国益全面喪失だったTPP交渉の知られざる真実
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、TPP交渉の裏側で起きていた、売国的取引の実態について説いた2月9日付の記事を紹介する。
TPP交渉では、日本が全面的に譲歩し、日本は失うものばかりで、獲得したものがなかった。自動車輸出に関する関税率は引き下げられず、農産品の輸入関税率だけが全面的に引き下げられた。自動車の対米輸出の税率は乗用車が2.5%、SUVを含むトラックは25%だ。
しかし、TPP交渉に参加する際に、米国は日本との二国間協議で、この関税率を乗用車は14年間、トラックは29年間一切引き下げぬことを約束させた。
TPPに参加する唯一のメリットとも言える自動車の関税撤廃が完全凍結されることを日本が確約して、日本はTPP交渉に参加したのだ。これほどの不平等条約はない。「平成の不平等条約」がTPPの実態である。トランプ大統領がTPPに反対しているのは、TPPの水準ですら、米国の雇用が失われる可能性があると見たためである。メキシコの低賃金労働を活用して自動車メーカーがメキシコでの生産を増大させている。その結果、米国自動車産業における雇用が失われる。このような事態も回避したい。これがトランプ大統領の考えである。
日米二国間協議では、TPPで日本が譲歩した水準を「出発点」にして、さらにさまざまな要求を突きつけてくるだろう。メキシコからの輸入にも関税をかける。米国で購入される製品は、米国で生産してもらいたい。これがトランプ氏の要望であると考えられる。その実現にとって、NAFTAやTPPは望ましいものではないのである。
日本の米国製自動車輸入金額は極めて小さい。日本の通関統計では、自動車および自動車部品の、日本の対米輸出金額は2016年、5兆2747億円だった。これに対して、米国からの自動車および自動車部品の輸入金額は2016年、1412億円だった。その差額は5兆1,335億円。日本の対米貿易収支黒字6兆8342億円の75%にあたる巨額の黒字を計上した。日米の貿易収支不均衡は、圧倒的に自動車による部分が大きい。
日本の自動車対米輸出分を全額、米国で生産すれば、米国の対日自動車貿易収支赤字は解消する。しかし、このとき、重大な変化が生じる。日本における自動車生産が減少し、米国における自動車生産が増加することになる。日本の雇用は減少し、米国の雇用は増大する。「トレードオフ」の関係なのである。
それぞれの国の政府は、普通は、国内の雇用拡大を目指す。この意味で、トランプ氏の主張には正当性を有する部分がある。日本の為政者が、貿易収支不均衡を解消するために、日本での生産をすべて米国での生産に切り替えるように取り組みましょうとは言えない。なぜなら、日本の雇用を激減させることになるからである。
※続きは2月8日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1662号「国益全面喪失だったTPP交渉の知られざる真実」で。
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