長崎最大のマンション計画を追う(2)~「楔」の土地
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2014年2月に一旦閉店した老舗百貨店「長崎玉屋」とその周辺区域で計画された新大工町地区の再開発計画は、国から補助金を受ける第一種市街地再開発事業として、いよいよ実行の段階に移ろうとしていた。そのようななか、本事業の核施設・長崎最大のマンション(地上24階建、高さ97m)が建設される「北街区」を分断する土地の所有者が変わった。さまざまな思惑が交錯する再開発事業の実態を追う。
求められる合意形成
市街地再開発事業における合意形成の難しさを知るには、その目的・仕組みを理解しなければならない。まず、その目的は、「市街地内の老朽木造建築物が密集している地区等において、細分化された敷地の統合、不燃化された共同建築物の建築、公園、広場、街路等の公共施設の整備等を行うことにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る」(国土交通省HPより)となっている。
第一種市街地再開発事業として認められると、国からは、施設建築物および敷地の整備にかかる事業費の3分の1が助成される。事業のしくみは、地権者が持つ従前の土地・建物の権利を再開発ビルの床(権利床)に関する権利に原則として等価で変換し、権利変換で残った床(保留床)をデベロッパーが分譲するなどして事業費にあてる。
以上のように文章にするのは簡単だが、現実に話を進めるには、従前の建築物の解体から再開発ビルの完成までの間、地権者はどうするのか、再開発ビルの床をどう配分するかなど、地権者のそれぞれの事情が複雑に絡み合い、合意形成が難航してもおかしくはない。とくに新大工町の今回のケースでは、「長崎玉屋」は一旦閉店しているものの、新大工町市場や隣接する商店、飲食店は現在も営業を続けているなど事情が異なる。高層マンションの新しいテナントに店を移すにも費用がかかる。
「楔」を持つデベロッパー
今回、「マンション建設計画実施の直前」と言えるタイミングで所有する土地・建物を売却したのは、代表が再開発準備組合の副理事長を務めていた新大工町市場協同組合だ。同組合は、香川県高松市の有名デベロッパー・穴吹興産(株)に、所有する土地・建物を9月20日に売却した。同組合は、「長崎玉屋」の1階部分にある新大工町市場の営業を来年3月まで続ける方針だ。
再開発所有する土地の形状(図参照)から考えると、新大工町市場協同組合は、極めて存在感の大きい地権者であった。注目すべきは「長崎玉屋」部分(地番105、1,588m2)に沿う形で、線状(幅30cm)に伸びているわずか18m2(地番101)の土地。再開発区域を結合あるいは分断する、まさに「楔(くさび)」のような存在だ。
穴吹興産が地権者となる8日前の16年9月12日、『新大工町地区第1種再開発事業』に関する長崎市の都市計画変更手続きが完了した。穴吹興産は、16年2月に長崎のスーパー「ジョイフルサン」とスポンサー契約するなど、長崎での積極的な事業展開が見られている。しかし、今回の再開発事業におけるデベロッパーの入札に参加したが第一次選考で落選した。同社が地権者として本組合に参加しなければ再開発事業はご破算となる。長崎最大のマンション計画は重要な局面を迎えた。
(つづく)
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