米国抜きのTPP発効は合意内容変更しない限り不可能
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、現在、安倍政権が推し進めているTPP批准および関連法案の成立に関して、アメリカ抜きの状況での批准・成立は不可能であるし、約束を違えていると指摘した11月28日付の記事を紹介する。
9月26日に召集された臨時国会は会期末が11月30日に定められていた。この会期が12月14日まで延長されることになった。政府・与党が28日午後、安倍晋三首相と公明党の山口那津男代表による党首会談を国会内で開き、この会期延長の方針を決めた。年金カット法案、TPP批准および関連法案を可決、成立させるための延長である。
また、政府・与党はカジノ法案の審議入りも目指していると伝えられている。
12月15日には、山口県で日露首脳会談が予定されている。会談は、翌16日に東京でも開催されることが報道されている。衆院解散については、最近になって与党関係者から否定する発言が増えているが、この発言を鵜呑みにすることはできない。日露首脳会談で日露平和条約締結に向けての進展があれば、これをアピールして衆院解散・総選挙に突き進む可能性を否定できない。
極めて重要な政治問題が山積するなかで、日本の主権者は、安倍政権のこれ以上の暴走を容認するべきでない。衆院総選挙があるなら、安倍政権与党勢力を過半数割れに追い込むべく、しかるべき対応を直ちに準備する必要がある。
日本の情報空間は、既得権勢力の広報部隊であるマスメディアによって支配、誘導されている。したがって、マスメディア情報からは真実が伝わらない。マスメディアが流す情報をウソを見破り、日本政治を改変することが求められている。
TPPにはルールがある。そのルールを踏まえた論議が必要である。何よりも重要なことは、TPPの発効条件である。
TPPは6カ国以上の参加国が国内手続きを完了し、かつ、その6カ国以上の国のGDP合計値が交渉参加国のGDP合計の85%を占めなければ発効しない。域内GDPに占める比率は、米国が60%、日本が17%であるため、日本と米国のいずれか1カ国でも国内手続きを完了しない場合には、TPPは発効しない。
「米国抜きのTPP発効」などの声が上がるが、見当違いの暴論である。日本はTPPの合意内容を見直さない、と明言している。そのなかには、当然、TPPの発効条件も含まれる。したがって、「米国抜きのTPP」は現在の最終合意を踏まえる限り、可能性がないのである。これを認めるということは、TPPの内容修正を認めることになり、安倍政権の国会での答弁と完全に矛盾してしまう。
安倍政権は、「TPP合意内容の見直しを行わない」「現在の内容で確定するために日本が批准を急ぐ」と説明している。したがって、TPPの発効条件についても、変更の余地はないのである。
こうなると、米国がどう行動するのかが何よりも重大になる。この点について、トランプ氏の公約は明解である。大統領選最終局面で、トランプ氏は「有権者との契約」を明示した。そのなかに、
「大統領就任初日の、TPPからの離脱宣言」
が明記されている。
そして、この点を大統領選終了後、安倍氏と会談を終えて、安倍氏がアルゼンチンのブエノスアイレスで、「米国抜きのTPPは意味がない」ことを強調した直後に、トランプ氏はビデオメッセージで全世界に改めて、「大統領就任初日の、TPPからの離脱宣言」を明言した。トランプ氏が大統領就任初日に、TPP離脱宣言を発する可能性は極めて高いのが現状だ。この状況下で、日本がTPP批准を急ぐ理由はない。しかも、多くの有識者がTPP反対の意思を表明している。
主権者の多数も、拙速批准に反対の意思を表明している。これを押し通す行動は、民主主義の根幹を踏みにじる暴挙である。選挙で多数議席を確保しさえすれば、何をやってもいいというわけではない。選挙の際に主権者に示した公約に反する政策を強行するのは、「詐欺行為」である。「詐欺政治」、「ペテン政治」の蔓延を放置してよいわけがない。
次の総選挙で、必ず安倍政権を退場させることが何よりも重要になる。※続きは11月28日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1602号「年金制度を自己崩壊に導く年金カット法案」で。
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