2024年12月23日( 月 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~初めの一週間

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 今年も2月1日を迎え、キャンプが始まりました。連日テレビでの情報蒐集の日々でしたが、明日から宮崎に行くことになりました。楽しみです!!!!

 現地で選手を生で見られるということが嬉しいですね。今年はどんな新人選手に出会えるか、長年見てきたベテランがどんな表情でこの時期に練習に取り組んでいるか、伸び盛りの選手がどんな練習をしているか、順調か、遅れてるか、早すぎるか。こればかりはテレビで見てもなかなかわからない部分ですが、実際に選手の動き、表情を見ると何かしら感じるものです。そういう部分を現地でじっくりと見られるといいな~と思います。

 毎年同じ時期に、同じように、同じ球場で、練習に励む選手たち。ファンの方からすれば「何を考えているのかな」という疑問もあることでしょうね。
 簡単に自分の経験から書いてみますと、次のようなことを考えて最初の1週間のプランを立てています。

baseball 最初の1週間は、まず体調面の整備をします。キャンプ前に自主トレを行ってきていますが、キャンプでやる練習はやはり緊張感が違いますから、体調面を整えるために時間を使います。
 まずはランニングです。70メートル走を50%~60%で走り、50メートルを70%で走る。そして10メートルから20メートルを80~90%で走ります。当然チームの練習もありますから100%では走りません。なぜならここで怪我をしたらキャンプができなくなりますから、気をつけます。
 次はキャッチボールです。昨年と同じように投げられるのか?ファンの皆さんからすれば疑問に思われるかもしれませんが不安なものです。当然同じように投げられると思いますが、まったく同じという訳には行かないものです。だから選手としては不安なのです。走る動作と同じようにいきなり長い距離を投げることは難しいですから、短い距離から徐々に伸ばしていきます。基本は塁と塁の間の距離ということになります。これができないと守備練習ができませんから。
 そしてチームのフォーメーションプレーに入ります。
 投手と内野手のプレーはバント守備からです。一塁側、三塁側、投手の正面に飛んだとき、次が一、二塁間のゴロ、投手ゴロでのセカンドでのダブルプレー、シーズンでは少ないのですが投手ゴロでの三塁への送球で終わります。
 この間、外野手はフライを追いかけて目を慣らしたり、ゴロのボール捕球で目を慣らしたりして感覚を合わせていきます。毎年、この最初の練習をすることでキャンプは始まります。

 ここから投手はコーチに従って、ランニングや体操で終わる日、ブルペンでの投球練習をして、最後にランニングとウェイトトレーニングで終わる日などのメニューをこなして、最初の1週間は終わります。
 打者は、バッティングマシン、打撃投手の投げるボール、またマシンという打撃練習、バント練習、内野にネットを張っての走塁練習、ティーバッティングで終わります。練習メニューはコーチの指示によります。
 そして、ここがとくに大切にしたいところですが、宿舎に帰ってからシャワーを浴び、浴槽で体を温めてからマッサージを受ける。これをしないと次の日に引きずることがあります。1日の疲れはその日のうちに取ってもらうことが大切です。

 これが私の最初の1週間のおおまかなキャンプの過ごし方でした。当然入団したころにはウェイトトレーニングはありませんでした。今の選手はもっと細かなメニューかもしれません。
 もう1つ、私に取って大切だったことが「禁酒」です。キャンプに入って1週間は体の筋肉が張りますから、回復を促すためにお酒は控えます。これは試合に出してもらうようになってから感じたことでした。そうして1カ月のキャンプを無事に終わることが、キャンプでの一番大切な目的になります。
 キャンプで怪我をすると、何のためにキャンプ地に来たのか……すべてが台無しになります。キャンプを無事に終えられると自然と体力の蓄積と、心の安心感を生んでくれます。昨年と同じようにできると思えることがキャンプで一番大事なことです。

 新人にとっては、キャンプが辛くなる場面もあります。それまでチームのエースだった投手が初めてプロのブルペンで見る光景は、先輩投手たちの球速の速さ、コントロールの良さです。もうチームで1番ではなくなる瞬間です。
 打者もそうです。他の選手のバットコントロールの上手さ、打球の飛距離や速さを見て、「自分は大丈夫だろうか?」という不安に駆られます。それが初めてのキャンプです。負けないで頑張ってほしいと思います。明日にはきっと新しい発見があり、素晴らしいヒントが見つかりますから頑張りましょう。

 ちなみにアメリカのキャンプインは日本よりも遅く、チームによってバラツキがあります。2月10日~14日ごろから投手がキャンプイン。その後、打者がキャンプに入り、投手は打者に向かって練習台のようにすべての球種を使ってマウンドから投球練習をします。
 相手をする打者は大変ですが、終了後にマシンで調整しながら、2月の終わりから始まるオープン戦に向かって調整を行います。
 日本と日程が大きく違うのは、気温の問題もあり、長年の習慣もあると思います。

2017年2月7日
衣笠 祥雄

 

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