寡占化を推進するヤマダ電機(1) 秋葉原の変貌に見る家電販売業界の構造転換

東京・秋葉原の変貌

 (株)ヤマダホールディングスの歩みは、高度経済成長期に家電が生活を豊かにする憧れの商品であった時代から、人口減少と市場成熟のなかで生活全般を支えるサービス産業へと変化した様を映し出している。そして、現在進行中の(株)エディオンとの統合の動き。これは、家電販売業界の今後はもちろん、日本の社会課題なども浮き彫りにするものと考えられる。そうした視点をもってこの稿を進めていきたい。九州エリアでなじみの深いベスト電器の子会社化、吸収合併や、家電に次ぐ規模の住建領域についての事項も取り上げていきたい。

 さて、東京・秋葉原は日本一の電気街というイメージが強い。1990年代には白物家電やAV機器、パソコン、電子部品、アマチュア無線、オーディオ関連機器などを扱う販売店が集まり、ラオックスや石丸電気、サトームセン、オノデン、ロケット、九十九電機などが激しい価格競争を繰り広げていた。

 当時、上京した人たちのなかには、一人暮らしをするにあたって、家電をこれらの販売店で購入したという人も多いのではないだろうか。だが、現在はパソコン(自作を含む)やゲーム、アニメやフィギュア関連商品を扱う店舗、さらにはメイドカフェや同人ショップなども出店するエリアとなっている。

秋葉原 イメージ    秋葉原は、電気街からポップカルチャーとテクノロジーが融合する街へ、高度成長期の必要な家電を買う街から、成熟社会では「趣味や体験を楽しむ街」へと役割を変えた、とも表現できそうだ。現在もヨドバシカメラやビックカメラ、エディオンなどの大型量販店もあるが、それらで販売されている商品は家電だけでなく、プラモデルなどのホビー商品、ファッションなど幅広いものとなっている。そうした変化は、単なる秋葉原というまちの変貌だけでなく、人々の暮らしが多様化してきたことを強く印象づける。

 福岡市には東京の秋葉原や大阪の日本橋、名古屋の大須のような明確な電気街は存在しないが、あえていうなら西鉄福岡(天神)駅と博多駅周辺か。このうち、天神にはかつて嘉穂無線(現・嘉穂無線ホールディングス、現在はホームセンター事業を中心とする)が店舗を構え、つい最近までベスト電器本店が存在した。両駅にはヤマダ電機やヨドバシカメラ、ビックカメラなど、主要量販店が進出している。天神ビッグバンや博多コネクティッドをはじめとする福岡市中心部の再開発のなかで、まちの雰囲気をかたちづくるスパイスのような存在となっている。

 暮らしの多様化に合わせて、家電販売店の在り方も大きく変化している。秋葉原に限ったことではなく全国的な動きだが、高度成長期には東芝やナショナル(現・パナソニック)、ソニー、シャープなどの商品を専門に販売する地場中小規模の販売店が多かった。それが現在は、量販店が大きな位置づけを占めるようになった。

 これはモータリゼーションの進展によって、消費者は郊外型店舗へ足を運ぶようになり、大量仕入れによる価格競争力を持つ量販店が急速に勢力を伸ばした一方、メーカー系列の地域電器店は価格競争で劣勢となり、修理や地域密着サービスへと役割を変えていったためだ。郊外型店舗の増大は、都市部のドーナツ化現象も引き起こした。もちろん、家電量販店だけの影響ではないが、家電販売の在り方は、都市構造の変化を引き起こしたという点で興味深い。

 量販店のなかでも、“寡占化”という大きな変化が見られる。前述した秋葉原の電気街の移り変わりが示すように、大手の存在感が非常に強まっている。ラオックスや石丸電気、サトームセン、オノデン、ロケット、九十九電機といった販売店は、この30年の間に大手に統合、あるいは廃業したケースも見られる。

スマート端末が売場の主役に

 また、大手のなかでも業態の変更が急ピッチで行われてきた。かつては販売店の花形商品として売場の主役を占めていたテレビやオーディオは、スマートフォンやタブレットに取って代わられた。国産品が多数を占めていた売場には海外製品も目立つようになっている。加えて、かつては住宅関連メーカーのショールームなどで販売されていたキッチンやバスなどの住宅設備機器も店頭に並び、販売するだけでなく施工も担うケースも見られるようになった。たとえば、ヤマダホールディングスが住宅メーカーやリフォーム事業を取り込み、「くらしまるごと」を掲げる現在の姿がある。

 こうした変化は、家電販売業界以外の店舗との競争を誘発。たとえばディスカウントストアやホームセンターなどでは家電製品も販売されている。逆に家電販売店が、それらが扱う商品を販売しているケースもある。そうした業種のボーダレス化が進んだことが、家電販売業界のさらなる変貌を促している。いずれにせよ、家電そのものの市場が成熟したことで、販売店は単に製品を並べるだけでは成長できなくなった。スマートフォンや通信契約、リフォーム、家具、住宅など生活全般へ事業を広げる背景には、こうした市場構造の変化がある。

 ヤマダホールディングスとエディオンとの経営統合の動きは、以上のような経緯の末に生じたもの。ヤマダ電機はこれによりさらに拡大し、売上規模が約2兆5,000億円となり、もともと、進んでいた業界の寡占化をさらに促すことになりそうだ。

(つづく)

【田中直輝】

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