2024年07月17日( 水 )

日本国民も政治を永田町から取り戻すべきだ

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、1月20日に行われたトランプ米国大統領の就任演説と安倍首相による施政方針演説とを比較した、1月22日付の記事を紹介する。


トランプ米国大統領の就任演説の柱は「米国をワシントンの既得権者から米国民に取り戻す」「アメリカファースト」であった。トランプの言う「アメリカファースト」とは、「米国の一般国民の利益を第一に考える」ということである。

元大統領が居並ぶなかで、トランプ氏は、「あまりに長い間、この国の首都の小さな集団が政府からの恩恵にあずかる一方、国民はそのつけを背負わされてきた。ワシントンは栄えたが、国民はその富を共有しなかった。政治家は豊かになったが、職は失われ、工場も閉鎖された。既得権層は己の身は守ったが、我が国の市民を守らなかった。彼らの勝利は、皆さんの勝利ではなかった。彼らの大成功は、皆さんの大成功ではなかった。そして彼らが首都で祝っているとき、私たちの国のいたる所で苦しんでいる家族にとって喜ぶことはほとんどなかった」と言い放った。
さらに、「私たちは口先だけで、何も行動しない政治家はもう受け入れないだろう。絶えず文句を言いながら、そのことに対処しない人たちだ。中身のない話をする時間はおしまいだ。行動する時がやってきた」。

トランプ大統領が今後、どのような実績を上げることができるのかは、今後の現実を待たねばならないが、「政治をワシントンのエスタブリッシュメントのものから、米国国民のものに転換するべきである」とのメッセージは米国国民の共感を呼んだはずである。この共感こそ、トランプ氏が大統領選を制した最大の背景であると考えられる。

政治の中枢にいる者が、政治を私物化してしまっている。そして、政治の中枢にある者は、自国民ではなく、経済を支配する巨大資本の利益のために動く。これがこれまでの米国政治であり、トランプ氏はこの政治のあり方にNOを突き付けたと言える。

日本でも、同じ1月20日に政治トップが基本方針を演説した。安倍首相による施政方針演説である。しかし、演説は、旧態依然の「自画自賛」と「政敵攻撃」のオンパレードで、傾聴に値するものではなかった。

安倍政権は経済政策運営の実績を自画自賛する。
「5年前、日本には、根拠なき“未来の予言”があふれていました。『人口が減少する日本は、もう成長できない』『日本は、黄昏(たそがれ)を迎えている』。不安を煽る悲観論が蔓延していました。まさにデフレマインド、“諦め”という名の“壁”が立ちはだかり、政権交代後も、『アベノミクスで成長なんかできない』。私たちの経済政策には、批判ばかりでありました。しかし、日本はまだまだ成長できる。その“未来を創る”ため、安倍内閣は、この4年間、三本の矢を放ち、“壁”への挑戦を続けてきました。その結果、名目GDPは44兆円増加。9%成長しました。中小・小規模事業者の倒産は26年ぶりの低水準となり、政権交代前と比べ3割減らすことに成功しました。長らく言葉すら忘れられていた『ベースアップ』が3年連続で実現しました。史上初めて、47すべての都道府県で有効求人倍率が一倍を超えました。全国津々浦々で、確実に「経済の好循環」が生まれています」。

「自画自賛」も度を過ぎると好感されない。経済の実績を図る第一の尺度は実質経済成長率だが、安倍政権下の経済成長率の実績は、その前の民主党政権の半分にも届かない。経済運営に成功してはいない。失敗しているというのが現実である。「失敗」を成功と言い換え、「虚偽」を国民に植え付ける。まさに「大本営の手口」であり、この限界をいっこうに超えることができないのである。

日本国民は、米国に倣い、メディアの情報誘導を撥ね退けて、政治の大転換を実現しなければならない。2017年は恐らく衆院選が実施される年になるだろう。日本国民の底力が問われている。

※続きは1月22日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1647号「心に響かない自画自賛と罵詈雑言の安倍演説」で。


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