2024年11月24日( 日 )

杭打ち業者の疑惑を追いかけ続けた6カ月(後)~ブローカー・末広産業

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-Newsでも反響の大きかった、杭打ちブローカー・末広産業の疑惑追及。調査開始から、一連の報道を終えるまでの約6カ月間、筆者の仕事はまさに「末広」一色となっていた。ピンハネ、丸投げ、建設業法違反の疑い。客観的証拠のそろった報道に、反論の余地を与えず、業界に真実を突き付けてきた。これまで記事にしなかった取材の裏側を述べていく。

突然の電話連絡 どよめいた社内

これまで発刊したIB<

これまで発刊したIB

 8月の下旬だった。会社に1本の電話が入った。電話を取った社員が筆者の名前を呼ぶ。「末広産業さんから電話です。」一瞬、社内がどよめいた。これまでまったくの無反応だった末広産業からの一報だった。用件を聞くと、「訪問して話がしたい」とのこと。そして、後日同社より2名やってきたのである。虚偽報告と報道した施工実績については「記載ミス」と言い逃れをしていたが、数の多さを追求すると黙り込んだ。報道の内容に間違いがあるか尋ねると、「お調べの通り」と白旗を上げた。最後には報道により、営業活動に支障が出ていると訴えてきたが、「事実を述べているまでのこと」と回答し、お帰りいただいたのは言うまでもない。

無駄ではなかった6カ月

suehiro5 6カ月にわたる取材で知り得た事実は膨大なものだ。すべてを余すことなく、関係各所に情報提供してきた。九州地方整備局、福岡県、福岡市はもちろん、国税にも、公取にも足を運んだ。可能性のある限り、打てる手段は打った。客観的証拠は揃っており、建設業法違反は明白だと考えるが、当初ひとつの目標に掲げていた「末広産業に行政処分を!」は実現に至っていない。これだけ調べ上げても、まだ行政は動かない。これが下請の壁なのだろうか。あくまでも、下請は元請との民間契約に基づくもの。元請けの談合を証明する客観的証拠ならすぐに動くはずだが、ハードルは高かったようだ。それでも、この調査報道を通じて、杭打ちブローカーの動きを止めたのは間違いない。同業者からは「末広さんは窮屈な営業になっている」「かつての荒っぽいやり方はみられない」、ゼネコンからは「取引をやめた」「取引は継続しているが、人を出すように確約させた。」という話を聞いた。業界へ警鐘を鳴らしたことを含め、この6カ月間は無駄ではなかった。当然、これで終わりではない。今後も末広産業についての情報収集は継続していく。

 暗躍する不正業者はまだまだ存在する。この経験を糧に、来年も第2の末広産業を追いかけていきたい。

(了)
【東城 洋平】

▼関連リンク
・杭打ち「末広産業」に建設業法違反の疑い~九地整「詐欺の可能性も」
・技術者5名で年間1,300件 ブローカー末広産業のありえない仕事ぶり

建設情報サイトはこちら>>
建設情報サイトでは建設業界に関する情報を一括閲覧できるようにしております。

 
(中)

関連記事