援で慌ただしく15年度が始まった。ダッカ駐在員と経験豊富な評議員の活躍もあり、支援の行き届いていない被災者を中心に生活物資の配布を開始。その後は仮設住宅の建設支援、FM コミュニティラジオの再開支援、ラジオ局に併設したコミュニティ・スペースの開設など被災者が安心した日常を取り戻せるよう支援してきた。
一方で、日本でも東日本大震災の発生時から支援活動をしてきた。5年が経過し、同法人としては一定の役割を終えたと判断し直接的な支援活動は今年3月をもって終了している。今後は定期的に現地を訪問するなどのフォローアップを行うという。現在はネパール地震の支援継続と、バングラデシュの現状を日本に伝える活動が中心になりそうだ。7月に東京と大阪で「今知りたいバングラデシュ~ダッカ襲撃事件をうけて~」を開催。多くの人々の関心を集めて宮城県仙台市でも開催した。今回の事件で両国の関係が損なわれないよう、広く市民にこれまでの日本とバングラデシュのつながり、何よりその国で生活する人たちのこと伝えるのを目的とした。
今年度は新たな中期ビジョンの事業の柱として設定した、児童労働や児童教育、そして防災分野の事業を中心に、これまでの成果をより広い地域へ波及させていく方針だ。(了)
【大根田 康介】<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都新宿区西早稲田2-3-1
代表理事:岩城 幸男
設 立:1972年9月関連記事
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